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第三章第四話
命からがら白バイから逃げて、部屋に戻った俊ちゃんと若い私は一息ついて、くだらない話をしはじめた。
私は混乱した頭を抱えてとりあえず、家に戻ろうとした。家の前の道を歩いていると、海の家の裏の畑から、いかにも怪しい人の足取りで、俊ちゃんと若い私が出てきた。二人は辺りを見回しながら歩いている。
俊ちゃんがフーッと大きく息を吐いて、「危なかったな。もう大丈夫かな。」と息も絶え絶えにつぶやいた。「うまく逃げられたかな。」私も息を切らしながらつぶやいた。やはりここは、私の高校時代ではないのだろうか?
俊ちゃんと若い私は私の部屋に戻った。そこで二人は馬鹿話をはじめた。話の中身は俊ちゃんがついに初体験を済ませた、という話だった。同じ中学の女の子が夜、俊ちゃんの部屋に来て、良いムードになって、そうなったらしい。
親のいる居間を通らずに、裏口のすぐ横の彼の部屋ならではの話だった。
「いいなー。羨ましい。」若い私は心底羨ましげな言葉を吐いた。私の記憶どおりなら、私がその機会に恵まれるのは、高校卒業時だ。残念ながら。