表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モラハラ婚約者があまりにも酷いので、やり返すことにした【連載版】  作者: セトガワ トウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/14

12話 素敵な夫婦

 お〜。

 高そうだなー。

 夜の自室で、私はアグネスさんから頂いた王家のハンカチを眺めていた。

 王妃様が私の仕事ぶりを認めてくれ、これをくれたのだ。

 貴重なものだし、大切にしよう!

 それはそうと、明日の準備をするかな。


「リナリー、お客さんよ! アレジオ様がきたわ!」

「おえっ」

 

 反射的にえづいてしまった。

 なんで家にくるのよ?

 嫌々下りていく。

 外に出ると、アレジオが前髪をかき上げてナルシズムに浸っていた。


「……どうかされました?」

「たまたま近くを通ったので一つ伝えるよ。明日、絶対に変な格好で来ないでくれ。大切な夜会なんだ。君が安っぽい服できたら、僕まで両親に怒られる」

「はぁ……」

「君が泣いて頼むなら別だけど、基本ドレスは貸さないからね?」

 

 私はうつむいて表情を殺す。

 やっほーーー! 

 ブスマン家のセンス悪いドレスきなくて済みそう!

 すごく嬉しいけど、ここで満開の笑顔をしたら、アレジオが文句言い出して帰らないもんね。

 我慢、我慢。


「ふふ。じゃあ、そういうことで。アディオス!」

 

 二本指を立て、これ以上ないくらいにキザッぽく去っていく。

 そのダサい挨拶、どこで覚えたの……?

 意味不明だけど、部屋に戻ってドレスを探す。


「自分で選べるのは嬉しいな! アレジオに選ばれるとか最悪だもんね〜」

 

 ポイントは97100Pまで増えた。

 夜食の食材に1000P使ったが、まだまだある。

 高いのにするか迷った末、コスパを優先する。


 サテンドレス 6000P

 ラインストーン(20本) 1200P

 パンプス 3900P


 素材はポリエステル、色はワインレッドだ。

 こちらではほぼ見ない、化学繊維特有の艶やかな光沢を放つ。

 こっちではかなり目立てる。

 髪飾りは銀色のU字ヘアピンで、先端にはラインストーンやパールの装飾がされている。

 星形のモチーフは、光を受けてキラキラと華やかに輝く。

 パンプスは無難に黒にした。

 

「ドレスよし、髪飾りよし。もう一つ、あれも買いたい。アレジオとの会話は証拠になるし」


 乾電池式ICレコーダー 8800P

 

 スピーカー付きで、録音も再生も単四電池さえあれば可能。

 私は、いずれ婚約破棄したい。

 ブスマン家に頼らずとも、借金を返せる状況になったら……。

 その日のため、アレジオのモラハラの証拠を集めていく。

 

「録音テストしてみようかな」

 

 電池はついてきたので録音スタートして一階に下りる。

 台所でまな板の洗浄をするお母様に、声をかける。


「今日の晩ごはん、美味しかったです」

「リナリーが持ってきてくれた素材のおかげよ。本当に助かるわ」

 

 フォルジア家の食材は私がまかなうことにした。

 ポイントもあるし、 

「はい。ところでお母様、髪飾り汚れてますね」

 

 古さもあってか、少し錆っぽい。

 

「そうなのよね……。少しみっともないけど、仕方ないわ」

「お父様に買ってもらうのはどうでしょう」

「ダメよ。借金が大変だし、あの人も苦労してるから。欲しいって言ったら無理してでも買うでしょ。貴方たちが元気でいてくれたら、わたしはなにも要らないわ」

「……わかりました」

  

 あなた……なんていい母親なんですか!!

