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定時制高校教師「BIN」  作者: 高城昇
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殺人事件が起こる

 小山労務管理者の由香へのセクハラは相変わらずである。由香は仲の良い藤本司に打ち明けた。普段の学校での様子から藤本は密かに由香に想いを寄せていることが分かる。会社を休んだ藤本は、小山に面会を求めた。高山の場合と違って、受付で面会届を出したのである。学校に知らせが来た時は、すでに暴力事件になっていた。担任の中井と由香の担任である中山、教頭が神辺縫製に駆けつけたところ、やはり警察が来ていた。すでに藤本は警察署に連れて行かれ、小山は近くの寺田病院に運ばれていた。母親に北警察署へ行くように連絡し、3人は病院に謝罪に行った。小山は面会を断り、とりあえず症状を病院に聞いたところ、打撲程度の軽傷だった。

 中山のクラスには香山美穂という女子生徒がいる。やはり神辺縫製に勤めていて、大人っぽく見える娘である。香山は最近学校を辞めたいというようになった。事情を聞いてみると、「お母さんが、学校を辞めて夜も働きなさい。」と言うらしい。香山は母親と2人暮らしで母親は働いていない。早速家に行き母親と話をした。煙草を吸いながら胡坐をかいている母親に美穂の話をすると、

「あの子に働いてもらわんと、食っていけないんじゃ。私は働きたくても仕事がないんじゃ。」

長い時間、話し合いをしたが、学校を辞めさせる事は譲らなかった。美穂は終始下を向いたまま、黙っていた。2日後美穂が学校を休みスナックで働いている事が分かった。電話をかけてきたのはスナックのお客さんである。即座にスナックへ駆けつけた中山は驚きの光景を目の当たりにする。派手な衣装を着た美穂。さらに化粧も非常に派手だった。連れて帰ろうとすると、スナックのママが止めに来た。しかし中山は無理やり美穂を車に乗せたのである。この姿では学校には行けず、美穂の家に連れて帰った。母親は困った顔でスナックから連れて帰ったことに怒っていた。中山はそのまま学校に帰ると、男たち3人が校門で怒鳴っている。

「何のつもりじゃ。あの子は俺に任されとんじゃ。」

中山と3人の男が口論していると、同僚たちも出てきた。話が終わらない様子を見て、教頭が警察を呼んでしまったのである。パトカーが来て、警察が男たちと話をしてその場は収まった。しかし、またしても男たちは学校に現れた。

「誰が警察を呼んだんなら。」

中山と数人の同僚達も出てゆき、話し合いをしていたら、男たちの一人が美穂の母親と知り合いらしい。男たちと中山、佐野、柴田が香山家で話をすることが決まった。話をするうち、男たちは母親に金を払う約束をしていること、神辺縫製の小山が男たちの一人と知り合いで、美穂を仲介していることが分かった。話はまとまらず、美穂の意思は全くない。とりあえず明日から学校に来ることを告げてその場を後にした。この話は飲み屋界隈で有名になり、「串かつ美恵」でもマスターが

「ビンさん、ここのお客さんでヤクザがおるけど、こんな先生がおるんじゃのう。表彰もんじゃ言うとったで。」

その後佐野、大山と飲んでいたところ暴力団の菊池が現れた。

「あんたが、中山さんか。生徒のためにここまでする先生はおらんじゃろ。わしの女房も言うとったで。スナックのママをやっとるがな。木島らは、評判が悪いけんなあ。わしもそうやけど。」

菊池は、暴力団だが、一見は人が好い伯父さんに見える。木島とは3人組の一人で暴力団には属していない。

「先生、シャブやろうか?」

やんわり断ったが、やはり本物の暴力団だった。

 木島たちは、時々学校に来て嫌がらせをする。登校中の女子生徒に声をかけるし香山は怖がって、中山が連れてきている。神辺縫製の小山に、香山の件で抗議に行った時、寮に入れて欲しいとお願いしたが、受け入れてくれなかった。事実は分からないが、小山は香山の件でお金を受け取っていないらしい。「串かつ美恵」では中山達が木島達の愚痴をこぼしていた。マスターが心配そうに話に入る。しかしある日から全く木島たちは来なくなった。「串かつ美恵」のマスターが菊池に相談したらしい。暴力団の力を借りた事が意に沿わない部分があり、複雑だった。美穂の話によると、小山は香山家に呼び出され、母親と木島にお金を要求されたらしい。小山は拒否したが、代わりに卒業した娘を紹介するように脅していた。自業自得な面もあるが、今後も気を付けていかなければならない。

 藤本は警察署での取り調べで不起訴になり、学校に通っている。神辺縫製へは行

かない、小山とは合わない事が条件である。由香は藤本の事件以来セクハラはなくなったけど、嫌がらせは度々あったらしい。ついに由香は神辺縫製を辞める決心をした。生徒たちの話によると、由香は仕事ぶりが非常に良い評価をもらっている。それだけでなく、人間関係も良好で後輩の面倒をよく見るらしい。会社にとっても痛手で、会社の役員は小山の調査を始めた。神辺縫製の常務が秘密に学校へきて教員達から聞き取りを行い、勿論中山も同じである。その他会社から通っている生徒たちの聞き取りも、秘密の中で行われていた。由香が会社を退職したタイミングで小山の降格が決まり、事務関連の部署に移動した。新しい労務管理者として30代前半の清水昭雄が営業部から昇格したのである。若い清水は小山と違って腰が低く丁寧な口調だった。また清水は福山西商定時制を5年前卒業した山崎綾子と付き合っている。結婚を前提にお互いの家族も認めている。山崎は中学校の時からバレーボールの経験者で定時制でもバレー部で皆を引っ張っていたらしい。卒業しても、会社が終わり部活の時間になるとバレー部の指導をしていた。明るく礼儀正しい山崎は生徒たちからは姉のような存在で、教師たちからも一目置かれている。

 神辺縫製の生徒たちからは、労務管理者が交代したことで、働きやすくなったと聞くようになった。時々遊びに来る山崎も職場の雰囲気が変わったと言っている。中山や他の同僚たちも一安心していた。香山も無事に寮生活が送れるようになり、母親と別れて暮らしている。由香は神辺縫製を退職し、近くの個人経営している縫製会社で働いている。高山は相変わらず次回の大会を目指して練習に励んでいる。藤本は、職場が変わった由香の心配をしながら、明るく由香と談笑する姿をよく見かける。中山達バンドのメンバーは相変わらず「串かつ美恵」で飲んでいる。しかし大きな事件が起きてしまった。

 いつものように中山が出勤してお茶を飲んでいると、職員室には誰もいなかった。すると教頭が校長室から職員室に来て、

「ビンさん、神辺縫製の小山さんが死体で発見されたみたいじゃ。」


      つづく

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