宇宙生命体Z 巨大生物の逆襲
登場人物
桂木 亮
捕鯨船、新昭丸の乗船員。卓越した捕鯨砲の名手。
清水 清正
捕鯨船 新昭丸の船長。男気。真っ直ぐな性格。
小林 照一
新昭丸の見習い乗組員。明るく、一生懸命。清水からは坊主と呼ばれている。
村本 誠司
新昭丸の機関整備長。清水からは博士と呼ばれている。元は軍艦の設計などを担っていた。
望月 健二
新昭丸の腕利き整備士。元軍艦の一級
整備士。
田中 景子
家族を空襲で亡くした。隣家の女性。愛子を我が子のように親身に世話をしてくれている。
それは、たった一つの細胞でしかなかった。
宇宙から飛来した隕石に内包された、ちっぽけな生命だった。
乾燥した状態で何万年も休眠し宇宙空間をゆるい楕円軌道で徘徊していた。
そして、いよいよ太陽系の引力に誘われ、この招かれざる客は迷い込んできた。
更に運の悪い事に、この隕石は地球の軌道に最接近し、その重力に身を任せ大気圏に突入したが燃え尽きる事はなかった。
それはオレンジ色の炎とゴウゴウたる煙をまとい東京上空を、かすめるるように日本海に落下し、静かに
深い深い海底の奥深くに沈んでいった。
人々はその光景を見て戦後下にあってもなお、敵国の爆弾攻撃かと怯えた。そして、その後のラジオニュースによって、やっと、それが隕石であったと知ったのだった。
隕石落下から、ひと月過ぎた。あの隕石に潜んだ細胞は驚くべき変化を遂げていた。
隕石の粒子の隙間から海水が染み込み、乾燥した細胞は水分を吸収し大きく増殖していた。
そして、それは軟体生命体となり、隕石の粒子の隙間をジュルジュルと染み出し海水に抜け出した。
まず、その細胞は不気味な姿をした深海魚に寄生した。そしてその宿主をすぐに我が物とし行動した。
それは次々と他の魚類を食し巨大化した。しかし、その成長速度は地球上の、どの生物とも違っていた。
それは、食したものの特徴を取り込み、一世代で恐ろしい程の進化を遂げた。
その大きさは鯨を凌駕し、全身は亀の甲羅のような鱗をまとい、その一つ一つがトカゲのような鋭利なトゲで覆われていた。
背中には大きな角の様な骨柱が並び、その間には分厚い鰭が張られていた。それは尻尾へと伸び、その尻尾の先端も平たく鰭となり、その泳ぎの推進力を大いに担っていた。
しばらくすると、その巨大生物は海上に姿を現し、人的被害を及ぼす様になった。
まず、襲われたのが漁船だった。折角の大漁の底引き網が根こそぎ狙われ、船ごと海中に引き込まれた。漁師達はそのまま船もろとも沈んだ者もいた。
その後も、その巨大生物によって、たびたび漁船が
襲われた。
しかし、軍の再編はまだ行われていなかった。連合国による武装解除を受け、未だ外敵に対する防衛手段を持ち得なかったのだ。
桂木亮は捕鯨砲の前にいた。頬を濡らした波しぶきを、作業着の袖で拭うと標準装置を睨んだ。その先には三頭の大型の鯨がいた。
1945年。GHQは戦後下の深刻な食糧難対策として捕鯨再開を許可した。大量のタンパク源の確保の為だった。
捕鯨船は3頭の内の一頭の鯨に向かい船足を早めた。桂木が標準を定めモリを打とうとした瞬間。鯨はもがくように海中に消えた。その後、海上が、赤い色に染まった。鯨の血液だと桂木には、すぐにわかった。
次の瞬間、鯨の巨体が水しぶきと共に軽々と宙に浮いた。それに連なり更に巨大なものが姿を現した。それは鯨を咥え巨大な上半身を海上に晒した後、捕鯨船を認識し凄い速度で迫ってきた。
清水船長は左舷に思い切り舵を切った。しかし、おそらく衝突は免れないだろう。
桂木は最後の手段に出た。照準器を睨むと巨大生物に向けモリを発射した。"ドーン!"勢いよく飛び出したモリは巨大生物の眉間に"ドスッ"と鈍い音を立てて突き刺さった。
"ギエェーッ!"
気味の悪い叫び声を残して、巨大生物は海中に消えて行った。その直後"ガガッ"と船が軋んだ。
ロープが、弦楽器のようにビーンと張って船は大きく傾いた。
“ジャーン"そこへ、けたたましい機械音がした。望月健二がチェーンソーをロープに当てたのだ。難しい状況での作業となったが半分程切るとロープは張力に耐えられなくなり"バチッ!」っと弾けて海中に消えて行った。
"ザッパーン"反動で船は大きく揺れた。乗船員はみなあちこちに、つかまって何とか難を逃れた。
「みんな、無事かぁ?」
清水船長が、大声で呼びかけた。
「おお。坊主!無事だったか!
ロープと一緒に、海の藻屑になっちまったかと心配したぞ!」
「勘弁してくださいよ。
ちゃんと、望月さんの手伝いをしてましたよ!」
「ああ、そうだ。望月さん。
ありがとうございました。命拾いしましたよ。」
「いや、小林君が直ぐにチェーンソーを用意してくれたので。彼のお手柄ですよ。」
「さすがだ!奢る事が無い。坊主!見習えよ!」
「はい!わかりました。」
「今日は返事が良いな!よし!長いは無用だ。
今日は引き上げるぞ!」
捕鯨船は夕日を受け帰路に向かった。
数日して東京湾に巨大生物が上陸した。その姿は捕鯨船が遭遇した時よりも、更に巨大化していた。
大きな脚はその巨体を支えるのに充分な大きさを要していた。あたかも地上に立つ事を目的として進化したようだった。
そしてその額には、あのモリが深々と突き刺さったままになっていた。それでも、しぶとく生きていた。恐るべき生命力だ。
そのモリの先にはロープが、まだ繋がっていた。それに眉間の、傷からドロリとした脳髄がしたたり、首を振るたびにその粘液を撒き散らしながらムチのように人や物を薙ぎ倒した。
巨大生物は新宿方面へ向かった。その経路の建物は
全て無惨な瓦礫の山となった。
その日、花田君枝は愛子を隣家の田中景子に預け、用事で新宿にいた。
街角の洋裁店のショウインドウのワンピースに見惚れていると"ドシーン、ドシーン!」大きな音と揺れが伝わってきた。
思わず爆撃機の攻撃かと空を見上げたが、そんな筈は、なかった。ただ快晴の空が、広がるばかりだ。
しかし、すぐに只事でないとわかった。多くの人が恐怖の声を上げながら逃げ出した。
彼女も不安になりその場を離れようとすると
"ドーーン!"
