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モラハラ婚約者があまりにも酷いので、やり返すことにした【連載版】  作者: セトガワ トウ


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5話 借金取りとダークドラゴン

 フォルジア男爵家の質素な食卓の前で、私はぼんやりと両親を眺める。

 お父様であるリンド・フォルジアは金髪のイケオジだ。

 ただ表情は頼りなくて、争いに負けた野良犬みたいな感じだ。

 お母様のパメラは、レベルが違う清楚系美人で、優しさと気品がにじみ出ている。

 ちなみに、私には兄弟も多いのに誰も帰ってこない。

 

「はいリナリー、スープよ」


 お母様が驚くほど透明なスープを私の前に出してくれる。

 一口飲んで気づく。

 これ水……。


「……お母様、これは水ではありませんか?」

「ちゃんと塩を0.1つまみ入れたわ。まごう事なきスープよ」

 

 それは超極薄の塩水では? 

 

「リナリーは成長期なんだ。ちゃんとサラダも食べるんだよ」

 

 微笑みながらお父様がサラダの皿をこちらに押してよこす。

 もはや、ただの草に見える。


「お父様、これは裏庭で取れた雑草ではないのですか?」

「人間にも貴族や平民、家のない者がいるだろう。雑草の中の上位はサラダになるんだ。わかるね?」

「……わかりたくありません」

「食べなさい」

 

 圧力が凄いので一口だけ、雑草を口にいれる。

 ……草すぎる!!

 顔をあげると、お母様が私に微笑みかけてきた。


「今日はリナリーの新たな出発の日ね」

「そうだな。みんなで今日が幸せになるように祈ろう」

 

 三人で手を組み、神に祈りを捧げる。


 ドンドンドンッ! ドンドンドンドンッ!


 ものすごく乱暴に玄関のドアがノックされる。


「——おいコラァァァ! いるんだろフォルジア! 出てこいやっ!」

 

 ドスのきいた声が響く。

 ビビり散らかす私と、慌てふためく両親。


「まずい、借金取りだ……!」

「リナリー、隠れて!」

 

 母上に促され隠れようとするも、先に借金取りが中に入ってきてしまう。

 スキンヘッドと悪人顔の二人組だった。

 手には棍棒を握っている。


「おうおうゴラァッ! 暢気に飯食ってる場合なんかァ!?」

「ボケゴラッ、先月分の3000万リルはどうしたぁ!」

「そ、その件ならいま、ブスマン家に取り合っている」

「だったら手付金として、三日以内に1000万リル返せやァ!」


 て、手付金で一千万リル……。

 総額は不明だけど、フォルジア家は膨大な借金を背負っている。

 でも、三日で一千万は異常だ。

 平民の一ヶ月の生活は、平均で数十万リルほど。

 高すぎる。


「もう少しだけ待ってくれ、この通りだ」


 お父様がスキンヘッドの足にしがみつく。


「十分待ってんだよ、こっちはよォォォ!」


 スキンヘッドが近くの椅子を棍棒で破壊する。

 やめて、貴重な椅子が!?


「クソ美人な奥さんと娘に囲まれて、いいご身分だな?」

 

 悪人面がお父様のあごをくいと持ち上げ、下卑た笑みを浮かべる。


「返せないときは、この二人のどっちかを貰っていくぜ」

「それだけはっ、それだけは勘弁してくれ!」


 父上が訴えたとき——家が揺れた。

 食器がかすかに揺れ、天井の埃がパラパラと落ちてくる。

 地震にも似ているが、下ではなく上から揺らされた感覚だった。

 

「おい、いまのはなんだ?」

「外に出るぞ」

 

 みんなで一斉に外に出る。

 ——空が漆黒に染まっていた。

 そう、アルミラだった。


『薄すぎる魔力を辿ってきたが、当たりだったな』

「アルミラッ」

『屋根を剥がして調べるところだったぞ』

「絶対やめて! 来るなら事前連絡してって言ったよね!? 言ってなかったら、言ったことにして!」

 

 私が突っ込むと、アルミラは地上に降りてくる。

 射殺すような眼光で、家族や借金取りを見下ろす。


『なんだ、こいつらは?』

「この二人は私の両親。こっちは……敵」

「ちょ!? えっ!?」

 

 さっきまでイキり散らかしていた二人が顔面蒼白になる。

 

『ほう? お前の敵ということは、余にとっても敵になるか』 

「待ってくれ、敵じゃねえ。友達だ。そうだろ嬢ちゃん!?」

 

 急に手をすり合わせて寄ってきたので、胸ぐらを掴んでやり返す。


「誰と誰が友達だってぇ? さっきまでの勢いはどうしたんだ、ああんっ!?」

「ら、乱暴にしたのは謝るから!」

「借金チャラにしろよああんっ!?」

「それは……さすがに無理だ。別の奴らが取りにくるぞ」

 

 半泣きになるスキンヘッドを見て、頭を冷やす。

 確かに無理があるかもしれない。

 

「ならせめて、期間を延ばすように交渉して。失敗したら……」

  

 アルミラの方に視線を投げる。

 彼はいまにも家ごと踏み潰しそうな姿勢だ。

 絶対やめて!

