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第五章第一話
透明人間の私を見つめている視線は窓際方向からだった。
その視線は窓際ではしゃいでいる女子高生らしき集団のほうからだった。やたらと声の大きな女の子の後ろにこちらを凝視している女性がいた。二十代後半といった雰囲気か?
その女性がこちらへ歩いてきた。そして私の前に立ち、「あなたも時のはざまに落ちてきたの?」と涼しげな声で聞いてきた。 女は幽霊のようではなく、明るく、活発な感じの女性だった。「どんな風になって、ここへ来たの?」「あたしの場合は、男にフラれて、家で泣きながら飲んでいて、そのまま寝ちゃって、目覚めたら、この街のあのデパートの前にいたの。」「君はいつぐらいにこの世界へ来たの?」「半年ぐらい前かな。」「ほかにも俺たちみたいな人はいるのかな?」