更に大きな爆音と激震に襲われた。君枝の身体は宙に舞い石畳に叩き付けられた。
「あっ、痛ぁ…」
起き上ろうとすると"ビチャ!"と粘液質の物が頭上から飛んできて腕に付着した。そのドロリとした液体はすぐに浸透していった。君枝がビックリしていると辺りが、突然日陰になった。振り返り見上げると向かいのビルに覆い被さるように巨大生物が、迫っていた。
「きや〜っ!」
叫び声を上げたが、立ち上がる事はできなかった。恐怖で身体から血の気が、失せていたのだ。
その時、遠くで桂木の声がした。
「君枝さーん!」
ラジオのニュース速報で君枝の危機を察知し探しに来ていたのだ。
桂木が、駆け寄ろうとした瞬間だった。辺りが太陽光線のように目も眩むくらい明るくなった。巨大生物の胸の辺りの甲羅の隙間から光が放射されている。
次の瞬間。彼等の頭上を越え蒼白い放射熱波が発射され遥か先で大爆発を起こした。その光が見えた後、少し間を置いて爆風と衝撃波が襲いかかってきた。
桂木はビルの陰で難を逃れたが君枝は歩道に投げ出されていたので、まるで木の葉のように瓦礫と共に吹き飛ばされた。
桂木の目には、それがスローモーションのように見えた。
もがきながら宙を舞う君枝が桂木の方に手を伸ばし助けを乞うていた。すがるような瞳でこちらを見つめていたのだ。
成す術など一切なかった。辿り着いても一緒に飛ばされていただろう。
「何故こんな事に?
あの巨大生物の眉間のモリは俺が刺したものだ。
それは、間違いない。もしや、復讐に来たのか?
それなら、俺がやられればよかったんだ!
何故?何故、君枝さんが犠牲にならなければならなかったんだ。
いや、まだ、亡くなったと決まった訳じゃない」
そう自分を慰め励まし鼓舞して歩道へ向かった。
それはあまりに無惨な光景だった。建物の陰になって、わからなかったが周辺の建物は殆ど倒壊し瓦礫の山となっていた。
方々探したが君枝の姿はどこにも無かった。
桂木は絶望だけを抱えて帰路に向かった。
一週間して突然、日赤病院から電報が来た。
君枝が、無事だとの知らせだ。外傷があるので入院をしているとの事だ。
桂木は信じられなかった。あの爆風で生きていられるはずがなかった。しかし、何か、瓦礫の陰になり奇跡的に助かったのかもしれない。そう都合の良い解釈をして自分を納得させた。
桂木は愛子を連れて直ぐに病院に向かった。
病室に着くと君枝はベッドに座り優しく微笑んでいた。桂木は思わず君枝を抱きしめた。こんな事、一度もした事なかった。気持ちさへ、まだ、ちゃんと伝えてないのだ。
「あっ、ごめん!つい…。でも、良かった。無事で。
君枝さんには、謝らなくてはならないんだ。
俺が、しでかした事で君枝さんは、
あんな危ないめに合ったんだ。
本当に申し訳なかった。」
「何言ってるの。謝る事なんて何も無いでしょ!
だって亮さんは私を探しに来てくれた。
それだけで充分ですよ。ありがとうございました。
あっ、愛子!ごめんね。はい!いらっしゃい。」
そう言うと君枝は愛子を抱っこして頬ずりした。愛子も嬉しそうに笑っている。
また三人の生活が復活できる。桂木は二人の姿を見てしみじみと、その幸せを噛み締めていた。
君枝が退院する日が来た。
朝一番、桂木は愛子を連れて病院に彼女を迎えに行った。
病室に入ると君枝は既に身支度を整えていた。
あの日、巨大生物の熱呼吸で起きた爆風で吹き飛ばされたが奇跡的に命を取り留めた。しかし、洋服はボロボロになっていたので、新しいワンピースを渡しておいた。
サイズは丁度良いみたいだ。何より似合ってるいる。本人も気に入ってくれたようで彼もホッと胸を撫で下ろした。
荷物を持ち、医師と看護婦さんに礼を言い病院を後にした。
しばらく歩いたが君枝が退院したばかりで少しきついだろうと、途中で開店したばかりのカフェに寄る事にした。
銀座の街は、まだビルが倒壊したままで瓦礫の山があちこちに放置されている。巨大生物の残した爪痕の大きさを痛感させるには充分な光景だ。
カフェに着いた。三人で窓際の席に着いた。君枝の隣に愛子が、ちょこんと座っている。誰が見ても本当の母娘と思うだろう。
桂木は君枝の正面に座り、愛子とメニューを見ていた彼女に
「大事な話がある。」
と告げた。
桂木は酷く緊張していた。君枝も、その表情を見て
真剣な眼差しで彼を見ている。
「君枝さん。あっ、あの、えーっと。そうだ。
退院、おめでとう!」
「ああっ…。ありがとうございます。」
君枝は肩透かしを喰らって気が抜けた様だ。
(ちっ、違うんだ。そうじゃ無い。
しっかりしろっ!俺っ!)
「君枝さん!」
「はっ、はい!」
しばらく沈黙が続いたが桂木は意を決して、こう告げた。
「結婚しよう。ちゃんと籍を入れよう。
もちろん愛子も一緒に。家族になって下さい!」
君枝の返事は、まだ無い。白いハンカチを顔に当てて、テーブルの方に顔を伏している。
しばらくして彼女が急に顔を上げた。笑っているが
瞳は真っ赤に充血している。
「はい!喜んでお受けします。」
「そう…。あっ、そう。やったぁ!
愛子。やったよ。これからもずっと一緒だ。
これからはお父ちゃんって呼ぶんだぞ!いいな。」
「まあ、急にそんな事。それは、ゆっくりとね。
自然にそうなりますよ。フフフッ。」
君枝は泣き笑いしていた。桂木も自然に涙が出てきた。
愛子がそんな二人の姿を大きな瞳でキョトンと見ていた。
仲間内に結婚の報告をした。清水船長の声掛けで、みんなでお祝いをしようと桂木家に集まった。
清水船長が乾杯の前に挨拶した。
「桂木。君ちゃん。結婚、おめでとう!
やっと、ここまで来れたな。
君ちゃんが居なくなって、コイツの落ち込みようは大変なものだったよ。でも無事で良かった。
これからが門出だからな困った事があったら何でも相談に乗るからな。
君ちゃん。遠慮しないで言ってくれよ!」
「はい!ありがとうございます。」
君枝が満面の笑みで応えた。
「はい、はい!話しが長いですよ。
早く乾杯しましょうよ。」
小林が器を上げ急かした。
「坊主!お前は酒が飲みたいだけだろ。
しょうがねぇ奴だな。よし!わかった。
仕切り直しだ。
桂木。君ちゃん。結婚おめでとう。カンパーイ!」
「かんぱーい!」
みんな器を合わせて乾杯した。
景子さんは愛子を膝に抱いて手拭いで涙を拭いている。
「良かった。本当に良かったよ。ねー、愛ちゃん。」
そう言って愛子の小さな手を握った。
村本も器の酒を一気に飲み干すと嬉しそうに涙を拭った。
「そっかぁ。そっかぁ。
やっと本当の家族になれるんだなぁ。
そっかぁ。良かった。良かった。」
皆、戦争で、それぞれの家族を亡くし悲しみを背負っていた。追い討ちを掛けるように巨大生物が出現し破壊の限りを尽くした。
その絶望の最中にあってでも小さな希望の光を灯してくれたのが、愛子の汚れのない笑顔だった。
皆、今、この家族の幸せを我が事のように喜んでいた。
「こんばんはーっ!」
玄関で聞き覚えのある声がした。君枝が出迎えに行った。一升瓶を下げた長身の男性が立っている。
望月健二だ。
「お忙しいところ、私達の為にお越し頂いて申し訳ありません。ありがとうございます。」
「君ちゃん。そんな堅苦しい挨拶は、いいから、さぁ、さぁ、上がって貰って…。」
そう言いながら急かすように望月の背中を押しながら居間に案内した。
「こんばんは。」
望月は皆の顔を見ながら改めて挨拶をした。村本は興奮して立ち上がった。
「おおっ!望月さん。良く来て下さいました。
その節は、お世話になりました。
あなたの手腕なしでは、あのの危機から逃れる事は出来なかった。心から感謝していますよ。」
そう言って彼の手を両手で握った。
「博士。気が済んだら、その辺にしとけ!
