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第四章第八話
この世界は一体なんなのだろう。私は海へ行きたくなった。
少し難しいことを考えたら、頭が痛くなってきた。Hの家を出た私は、海辺に行きたくなり、若い私よりも先に自宅に向かった、自分の部屋からウォークマンを探しだし、大好きなサザンのテープを入れて、海へと向かった。
海は潮が引いて、静かだった。もうすぐ私の好きな夕暮れ時だ。秋の気配が漂い始めた海辺には人影はなかった。 私は昔から何かあると必ず海に行った。海の波音を聞いていると昂った心も静まったものだった。本当に海の近くに住んでいて良かった。あまり尊敬できない父親だったが、海の近くに家を建てた選択だけは称賛に値した。
私はサザンの歌を聴きながら、これからどうしようかと考えた。しかし、考えても、元の世界に戻る方法がわからないからどうしようもなかった。テープから「栞のテーマ」が流れてきて、私は涙をこらえきれなかった。