 借金取りたちも交渉してくれるらしいので、解放してあげた。

 走って逃げる二人に、アルミラが鼻息をかける。


「うあああ!?」


 その風圧で二人とも飛ばされ、地面を何回か転がった。

 ナイス鼻息。


『おい、もう終わりか。そろそろ食い物をよこせ』

  

 人にもの頼む態度じゃないんだけど、アルミラのおかげで助かったのは事実だ。

 そこは感謝したい。

 後ろの方で、お母様の荒い呼吸音が聞こえた。

 振り返ると、二人とも石像みたいになっていた。

 

「ちょっとアルミラ! ここはまずいから森に移動しよう」

 

 問題は、両親共に膝が震えていること。 

 初対面だと威圧感が半端じゃないし、当然の反応だよね。

 

「お父様、お母様、落ち着いて。このドラゴンは私の友達なの。ね?」


 アルミラがうなずくと、両親も冷静さを取り戻す。


「すごいな、俺の娘は。ドラゴンと友達になるなんて……!」

「彼と出かけてきますね」

「ああ、気をつけるんだぞ……。あと返済延長してくれて本当にありがとう!」

「助かったわ!」


 チャリーン♪

 感謝ポイント 3000P 

        3000P

 

 おぉ……かなり感謝されている。

 借金取りを追い払ったからだろう。


「お父様。参考までに、借金の総額はどのくらいでしょう?」

「……元本と利息で、約50億だ」


 頭がくらっとして、私はその場にへたり込む。

 話を聞けば、昔は栄えてたお父様のご両親が、大規模事業に失敗して多額の借金を背負う。

 それを挽回しようとして、お父様も失敗したという。


「わ、わかりました……。とりあえず、いってきます」


 私はアルミラによじ登ると、ハイヤーとかけ声を出して空を飛ばせる。

 いや勝手にアルミラが飛行しただけかも。

 町の近くにあった森の中に誘導して、いつもの出し入れ収納で鍋、ガスコンロ、材料を取り出す。

 

 感謝ポイント 6150P


 両親の感謝がなかったらアルミラを怒らせるところだった。

 なるべく安い材料を取り寄せる。


『なにをしている? まだか?』

「少しは待ってよ。いま味噌汁っていう神のスープを作ってるから」

 

 鍋にいれたお湯の中で味噌を溶く。

 豆腐やネギ、出汁も入れていく。


『これは匂いが……いいな』

 

 オーケー。

 私は焼いた肉と味噌汁、蒸した野菜をお皿の上に並べて差し出した。

 

『フム』

 

 アルミラが一口。

 二口、三口と続けて深紅の目がすぅっと細くなった。

 

『スープはコクと風味があって美味い。肉も野菜も合格点だ』

「よかった。おかわり作るから待ってて」

『あい』

 

 どうせ一回じゃお腹は膨れないだろう。

 ただ、私も節約はしたいので、三千以上は残るように調整した。

 作っては差し出していく。

 急げ急げ。

 入学式に遅刻してしまう。

 

「今日はここまで。少ないけど我慢して」


 ここで、素材のことを思い出す。

 

「そういえば、魔物の素材の話覚えてるよね?」

『ああ。近い内に持ってきてやる』

「すっごく助かる! うち、本気で困窮してるから」 

 

 50億なんて途方もない額だ。

 少しでも多くお金を稼いで借金返済に充てたり、家の再建に努めたい。

 

「でも家にはいきなり来ないで。町の外の目立たないところが嬉しい」

『知ったことか。ドラゴンは人間の命令などきかぬ』

 

 まあ、そうだよね。

 私みたいなか弱い女が食い殺されないだけ理性的なドラゴンと判断するべきか。

 アルミラは町まで私を送ってくれると、すぐにまた飛び去っていった。

 まずい、初日なのに遅刻してしまう。


「これしかない……」


 私はママチャリに跨る。


「ロマーリオ学院か。嫌な貴族や金持ちが集まってそう。……まあ、負けないけどね」

 

 私はママチャリを漕ぎ出す。

 いくぞおらぁ。


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― 新着の感想 ―
一応多分ドレスを着て生活してるはずなのにママチャリを爆走する令嬢…推せる!! ちなみに我が地元は自転車通学率9割のため冬は防寒のためスカートの下にジャージ履いてます。
いや~、何ですかこれ?(笑) 短編が面白かったのですぐこちらを読み始めたんですが、キレの良さが倍以上で笑いが止まりません。 是非ともこのまま、婚約解消とか婚約者の改心とかも一切無しで、モラハラ連中を撃…
ブスマン伯爵家がフォルジア男爵家と婚約を結んだのは何故なんだろう? 爵位は格下、リナリーは兄弟が多くいるので婿入りしても家督を継げる訳でもない、さらに男爵家の借金50億あり金の無心までしてくる。(リナ…
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