さあ、望月さん。座って。
君ちゃん!酒、酒。どんどん持って来て!」
座に着くと望月が真剣な眼差しで言った。
「私のした事など大したものじゃありませんよ。
桂木さんの卓越した腕と判断が功を奏したんです。」
すると清水船長が声を上げた。
「そうだ!そうだよ。皆んなの力だ。
皆んなが力を合わせて、あの怪物と戦ったんだ。
だからあの時、助かったんだよ。なあ!」
皆んな涙を流しながら、頷いた。
「あっ、そうだ。皆さんに報告が、あります。」
桂木が突然、話し始めた。それを清水船長が遮った。
「何だ!おめでたか⁉︎」
「何を気の早い事を言ってるんですか!
それは、まだですよ。」
慌てて否定した。君枝も赤面しながら手を振って否定した。桂木が再び話し始めた。
「ちゃんと聞いて下さい。
君枝さんには話してありますけど、今度、望月さんと土木建設の仕事に関わろうかと話しているんです。
行く行くは会社を設立しようと思っています。
一刻も早く、この戦争と巨大生物の破壊した街を復興させたいんです。その仕事に携わりたいんです。」
「おお、突然だな。
エース級を二人も失くしてしまうのか?
困ったな、こりゃ!
でも、それ、いいじんゃねぇか。
海の事は俺達に任せろ。
こちとらには、日本国民の食を守るっていう。
大事な役目があるんだ。
ひもじい思いばかりしてきたからな。
これから鯨様から不足したタンパク質を頂くんだ。
ありがたい事だ。
そう言う事だ。陸の事は頼んだぞ。
よーし!また、明日から頑張るぞー!なぁ、坊主!」
「だからーっ!もう坊主はやめて下さいよ。」
「ハハハッ!」
皆んなの笑い声が外まで響いた。
数日後の昼過ぎ、来客があった。
「こんにちはー!桂木さん。日赤病院の者でが…。」
玄関から声がした。しかし、君枝は格子戸をまだ開けなかった。少し戸惑いがあった。
「どちら様ですか?」
「日赤病院の高松と申します。
その後の容体が気になりまして、
後遺症等ございませんでしょうか?
あっ、君枝さん。ご本人でいらっしゃいますか?」
君枝は少しだけ格子戸を開けて応えた。
「いいえ。姉は今日は出かけております。
私は留守番を頼まれまして、今日ここに…。
姉が帰宅しましたら伝えておきます。」
嘘を言った。それには理由があった。
「そうですか。よろしくお願いします。
では、またお伺いします。失礼します。」
彼の口元は笑っていたが、目の奥に、何らかの企みが見えて、嫌な気分になった。
君枝は急いで鍵を閉め、格子戸を背に深く息を吐いた。
「フーッ!やはり、あの話は本当だったのね。」
退院する前日に看護婦さんから聞かされた話があった。
巨大生物の放った粘液性の、その細胞に侵された者は監禁や隔離の対象になると言うことだった。
体に鱗状のケロイドや痣が出たものは、強制的に他の施設に移されたと言う。彼女は私の身を案じて、敢えて話してくれたのだ。
私は退院の日に、腕に痣が現れたので難を逃れたが、他の人たちが今どんな状況にあるのかは一切わからない。
桂木が帰宅した。
「ただいまー!」
愛子が玄関に小走りして迎えた。桂木は愛子を抱き抱えると、居間に腰掛けた。君枝は台所で夕飯の支度をしている。
「あー、疲れた。今日はダンプが調達できなくてね。手押し車で瓦礫集めだ。
どこも同じ状況だから贅沢は言ってられないけどね。地道にやるしかないな。」
君枝が冷酒を用意してくれた。
「お疲れ様。」
そう言いながら笑顔でお酌してくれる。器一杯に溢れそうになった酒を一気に飲み干した。
「フーッ。ああ、うまい!それじゃあ、頂きます。」
みんなで手を合わせた。愛子が正座をして、小さなお椀にお箸で上手にご飯を食べている。
「亮さん。今日ね。日赤病院の人が来たの。
それでね。お加減はどうですかー?って、でもね。私、居もしない妹のふりをして、誤魔化したの。」
桂木は愛子を抱きながら心配そうに聞いた。
「でも大丈夫?心配してきてくれたんじゃないの?」
君枝は少し声を潜めて神妙な面持ちで答えた。
「それが、どうもそうじゃないらしいの。
私、看護婦さんに聞いてたの。
痣とか鱗とか、体に現れたら、どこかの施設に隔離されるって…。」
君枝はブラウスの袖のボタンをはずして、まくり上げた。
「この痣。見つかったら、私も隔離されてしまう。
私、そんなの嫌!亮さんと愛子とずっと一緒に居たいの。うううっ…。」
不安になったのか君枝は泣き出した。
「そうか。わかった。
俺が絶対守るから心配しなくていい。」
桂木は、そう言いながら君枝の肩を抱き寄せた。
アメリカによる広島長崎の原爆投下。その後の巨大生物による超熱波の攻撃と日本は世界でも他に類を見ない壊滅的被害を被った。
GHQは原爆投下後、当初、広島の日赤病院で、被爆者の治療にあたると打診し、施設に乗り込んできた。 しかし実際は、傷や火傷の症状など、あらゆるデータを収集することを目的としていた。
彼らはこの日本を攻撃した相手だ。民間人を容赦なく大量殺戮した。その当人が今更、治療などと口にするのは矛盾し過ぎていた。
しかも、巨大生物が現れると、ソ連との関係性を重んじて。米軍は一切その手を引いたのだ。日本はアメリカに軍事力を奪われた上に見捨てられたのだ。
巨大生物の攻撃の後、GHQは今度は東京の日赤病院に乗り込んできた。
巨大生物の粘液細胞を究極を意味する「Z細胞」と名付け感染の症状のデータ収集と傷や鱗状のケロイドなどを調べ尽くした。
その過程で感染者を隔離し、研究対象として扱うと結論づけたのだ。入院患者の中で、痣や鱗状のケロイドのあるものは、即座に施設を移された。
GHQは旧細菌防疫研究所を支配管轄とし、そこに患者たちを隔離した。すでに退院した者たちには、日赤職員を家庭訪問させ、症状の聞き込みを行わせ、無償治療、並びに恩赦を与えると誘いをかけた。
無論、そんなものは一切与えてもらえない。研究対象となり、監禁隔離と、その牢獄のような施設から生涯出る事はできない。
細胞研究所となった施設には、次々と粘液細胞感染者が送られてきた。初期症状から中期後期と分けられ観察研究が行われた。中には、著しい症状を見せるものがいた。変化と言ったほうが良いかもしれない。
全身に鱗がびっしりと生え、歯は牙となり爪もトカゲのようになっていた。更に肩や背中にはヒレのようなものまで生えていた。
まさに、爬虫類人間とでも言うようなな姿に変わってしまっていた。
日本人研究所員は全て排除され、米軍医師や学者がその任務を遂行していた。冷静に冷酷に、その変化を観察し、データとして記録していったが治療などは一切行われなかった。
まだ人としての意識と、意思のあるものは、ここから出してくれと懇願した。怪物化したものは、檻に体当たり破壊して脱出しようとした。しかし、抵抗するものは拘束されたり、鎖で繋がれたおかげで、研究所内は獣のような鳴き声や叫び声で溢れ、異様な光景に満ちていた。
今夜は久しぶりに、仲間たちが酒とつまみを持ち寄って、宴を楽しんでいた。そこへ、玄関から声がした。
「こんばんはー!夜分に恐れ入ります。日赤病院のものですが、花田君枝さんはご在宅でしょうか?」
旧姓で呼んでいる。入籍の事までは調べていないようだ。立ち上がろうとした君枝を桂木が制して玄関に向かった。みんな声を潜めて、玄関のほうに耳を傾けた。
桂木が格子戸を開けると真っ黒な背広を着た男性二人が立っていた。道路の向かいに停まった車には運転手が乗っている。
「こんばんは。今日はどのような、ご用件で?
