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モラハラ婚約者があまりにも酷いので、やり返すことにした【連載版】  作者: セトガワ トウ


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10/13

10話 ボサボサの髪を変えましょう

 教室に戻ると、隣のロリナが鏡とにらめっこしていた。

 髪の毛をしきりに触り、かなり気にした様子だ。

 あぁ、アレジオの無神経な一言に、だいぶ傷ついてるね。


「髪の悩みですか?」

「……まあね。最近、調子悪くて嫌になるわ」

 

 ぱっと見は綺麗なのだけど、よく見ると質感が乾燥気味ではある。

 ロリナはジィと穴があきそうなほど、私の髪を見つめてくる。


「あんたって、綺麗な髪してるね。なんでそんなツヤツヤなわけ?」

「これはですね、質の良いヘアオイルを使ってるんです」

 

 答えた瞬間、ロリナはガシッと私の肩を掴んできた。

 いつになく切実な様子で言う。


「あたしにも売ってよ。お金払うから」 

 

 本当に悩んでたんだろうなぁ。

 普通に貸してあげようと思ったが、ここで閃いた。

 異世界でも、女性の美に対する関心は日本と同じくらい高い。

 当然、それで悩んでいる人も多い。


「今回はお金はいりません。その代わり、広告塔になってください」

「広告塔……?」

「まだ時間はあります。来てください」

 

 強引気味にロリナを教室の外に連れ出す。

 校舎裏の目立たない場所で、髪を触ってみる。

 おぉ、ゴワつきがすごいね!


「酷いでしょ? あたしって火魔法使うじゃない? その熱ダメージが結構あるのよね」

「あとは硬水ってのもありますね」

 

 こちらの水は大体それだ。

 日本は軟水なので、私も最初は戸惑った。

 ロリナは首を傾げる。


「硬水ってなに?」

「カルシウムやマグネシウムっていうのが水に多く溶けてて、石鹸などと相性が悪いんです。なので、今回は軟水を使います」

 

 ミネラルウォーター、シャンプー&コンディショナー、あんず油、タオル。

 このへんを取り寄せて、まずは彼女の髪を水でしっかり濡らす。

 トライアル用のシャンプーを軽く泡立て、髪につけてさらにモコモコにする。

 ロリナが普段より高いトーンで言う。


「なんでこんなに泡立つの!?」

「水もありますし、シャンプーの質も良いので」

「しゅご……!」

 

 初めての経験に、だいぶ驚いているみたい。

 適度なところで流して、次はコンディショナーをつける。

 

「ふわぁ、すっごく良い香り……」

「洗った後の香りにも気を遣ってる商品です。日本製ですよ」

「あたし将来、絶対にニホンに住むわ」


 私もできたらそうしたいんですよ〜。

 叶わぬ夢に一抹の寂しさを抱きつつ、コンディショナーを水で落とす。

 タオルドライして、次はあんず油を馴染ませる。


「これも良い香りね」

「これは髪の表面をコーティングしたり、水の蒸発を防ぎます」

「よくわかんないけど、パサつきを抑えるのね」

「その通りです」

 

 やってみてわかったけど、ロリナの本来の髪はかなり綺麗で質がいい。

 水と製品の差で、ダメージを回復できなかったのがバサバサの原因だね。 

 あとは仕上げで、完全に乾かす。

 ここはイオン系のドライヤーを使いたい。

 

 ドライヤーR 220P(1分)

 

 五分レンタルする。

 さっきのと合わせて2450Pと結構高くついてしまったけど、ロリナには投資するだけの価値がある。

 ポータブル電源に繋いで、ドライヤーを起動すると、彼女の肩が小さく跳ねた。


「それって風の魔道具よね?」

「微妙に違いますけど、あまり気にしないでください」

「わっ、あったかいんだけど!?」

「温風も冷風も出ます。乾かしていきますね」

 

 感動しているロリナの顔を見ながら、髪を乾かしてあげた。

 近くで見ると肌がとてつもなく綺麗で、羨ましすぎる……!

 髪が乾くと、ロリナは手ぐしをして、その感触に目を丸くした。


「うそっ!? なんでこんなにサラサラなの……。あたしの髪じゃないみたいっ」

「それが、ロリナさんの本来の髪質です」

「ほんっっっとに、ありがと!」

 

 出会ってから一番可愛い笑顔で、私の手を包むように握っては、縦にぶんぶんと振る。

 やめて。

 可愛すぎて同性愛の方にいってしまう!

