英語の授業
中山は英語の教師であるが、赴任して数か月後から教科書を使っていない。主要教科は、一人ですべての学年の授業をしている。赴任後の引継ぎもしていない。自作の教材として、簡単な物語や話題になった出来事、ニュースを英語でプリントしている。楽しそうに日本語訳をする内容もあるが、生徒たちにとって興味がない話では前向きにはならない。音楽が好きな中山は外国の音楽を取り入れることを考えた。
「故郷へかえりたい(Take Me Home Country Roads)」を聞かせた所、生徒からは好評だった。授業で何度も英語の「故郷へかえりたい」を聞かせていると、雰囲気は分かってきた見たいだった。まず情景がわかるように英語の歌詞を日本語に訳す授業から始めた。すべての歌詞を訳すにはかなりの日数がかかり、飽きないように時々音楽をかける。自作の英語で書いたプリントを使って、訳すわけだが、ほとんどの生徒は辞書を使えない。全体授業であなく、個別に教えていく方法しかなかった。ようやく日本語訳が終わり、いよいよ歌である。
歌は英語で歌うので、まずは読み方を英語で作ったプリントに書いて行く。その上で音楽に合わせて歌っていかなければならない。あらかじめ英語の歌詞を日本語に訳した時英語の読み方は少しは理解できていた。ゆっくり歌う場面はいいが、早く歌う歌詞の場合は上手く行かない。何度も何度も音楽を聞きながら歌う練習をした。特に「I hear her~yesterday yesterday」は特に難関である。それでも曲が気に入ったのか練習をしていた。この授業は、校内に広まり同僚の教師達が見に来ていた。佐野も柴田もとても興味を持っている。柴田は「定通分養」の会合でその話をしたところ、福山地区の「定通分養」教師たちが授業参観をしたいという話になった。早い方がいいだろうということで、2日後に決まってしまった。
授業参観の日、思ったより多くの教師が集まっていた。組織のリーダーは勿論、ベテラン、中堅、新任教師まで来ていた。中山は授業の計画を立て黒板に英語の歌詞をすべて書いた。いつもはプリントを利用しているが、今日は板書で行った。授業前同僚達が手伝ってくれて、どうにか間に合った。早めに来た他校の教師たちからも励まされ、計画通りスムーズに終わり、生徒たちは楽しそうに歌った。授業が終わった時、組織のリーダーが名残惜しそうに、
「最後に皆で歌おうや。折角じゃし。中山さんいいじゃろ?」
生徒たちも喜んだみたいで、参加者たちが後ろから前、横に並び全員で歌った。授業の後、新市工業高校定時制の大山信之が、
「中山さん、音楽が好きなん?この歌以外にどんな曲を聞くの?」
「特にフォークソングが好き。」
大山は、山口県出身で中山と同じ年に赴任している。同僚の佐野郁郎も会話に入り3人は意気投合した。大山、佐野、中山は同じ年に赴任している。大山と佐野は同じ年齢だが、中山は大学に入るのが遅く年上である。
(エピソード4につづく)