私は君枝と同居しているものですが…。桂木です。」
一人の男が愛想笑いをして応えたが目は相変わらず笑ってはいない。
「
失礼しました。私は高松と申します。
先日もお伺いしたのですが…。
君枝さんの、その後の症状など気になったものですから、後遺症などはございませんでしょうか?」
「申し訳ありません。
本人は親類の不幸で数日不在にしております。
帰宅はまだ未定なのですが。
怪我のほうは順調に回復しています。
後遺症もなさそうです。
何かあればまたお世話になると思いますので、
その節はよろしくお願いします。」
「そうですか…。わかりました。では失礼します。」
無念そうな表情をしていたが、立ち去った。走り去るバン型の車の窓には、鉄の網が貼られていた。まるで獣を搬送でもするかのようだ。
桂木が食卓に戻ってきた。君枝が心配そうにしている。桂木は、その白く柔らかい手を食卓台の下で強く握った。
「それにしても、こんな夜分に押し掛ける事はなかろうに、よっぽどの魂胆があるに違いねぇ!」
清水船長が不服そうに言うと、小林が続いた。
「何か噂ですと、あの怪物の被害を受けて、怪我をした人は、治療代は無料で、さらに恩赦も出るそうですよ。」
「そんな、うまい話あるもんか。
あんな怪物なんて災害みたいなもんだろう。
そんなもんに国が金なんて出すもんか。
ピカドンの被害者だってほとんど見殺しなんだぞ。
奴らどうせGHQの犬に成り下がって、いろいろ嗅ぎ回ってんだろ。」
清水船長はそう吐き捨てるように言うと器の酒を一気に飲み干した。
「君枝さんは大丈夫なんですか?」
村本が心配して尋ねた。
「はい!私は、もうすっかり良くなりました。
病院にかかる必要はもうないんですよ。
余計な心配をおかけして申し訳ありません。」
君枝が丁寧に頭を下げた。腕の痣の事は話せずにいた。すると謝る典子の姿を見た景子が堪らず言った。
「君ちゃんが謝る事はないよ。
何も悪い事なんてしてないんだから。
今度アイツらが来たらアタシが追い返してやるから!ねー、愛ちゃん。」
そう言って息巻いた。
巨大生物の東京湾上陸から数ヶ月が過ぎた頃、小笠原諸島付近で再び巨大生物の被害が報告された。
漁船団の数隻が襲われたのだ。生命からがら帰還できた者達の報告を新聞でもトップニュースとして取り上げた。
「脳天にモリを撃ち込まれながらも生きている神話の荒ぶる不死身の神。龍神か⁉︎」
と派手に報じた。
米軍は小型高速船での調査を行ったが大した成果は得られなかった。被害を被る事を恐れ、継続した探索は行われなかったのだ。
清水船長には被害者の捜索依頼の声が掛かった。新昭丸が捕鯨砲を積載している事が、その理由だった。 あくまでも捜索だけと言う条件で念押しし了解した。船員数名が承諾し共に乗船してくれた。
前回は桂木の速攻で難を逃れる事が出来たが、今は彼も望月も船を降りているのだ。残りの船員だけでは心元なかった。しかも、あれ程巨大になった、あの生物に今さら捕鯨砲では、何の効果も無い事は、わかっていた。内心、気は進まなかった。
しかし断れば、この船を降ろされ職を失くす事は目に見えていた。船長とて雇われの身だ。この戦後下で他に職を探す事は容易では無かったので渋々、捜索に参加した。
前回、巨大生物と遭遇した時には真正面から凄い速度で向かってきた。あの速さで追いかけられたら到底逃げ切る事は出来ない。巨大生物に遭遇せず、無事に遭難者を発見救出できることを願った。
日が落ちかけ、西の空が夕焼けになり始めた。水平線がその光景を映し出している。これといった手がかりもないまま、ひとまず今日は引き上げることにした。
「坊主!時間だ。今日はもう引き上げるぞ。
日が暮れてから、あのバケモノが現れたら事だ。
発見が遅れて逃げそこないかねん。」
そう言いながら、清水船長は海にタバコを投げ捨てた。煙草の火は直ぐに消えて波間を静かに漂った。
その時だった。小林が突然叫んだ。
「船長!あっ、あそこに何か見えます!
デカいヨットの帆みたいに
バサバサ揺れながらこっちに向かって来ます!
あっ、あれは、ヤツのヒレですよ!
はっ、早く逃げましょう。早くーっ!」
「わかった!全速全進!全速力で退避だ!
