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第三章第五話
高一の夏休みは何事もなく過ぎていった。
高校一年の夏休みは何もなく過ぎ去っていった。若い私はみやびに再度電話しないで、俊ちゃんの家に入り浸って いた。おかしい。私の記憶に違いがなければ、この辺で俊ちゃんからバンドを作ろうという、私の高校時代の痛恨の出来事が始まるはずだった。そのバンド活動をするために部活をやめたのだから。
しかし、何もなく夏休み最後の日になった。
夏休み最後の日、相変わらず、家には一人きりだった。母はパートで中学生の弟は部活、小学生の妹は友達とプールに行った。若い私は、電話の前でウロウロして何度もため息をついている。どうやら、みやびに再度電話しようかどうしようか悩んでいるようだった。 私は意を決して、みやびの家の電話番号をダイヤルした。一回、二回と呼び出し音が鳴った。しかし、みやびの家の人は誰も出なかった。十回鳴らして出なかったら切ろうと決めた八回目のコールが終わろうとした瞬間、「もしもし。」と電話に出る若い女の子の声が聞こえた。