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第三章第六話
若い私は受話器を置こうとした矢先の出来事に慌てふためいた。
若い私は受話器を置こうとしていた矢先の出来事にびっくりして慌てふためいていた。
「もしもし。」若い女の子の声だ。みやびだ。「もしもし。おれだけど。久しぶりだね。」私は声が上ずらないようにゆっくりと話した。
「どうしたの。急に。」みやびは冷ややかな声音で応えた。
不思議なことが起きた。私は透明人間のはずなのに、高校一年の私が耳にあてている受話器を通したみやびの声が聞こえたのだ。
それはまるで、高校一年の自分に同化しているかのようだった。しかし、電話しているもう一人の自分は目の前にいる。どういうことだろう。私は混乱したが、もう深く考えるのはやめた。切り替えの早いのが、私の長所であり、短所であった。