皆、配置に着け!」
エンジンが大きく唸りを上げ、スクリューが勢いよく水しぶきを上げると船は猛スピードで走り出した。船内に緊張感が張り詰めた。
直後、遥か後方に居たはずの巨大なヒレが大きなしぶきを上げながら、こちらに急接近していた。
「あっ、大変です!もう、すぐそこに!なんて速さだ!」
どんどん距離を詰めて来る。大きな背鰭が波を切り裂き迫って来る。それは船の高さを遥かに超えていた。
艇長はギリギリまで引きつ付けて思い切り右舷に舵を切った。背鰭は船の間際を擦る様に通過している。
ガガガガッ!激しい衝撃が襲いかかった。背鰭は大きく唸り揺れながら、悠然とした趣きで通過して行った。
船を追い越すと、どんどん離れて行き、背鰭は波に沈み見えなくなった。
船は右舷に舵を切ったまま大きく迂回して帰路に向かった。
「奴さん。無視して行きやがったな。助かったぜ。
こちとらの事なんざ、眼中に無かったようだな。」
「大丈夫ですかね?また引き返して来ませんかね。」
小林が不安そうに言った。それに清水船長が答えた。
「襲ってくるなら頭が出てた筈だ。
背鰭しか出て無かったぞ。
この間は捕鯨砲で打っちまったからな。
怒らしちまった。
触らぬ神に祟り無しってヤツだよ。」
「そうですね。また命拾いしましたね。」
小林は納得して何度も頷いた。
巨大生物の行動が清水達により関係省庁に報告された。政府は関東一園に非常事態宣言を発令したが、依然、上陸地点の特定には至らなかったので避難すべき場所も決められず無駄に人々の混乱を招いた。
情報交換も兼ねて、立ち飲み屋に皆、集まった。清水船長が器の酒を飲み干すと、ぼやいた。
「どこに上陸するかも、わからなきゃ、逃げようが、ねーよな。」
「そうですよ。巨大生物が出現するまでは、こうやって日常生活は続けなくては、ならない。
食べる物を食べて、寝て働いて…。」
村本がそう言いながら、おでんに、かぶりついた。
「台風みたいですね。」
小林は言い終わるとチビチビと酒をすすった。
「そう言う事です。台風に地震、洪水に火山の噴火。日本は昔から災害大国ですから。
巨大生物も自然災害の一部と考えた方が良さそうですね。」
村本が神妙な顔をして答えた。それに対して桂木が尋ねた。
「しかし逆に自然は人類に恩恵も与えてくれています。巨大生物は何か我々に与えてくれる物があるのですか?」
それに答えた村本の答えは意外なものだった。
「いや。別に自然は意図して恩恵を与えてくれている訳じゃありませんよ。
人類が勝手に利用しているだけです。
人間が自然から、くすねた分を災害として取り返そうとしているのかも知れませんね。」
すると清水船長が不服気に言った。
「それじゃあ、巨大生物も、その為に現れたってのか⁉︎
人類が文明を誇り建設した建物や街を壊して自然に返す事がヤツの使命だとでも言うのか?
それじゃあ人間は、この地球で無用の長物って事じゃねぇか!いや、むしろ害虫みていなもんだ。
そんな事があってたまるかよ。
俺達、必死で生きてんだぞ。毎日、毎日。」
清水船長は酔い潰れかけていたが急に自分の腕を"パチン"と叩いた。腕を蚊に刺されて痒そうに、そこを掻いていた。
それを見た村本がニヤッとして言った。
「害虫って言うのも、どうですかね?
そう思ってるのは人間の勝手であって、向こうからすれば人間を害だと思っているかもしれませんよ。
蚊が、ほんの少し血を吸っただけで叩き殺されるのは理不尽だ…とか。」
堪らず清水船長が反論した。
「おい!人聞き悪いな。
こんなに痒い思いしてんだぞ。
それに無意識に叩いちまった。
それでも罪になるのか?」
「まあ…それは過失ですかね。」
村本が笑いながら答えた。しかし清水船長は、まだ納得が、いかない様子だった。
「しかしなぁ。黙って、やられる訳には行かねぇよ。あの怪物からしたら俺達は無用の長物かもしれないけど。それでも生きてるんだ。
これから生まれたくる生命だってあるんだ。
俺達は、それを守らなきゃいけねぇ。
なあ、そうだろう!」
皆んな、大きく頷いた。
巨大生物が夜の東京に現れた。
海底を移動し侵入したようだ。上陸を阻む(はば)む物は何もなかった。
突然の出現に人々はパニックに陥った。逃げ惑う人々。建物は次々と破壊された。巨大生物が通り過ぎた後は瓦礫と化し、それが真っ直ぐに、ある方向に伸びていた。瓦礫の道は新宿方向に向かっていた。その方向周辺の住民は一斉に避難した。
その頃、新宿のZ細胞研究所でも緊急避難が行われていた。何台もの檻付きトラックにZ細胞感染者が押し込められた。
初期症状者は速やかに移動されたが鱗が生え爬虫類化した者は檻から出されると研究所員に襲いかかった。
その者達は異様な力を発揮し、その牙で所員達を攻撃した。あちこちで悲鳴と獣のような唸り声が上がった。研究所員の中には研究資料の持ち出しを強要された者もいたが、皆、現場放棄して逃げ出した。
ズシン!ズシン!
大きな音と揺れが近づいて来る。まるで地震の様に地響きが伝わって来る。所員は乗用車やトラックに乗り込んだ。
先頭の運転手がパニックでキーを差し込む事に手間取ったので後続のトラックが"パパーッ!パパーッ!とけたたましくクラクションを打ち鳴らした。
しかし、何とかエンジンを掛けると急発進した。数台の車が後に続き施設の門を出た。
その時、ガラガラと激しい音と突風が襲いかかった。その直後、乗用車もトラックも破壊され宙に舞った。巨大生物の尻尾が巨大な鞭の様にしなり、建物もろとも車を吹っ飛ばしたのだ。車は回転しながら施設に落下した。一台のトラックは爆発し炎上した。
檻に閉じ込められたものは激しい衝撃で即死した者もいた。意識のある者は鉄格子をつかみ助けを乞うた。
しかし助かった者は彼等を見捨てて我先に逃げ回った。業火は檻の中の者達を容赦なく焼いた。切り裂く様な悲鳴と叫び声が上がった。正に地獄絵図がそこにあった。
巨大生物は、瓦礫を踏み潰し施設の中心で動きを止めた。逃げ遅れた者や取り残された者は建物の下敷きになった。何とか脱出した者も施設の中で迷い右往左往した。
その中で、一部の者達が突然、空中に浮かび始めた。Z細胞感染者達だ。あちらでも、こちらでも、手足をバタつかせて、もがいている。瓦礫の中から、浮き上がった者達もいた。砂ぼこりを撒き散らしながら暴れている。まるで何かに抵抗しているようだ。
みんな重力から解放され、吸い寄せられるように、巨大生物の方に向かって行き、その脚や胴体や腕に次々と張り付いた。
すると鱗が割れ、皆、触れた部分から溶けながらめり込んだ。腕を伸ばし抵抗し、苦悶の表情で叫び声を上げたが、やがて肉の狭間に飲み込まれていった。
巨大生物は何十人と言う人々を、その皮膚で吸収すると天を仰ぎ雄叫びを上げた。その爆音は、地響きを立てて、この一帯の空気を揺さぶった。
そして、巨大生物は踵を返すと瓦礫の大きな一本道を真っ直ぐ引き返し東京湾に消えて行った。
桂木家の家屋はゴジラの進路経路となり、完全倒壊した。空襲で破壊され、やっと再建した家も再び巨大生物によって全壊の憂き目にあったのだ。
桂木は、自身の家の玄関跡で、茫然自失で立ち尽く
していた。瓦や木材に家具。あらゆるものが破壊され散乱していた。
ふと足元を見ると、「桂木」と書かれた表札が落ちていた。彼はゆっくりとそれを拾い上げると、じっと見つめていたが、だんだんと肩が揺れだした。そして、嗚咽を上げながら叫んだ。
「何故だっ!何故、俺たちは、
何度も何度も絶望の淵に落とされるんだ!