 涙腺崩壊しそうになりつつ、リビングにいく。

 ソファーの端で、お父様が頭を抱えている。


「……どうやって家族を救う? 人の心を掴む商売……なにか売れるものは……?」

  

 借金で頭がいっぱいみたいだ。

 私は静かに、隣に腰掛ける。


「お、おお、リナリーか……。どうしたんだい?」

「友達から面白い魔道具借りたんです。二人だけの秘密にできますか?」

「……約束する。見せておくれ」

 

 私はボイスレコーダー出して停止ボタンを押す。

 

「人の会話を記憶して、再生できます」

「なんと……!? いまはそんな物があるのか!?」

「私とお母様の会話です」

 

 再生ボタンを押す。

 先ほどの、髪飾りのやり取りなどが再現された。

 聞き終えた父は切ない顔で、一点を見つめる。


「……リナリー。装飾屋ってまだ開いてるかな」

「買いにいくんですか? でもお金は……」

「少しならある。なんとかするよ」


 お母様の言う通りだ。 

 素敵な夫婦だなー。

 転生先がリナリーでよかった。

 フォルジア家の未来を守るため、一段と気合いが入る。

 それはさておき、私は出かけようとするお父様を止める。


「明日の夜会用に買ったものですが、数が多すぎて余ってます。私のことは内緒で、これを母上に」

 

 先ほどのラインストーンの髪飾りを五本、お父様に渡す。

 

「——なんて綺麗なんだ!? これ、高かっただろう!」

「ちょっと伝手があって、格安で譲ってもらいました。こうやって付けてあげます」

  

 私の髪を練習台にして、お父様にレクチャーする。

 マスターしたところで台所に送り出す。

 私は物陰に隠れ、二人の様子を窺う。

 お父様がぎこちない手つきで髪飾りをつけてあげる。

 お母様は嬉し涙を流し、抱きついた。

 ナイスお父様。

 私は親指を立て、足音を消して二階に戻った。


 ☆


「くくっ……。リナリーのうつむいた顔、最高だったなぁ〜!」

 

 フォルジア家からの帰り道、アレジオは愉快そうに笑った。

 月光が顔を照らすと不気味に見え、すれ違う人はギョッとするほどだ。

 

「あとは明日だ。きっと、ボロい服装で来て父上に怒られる。そこで僕がドレスを貸して、主導権を握る」

 

 アレジオは楽しみで仕方なかった。

 誰が相手であれ、マウントを取る瞬間というのは気持ちいい。

 それが美人な婚約者であれば、脳汁がドバドバ出て仕方ないのだ。


「お〜い、兄ちゃん。なに一人で笑ってんだ?」

「いい服着てるな。俺らに金貸してくれよぉ」

 

 二人組の荒くれのような男が、アレジオに絡む。

 二人とも手に持った刃物をチラつかせる。


「失せろ貧乏なウジ虫どもめ。僕はいま、気分がいいんだ」

 

 この一言が荒れくれたちの表情を変えた。


「俺らが凄腕の元傭兵だって、ガキは知らねえもんな」

「凄腕が金の無心をするのか? ゴミの思考回路は理解できないな」

「死ねやガキァァ!」


 荒くれたちは殺意全開で襲いかかる。

 元傭兵も嘘ではなさそうな動きだ。

 ただそんな彼らも、なに一つできない。

 動けないのだ。

 いつの間にか、足元が凍りついていて……。


「感謝しろよ、貧乏人ども。僕が法律という『鎖』に縛られていることに。それがなければ、お前らなど肉塊だ」

 

 ペッ。

 二人の顔面に唾を吐きつけ、アレジオは去っていく。


「——あぁ、明日はどうやってリナリーを困らせてあげようかな……。あの色白で綺麗な顔が歪むと……もうたまらないんだよなぁ〜!」

 

 アレジオは変態的な笑みを浮かべ、闇に消えていった。

 

お読みいただき、ありがとうございます!

面白いと感じたら、ブックマークや★で評価していただけると執筆のモチベになります!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
早く別れられますようにと思うことと絶対借金の件はお前んちが関わっててるよな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