  

 チャリーン♪ 

 感謝ポイント 2000P 

 

 おー。

 かなり大きめの感謝だ。

 ずっと悩んでたことを解決したからだろう。

 収支で言えば、これでもまだマイナスだけど、本番はここからだからね。

 進化したロリナを連れて教室に戻る。

 女子ってのはめざとい。

 すぐに気づいてくれた。


「ロリナさん、髪の毛すっごく綺麗〜!」

 

 わらわらと女子たちが集まってくる。

 いいよ、いいよ!

 普段ならツンツン態度のロリナも、今日はかなりご機嫌だ。

 ほくほく顔でみんなに髪を触らせ、自慢している。


「サラツヤ!? どうやったら、そうなるの?」

「リナリーがやってくれたのよ」

「羨ましぃー。それになんと言っても、いい匂い〜!」

 

 女子が目を閉じ、スゥと鼻で息を吸い込む。

 幸せそうな表情が、香料の良さを証明している。


「クッ、なんだこの集まりは……。邪魔だよ君たち!」

 

 おっと、ここでグロッキーから復活したアレジオさんが戻ってきたようです。

 

「騒ぎの中心はロリナだったか。また髪が爆発でもしたのかい? 恥ずかしい女性だね、君は」


 彼は後ろ姿しか見てないので、ロリナの進化ぶりに気づいていない。


「失礼ね」

 

 ロリナが振り返った瞬間。

 ふわりと髪が空中に舞って、窓からの光を反射して、天使の輪が煌めいた。

 さらに甘酸っぱい杏の香りが広がり、アレジオの鼻を直撃する。


「なっ……!?」

 

 視覚と嗅覚を同時に刺激されたアレジオは、絶句してしまう。

 見とれるほどの変化ぶりに、衝撃を受けている。


「あらアレジオ。誰の髪が爆発してるって? あんたこそ、汗でわかめみたいな髪になってて素敵ね。惚れちゃいそう」

 

 プッ——

 誰かが吹き出す。

 激辛ラーメンの後遺症は見た目にも表れていたようだ。

 また辛さが甦ってきたのか、アレジオの顔がダルマみたいに赤くなる。


「うるさいうるさい! 女如きが偉そうに!」

 

 苛立ちマックスでアレジオは席に着く。

 いまの発言は痛いよー。

 私は知ってるからいいけど、Aクラスの女子の心証が最悪レベルに落ち切った。

 

「あんな奴いいからさ、私もロリナさんみたいにやって欲しい」

 

 キラキラした目で見つめてくる女子たちに、私は率直に告げる。


「手間がかかりすぎるので、すぐには無理です。でも香りとツヤが手に入るオイルなら販売できますよ。高いですけど」

 

 さあ商売の時間だ!

 ここの金持ち女子たちは、金に糸目はつけない。 

 というか、数万円くらいは、あまり高いと感じていないらしい。

 容量小さめのオイルを300Pで取り寄せて、3万リルで販売する。

 複数買う人もいたけど、20本で打ち止めにした。

 さすがにポイントが減り過ぎた。

 

 一度整理しておく。

 残り感謝ポイントは5200P。

 お金の方は……

 フィロー様のカップ麺1万×10で10万。

 アレジオのカップ麺1万2000。

 ヘアオイル3万×20で60万。

 合わせて71万2000。

 これに所持していた9万1000を合わせる。

 ——80万3000リル

 

「うほっ♪」

 

 やばいやばい! 

 乙女が出しちゃダメな声が出ちゃった。

 これだけあれば、残り返済額は……

 

 49億9919万7000

 

 やっぱ夜逃げしかないぃぃ(号泣)

 

「リナリー、いいかな」

 

 フィロー様が教室に来ていた。


「さっき言い忘れたんだけど、前に話した侍女頭が、週末に君に来て欲しいんだって」

「土日、どっちでもいけます!」

 

 即答した。

 少しでもお金を稼がなきゃ。


「じゃあ、明日いいかな。僕はいないけど、報酬弾ませるように言っておくから」

 

 神様が爽やかな印象を残し、教室から出て行かれた。

 聞き耳を立てていたアレジオが早足でやってくる。


「リナリー。わかってるだろうけど、日曜はダメだ。夜会だからね」

「あぁ、そうでしたね……」

「今回はドレス貸さないからな。明日一日、僕に誠心誠意尽くすなら話は別だけど。どうする?」

 

 そんなの王城いくに決まっている。

 私は無言で着席した。

 チョークが飛んできて、アレジオの頭を弾く。


「痛だっ!?」

「いつまで昼休み気分だ、小僧が。俺が入ってきたらとっとと座れ」

 

 アバイン先生に敬礼。 


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― 新着の感想 ―
『感謝ポイント』について ・飴、カップ麺、ヘアオイルを【販売】した時は1ポイントも入っていない。 ・ロリナに【無償】でシャンプー等を使った時は2000ポイントも入った。 飴1個ならば感謝されなくとも…
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