許してもらえないのか⁉︎
俺たち人間はそれほど罪深いことをしたのか⁉︎
うううっ…」
瓦礫の中から必要なものを探していた君枝が桂木の肩に白い手を添えた。
「亮さん。命が助かっただけでも儲けもんでしょ。
生きていれば、何度でもやり直せるわ。
亡くなった方達もいるのよ。
私たちは、こうして生きている。運が良かったのよ。生き残ったものは生き続けなければ。
亡くなった人の分まで…。」
愛子が桂木の手を握ってきた。小さいが暖かい手だ。無邪気な瞳で見上げている。
「そうだ。俺には守るべきものがあるんだ。俺は一人じゃない。」
君枝、桂木、愛子。並んでしっかり手をつなぎ歩き始めた。
背中には大風呂敷に包んだ衣類や少しばかりの食料があった。といっても、下着や鰹節や煮干しや干し魚などの乾き物に少量のお米であったが…。
君枝が壊れた茶ダンスなどから何とか、かき集めたのだ。こんな時でも女性はちゃんと家族が食べることを優先してくれる。ありがたい事だ。そして、その生活力に家族を愛する事の思いを感じ桂木は敬服した。
一向は近類の小学校に向かった。とりあえず雨風を凌げる場所が必要だった。
木造の体育館には、既に大勢の人たちが避難していた。皆疲れた様子だ。膝を抱えて、うな垂れる者。横になった者。大きな声で何かを訴えるもの。泣き叫ぶ者。皆、不安を抱えていた。
空いた場所はないかと見回していると見慣れた顔が大きく手を振っている。景子さんだ。こっちこっちと手招きをしている。桂木たちは
「すいません。申し訳ありません。」
と遠慮しながら、住民の間を割って、そこまでたどり着いた。景子さんがすぐに愛子を膝に抱えながら言った。
「こんなものは早いもん勝ちだからね。
運動会と同じさ。
避難する前から目ぼしい物はまとめておいたからね。ここが避難場所って聞いて、いち早く場所取りしておいたのさ。
もうすぐ炊き出しがあるらしいからね。
それまで、これでもかじってなさいよ。」
そう言って手下げ袋から紙袋に入った干し芋をみんなに手渡した。そんな物でも空きっ腹には大そうなご馳走だった。皆、少しずつ味わって食べた。
「景子さん、心配しました。無事で良かった。」
君枝が労いの言葉をかけた。
「ああ、怖かったよ。命辛々ってやつだね。
何とか、ここまで辿り着いたけど…。
アンタらも無事で良かった。
何とか、私らが、休める場所を確保しようと思ってね。急いで来たんだよ。」
いつまで、ここでの避難生活を強いられるのか、わからなかったが今は辛抱の時だ。
皆んな同じ境遇を抱えている。助け合って何とか乗り切るしかなかった。
再び巨大生物が現れた。東京湾の前回と同じ場所から上陸、北上した。
今回は前回よりも僅かに北北西に進路をとっている。それは正に桂木達の避難場所の方角を指していた。まるで復讐でも、するかのように執拗に桂木家の元に、進路をとっていた。
とにかく避難するしかなかった。行く当ては無かったが取り敢えず建設事務所まで行く事にした。そこでダンプに乗り燃料の続く限り走り続ける事にした。
しかし巨大生物の速度は、余りにも早かった。長い歩幅で"ドシン、ドシン"と前進した。
人の移動速度では到底敵うものでは無かった。それは、緩い楕円経路を描きながら正確に桂木達に追っていた。
しかしその巨大生物は、ただ移動しているだけであった。にもかかわらず巻き込まれたその周囲は瓦礫の山と化し、人々は悲痛な叫び声を上げた。
建設事務所は目前であったが、とうとう巨大生物に追いつかれてしまった。真後ろに巨大な脚が迫って来た。大きく尖った爪と岩の様な足裏が降りて来た。
"ドーーン!"大きな音と地響きが続けてやって来た。地面は崖のようにめくれ上がり、桂木達は一気に足元をすくわれ、地面に叩き付けられた。
敷島は愛子を抱えていた。ケガは無さそうだが愛子は赤ん坊のように声を上げて泣いている。無理も無かった。大人でも今、この恐怖に耐える事は容易な事では無かった。
あたりを見回し君枝の姿を探した。数メートル先に飛ばされていた。意識は、あるが打ちどころが悪かったのか苦しそうに横たわっている。
急いで駆け寄ろうとした瞬間。信じられない事が起こった。君枝の身体が、空中に浮き始めたのだ。慌てて捕まえようとした。君枝も「ハッ」と気付き手を伸ばしたが寸前の所で間に合わなかった。
君枝の身体がドンドン宙高く登って行く。彼女は手足をバタバタさせ泣きながら、もがいている。見えない何かから逃れようとするように…。
「亮さーん!亮さーん!明子を、明子をお願いします!」
「君枝ーっ!君枝ーっ!」
自分が危機に瀕した最中でも愛子の心配をしている。桂木は彼女の心中を察し胸に何かが突き刺さる様な気がした。
典子は巨大生物の胸のあたりに吸い寄せられる様にして張り付くと鱗の間に挟まれ身動きが出来なくなった。
それから腕の痣が全身に広がり、やがて自身の肌が鱗の様になった時、もう諦めたのか無表情になった。 そして、その瞳から、ただ涙が止め度もなく流れた。
巨大生物の鱗が割れ、その肉に彼女も溶け込んでいった。腕も脚も吸い込まれ最後に美しくも儚い、桂木の愛した、その女性の顔が、とうとう飲み込まれていった。
最後に鱗の隙間から、粘液を垂らしながら何かが落ちてきた。異物を放出したようだ。
君枝を吸収すると獲物を得て満足したとでも言うのか、巨大生物はその場を折り返し海へと帰って行った。
巨大生物の去った後、桂木は、あの落とされた物を手にした。それは、君枝のワンピースだった。桂木が贈り退院の日にも来ていた服だ。その濡れた洋服を抱き、泣き叫んだ。
これが君枝の形見になるかも知れなかった。
関東各地で、巨大生物はZ細胞感染者を吸収し巨大化していった。次々と空中を舞う人々、手足をバタつかせ悲痛な叫び声を上げ抵抗しようとするが、そのまま巨大生物の鱗状の皮膚の狭間に取り込まれていった。
それらの人々は巨大生物の体内で既に亡くなっているのか。まだ生存しているのか。そらを確認する術は無かった。
武装解除された日本政府には巨大生物と対峙すべき軍が存在しなかった。故に攻撃はおろか引き留める手段さへなかった。ただ手をこまねいて避難を呼び掛けるしかなかった。
その間に米軍は新たな策を投じてきた。巨大生物に対して原爆を投下するという作戦だった。
この冷酷な西洋人達は、またも日本の地で核兵器を使用しようと言うのだ。
関東圏で原爆が使用されれば都市機能は、おろか首都としての機能も完全に失われるだろう。
それをしても米軍は巨大生物に対して核兵器が、どの様な威力と効果を発揮するのか観察しデータを収集する事を望んだのだ。
何の手立ても持たない日本政府は、これに従うしかなかった。
全都民に東京脱出が命じられた。巨大生物からの避難と言う名目であった。米軍による核兵器使用は伏せられた。その隠蔽の為にも都民を東京から遠ざける事が必要だったのだ。
桂木は避難できずにいた。君枝の死を受け入れられなかったのだ。万が一、彼女が何かしらの奇跡でも起きて戻って来るのではと、儚い願いを抱いて遠巻きで、ずっと巨大生物を追跡していた。愛子と景子さんは清水船長の親類宅に身を寄せていた。
都民の中には桂木のように、この地に残った者もいた。行き場が無い者。逃げ遅れた者。生きる事を諦めた者。そして愛する人の死を受け入れられない者。様々な思いで人々は、ここに居残った。
朝の静けさの中に巨大生物の姿が、あった。瓦礫の上に仁王立ちしている。もうこの地にはZ細胞感染者は存在しなかった。自身で全て吸収し尽くしたのだ。
目的を遂行した以上もう、この地に留まる意味は無かった。巨大生物は、ゆっくりと海の方角を目指した。
上空ではB29爆撃機が巨大生物存在地点に間もなく到達しようとしていた。
すると突然巨大生物が反応した。人の目では認識できない程の高度にある機体をあざとくも認識したのだ。
巨大生物はその巨体をそらすと空に胸をむけた。突然、胸の甲羅の様な鱗が"パカッ"!と機会仕掛けの様に、開いた。
そこから眩しい超放射熱が放射されたが、それは一瞬で一点に集中し超熱線となり天に向かって帯となり発射された。
それはまるで鋭利な刃物の様に雲を切り裂きB29に迫った。そして雲の陰になった機体に易々と命中させた。一瞬だった。
爆撃機の機体は斜めに切り裂かれ雲の中で大爆発を起こした。核爆発だ。
眩しい光の後、轟音と爆風、衝撃波と高熱が一気に、押し寄せてきた。上空ではモクモクと不気味な、キノコ曇が形成されていた。
巨大生物は天を見上げて咆哮をあげた。地鳴りの様な轟音が響いた。原爆雲では稲光りが何本も閃光を放っている。
突然、巨大生物の鱗の至る所に裂け目が出来た。すると原爆雲から光の渦がその巨体の方へ何本も引き寄せられた。それは鱗の狭間に急激に吸い込まれていった。
放射能を取り込みエネルギーとするつもりなのか。その生態は既にこの地球上のどの生物とも変わり果てていた。
巨大生物は制御不能に陥ったのか、その巨体は臨界点を迎えていた。苦しそうに全身をくねらせ、もがいた。
突然、巨大生物の眉間のモリが揺れながら抜け始めた。"ズルッ、ズルッ、ズルリ!"粘膜をしたたらせながら最後は抜け落ち瓦礫の上"にガチャ!"と落ちた。
そこから何者かが抜け出そうとした。傷口を窮屈そうに押し広げ、もがくように脱出しようとしている。それはまるで出産の光景のようでもあった。
それらは宿主の死を悟り一斉に逃げ出そうとしたのだ。狭い狭間を切り破り、我先にと抜け出そうとした。
その時、巨大生物の全身が、紅く染まり始めた。鱗の割れ目から光を発しながら煙か水蒸気が吹き出している。周囲が白い気体で溢れる程だ。
体内が高温になり臨界点に達したのだろう。抜け出そうとした怪物達は束になったまま、その高熱でもがき苦しみながら灰になるまで焼き尽くされた。
鱗が、脈打ち始めた。爆発寸前かと思われたが突然、全身の鱗が扉の様に開かれ青白い熱戦が放射された。
臨界点ぎりぎりで放射線が放出されたのだ。それは四方八方に放射され照射されたものは全て焼き切られ爆発炎上した。
放射が終わると巨大生物は、その場にうつ伏せ目を閉じ眠りについた。すると額の焼け焦がれた怪物達の体が揺れ始め、抜け落ち瓦礫に落ちていった。
そこから新たに人型怪物が現れた。眉間の傷を押し広げ身をよじり抜け出すと鱗に手足を掛け地上に降りていった。
その中には背鰭が羽根となり空中に飛び出した者もいた。
その光景を遠巻きに見ていた人々も急に危険を察知しパニックになりながら一斉に逃げ出した。
しかし怪物達は凄まじい速さで追いかけてきた。人の能力を遥かに超えていたので人々はあっという間に飛び掛かられ捕らわれた。
桂木も怪物に追われた。背中をつかまれ振り払おうとすると獣の様な唸り声だが確かに言葉を発した。
「助けて…」
振り向くと怪物の鱗が頭から胴体、脚と次々に剥がれていった。その者は力尽き裸を隠そうと地面にひれ伏した。その姿は生身の女性に戻っていた。
そんな光景があちこちで起きていた。人々の泣き叫ぶ声が響いた。桂木は上着を脱ぐと、その女性の背中に、それを掛けてあげた。顔を確認したが君枝ではなかった。
助かった者。鱗が半分残った者。生き絶えた者。飛んでいる途中で人間に戻り地面に落下し負傷や死亡した者。色んな姿があった。
数匹が飛んで海上に向かい見えなくなった。所在を確認する余裕も術も無かった。
地上でも怪物の姿の者がいたが攻撃してくる様子はなかった。みんな助けを乞うていた。人としての感情があった。人に戻りたいと熱望した。
GHQが、乗り込んできた。鱗の姿のままの者は全て連行され隔離された。完全に鱗の取れた者でも衣類を身に付けていない者は連行された。
衣服を借りる事ができた者は極少数だった。いち早く逃げ出して辛うじて助かった者もいた。
しかし、巨大生物に取り込まれた事実に皆、変わりなかった。今後どのような症状を発症するのか、それは医師にも学者でさへも判断できなかった。
巨大生物が目覚めた。もう日は暮れかけていたが山の様な大きな巨大が夕日を遮っていた。
ゆっくり立ち上がると天を仰ぎ大きな咆哮をあげた。地響きと共に空気も地面も激しく揺れた。そして長い尾を一振りすると一本ゆっくり歩き出したが何故か突然止まった。
動けないのか動かないのか微動だしない。人々は息を殺してその様子を凝視していた。
シーンと静まり返った空気を裂くように"バリッ!"と乾いた音がした。皆、突然の事に驚き後ずさった。
鱗が一枚捲れたのだ。すると次々に鱗が浮き上がり捲れバラバラと抜け落ちていった。無数の大小のワニの様なトゲトゲした鱗が一斉に降り落ちてきた。群衆は叫び声を上げながら一目散に逃げ出した。
ドスン!ガタン!けたたましい音があちこちでしている。瓦礫の上に大きな岩の様な塊が落ちてきた。落下の反動で鱗は四方八方に飛び散り転がった。その下敷きになった者もいた。
巨大生物の鱗が剥がれていくと不思議な事に段々と人型になっていった。
更に鱗が剥がれていくと尻尾はドンドン細くなり最後は失くなってしまった。
その頃には全身の様相が見えてきた。
人だ。しかも女性だ。
裸の巨大な女性が立っていた。
人々遠巻きにまた集まってきた。人型を見て恐怖より好奇心の方が勝ったのだろう。
桂木は驚きの表情をしていた。信じられない事が目の前で起きていた。
君枝が…。正に君枝がそこに立っているのだ。
巨大な姿となり立ち尽くしている。
桂木は大声で名前を呼んだ。
「君枝ーっ!君枝ーっ!」
しかし巨大女性は無表情のまま、ゆっくりと歩きだした。倒壊を逃れた建物をよけるように歩いているようだ。人としての意識があるのか?
桂木はトラックに乗り込むと巨大女性を追い海岸の方に向かった。
浜に着くと砂に深く巨大な足が沈んだが、そのまま海に入っていった。桂木は堤防をトラックで並行して走ったが無常にも行き止まりが迫った。仕方なく堤防の端の灯台の前にトラックを停め、座席を降りた。
巨大女性は膝あたりまで海に浸かっていた。
「君枝ーーっ!」
声の限り叫んだ。
巨大女性は真っ直ぐ前を向いているが
一瞬だけ微笑んだ様な気がした。
巨大女性は尚も沖に進んで行く。
肩から頭部、段々と海に沈んで行く。
山並みに沈む夕日が反射して、
その姿と大きな波紋を血のようにそめている。
桂木は何度も君枝の名を呼んだ。
最後に黒髪が海藻の様に揺れて、
うねりながら静かに波間に消えていった。
何事も無かった様に凪いだ海は漆黒と化し
怪しく満月をユラユラと映していた。
桂木は堤防に座り込んでいつまでも泣いていた。
その後、米軍の潜水艦による海底調査が行われたが巨大女性の姿を確認する事は出来なかったらしい。
最も米軍が、そんな重要機密を日本側に提供するはずもないが。
人智の届かぬ深海に向かったのか。
人魚の様に海の泡となったのか。
誰も知る事はできなかった。
数日後、桂木は愛子を連れて清水船長の操縦する小型船で沖に向かった。小林と村本、望月と景子さんも同行した。
沖に着くと船を停め、花束を海に投げ入れ、皆で合掌した。愛子も皆んなを真似て手を合わせた。
すると突然、船の間近に巨大な泡が湧いてきた。
"ボコッ、ボコッ!"巨大な水泡だ。
船が揺れて皆、甲板の縁に掴まった。桂木は座り込み愛子を抱きかかえた。
揺れがおさまり船外を覗くと花束は消えていた。水疱がゆっくりと離れて行く。
「君枝ーーっ!」
桂木が叫んだ。
巨大な泡は更に沖へ向かい
やがて消えて行った。
今日は君枝の初七日だ。
桂木がお墓の前で手を合わせている。遺体もないままあのワンピースを君枝の亡骸として埋葬した。
再び遺影となった君枝を見つめて涙した。
あの爆風に飲み込まれてさへ奇跡のように再開できた。もう一度、その奇跡が起きないか。そう何度も願ったがもう、その願いは叶わなかった。
でも、あんな巨大な姿になっても君枝は生きている。そう思い自分を慰めた。
仲間が続いて焼香した。皆、涙を浮かべている。桂木は皆にお礼を言い、ある話を始めた。
「実は君枝から聞いていた話が、あるんです。
絶対、口外しては駄目だと口止めされていました。
でも皆さんには聞いて欲しいんです。
これは俺の恨み節だと思って頂いて結構です。
君枝との約束を破る事になりますけど。」
そう言いながら、あの日の事を思い出しながら語り始めた。
桂木は君枝から大星島と言う離島にまつわる伝説を聞かされていた。
君枝の祖先は代々、島の守護神を祀る神事を司る役割を担う家系であった。
遥か昔から災害などが起きると荒ぶる龍神様の祟りと、その怒りを鎮める為、清き乙女と称した女性が生贄となり捧げられた。そんな言い伝えが残されていた。
しかも、その家に生まれた女性は巫女として矢面に立たされ、その役割を果たす事を天命とされたと言う。
「これは私の家に伝わる話。絶対、他人に言っては、いけない話なの。でも亮さんは私の大事な旦那様。家族だもの。ちゃんと話しておかないとね。
私ね。亮さんから怪物の話を聞いた時、とても怖かったの。この、運命から私は逃れる事は出来ないのかなって…,.
私の家は代々大星島と言う離島で島の守護神を祀る神社で神主をしていたの。でも戦争が始まって軍の秘密航空基地になった事で島民は島を離れる事を余儀なくされたの。私達も例外ではなかったわ。
私達家族は慣れない土地で何とか暮らしていたけど、あの空襲で両親は亡くなってしまった。
そんな時、亮さんと出会ったの。本当にありがとう。亮さんと、出会わなかったら、私達、今頃どうなっていたのか…。感謝しても仕切れない。」
君枝は泣きながら桂木の手を握った。そして彼の目を真剣な瞳で見つめていった。
「でも巨大生物が現れて、怖くて堪らなかった。
こんな伝説も語られていたの。
天空より偉大なる星の降る時、荒ぶる神が現れ
全てを焼き尽くすだろう。
その怒りを鎮める為に生贄を捧げる事。
これ必然也。
私が、生贄に…。この身を捧げなければならないのかなって…。私には、その責任が、あるのかなって。うううっ…。」
言葉に詰まって泣きじゃくった。桂木はその震える肩を強く抱きしめた。しばらくして涙も枯れて君枝に笑顔が、戻った。
「でも大丈夫。私は亮さんの奥さんだし、もう清き乙女じゃないもの。もうその役割は果たせない。
それに、赤ちゃんも生まれるし…。」
君枝はお腹を大事そうに両手でさすり照れ笑いをした。
「ええっ⁉︎ そうなの!本当に!
やったぁ。やったーっ!愛子、妹ができるぞ。
いや、まだわからない。弟かな。。ああっ、どっちでもいい。無事に生まれてくれたら。」
そう言って君枝の手を握り大喜びした。
あの日の幸せが今は夢の様に感じられた。巨大生物は桂木を追っていた訳ではなかった。
君枝を狙っていたのだ。彼女を生贄として欲していたのだろう。
話しが終わる前に桂木が泣きだした。
「お腹に赤ちゃんが、いたんです。
もう一人家族が生まれるはずだったのに…。
うあーっ!」
彼は声を上げて泣き出した。皆も居た堪れず泣き出した。
そして涙が枯れた頃に景子さんが話し始めた。
「亮さん。君ちゃんは、清き乙女だよ。
あんな心の清い女性が他にいるかね。
知人の子供とは言え他人の子を育てるなんて事、
この戦後下のご時世で、そうそう容易く出来る事じゃないよ。
あんたも救われたんだろ。気持ちが折れそうな時も、ずっと励まして支えてくれたんだろ。だからね。
君ちゃんは… 清き乙女だ。」
皆、顔を見合せ深くうなずいた。
その姿を遺影の君枝が優しい笑顔で見つめていた。
海上に飛び立った。数匹の異形の怪物達は大星島に辿り着いていた。山の奥深く、静かに身を潜めていた。
その瞳は暗闇の中でさへ、金色の鈍い光を爛々と放っていた。
完
二次作品に印をいれてゴジラ-1の続編として書き始めました。しかし半分以上書いていたところで二次作は基本的に駄目だと知りました。それで断念するか迷いましたが折角なので大幅に設定を変えるなどしてようやく書き上げました。途中、2回程、保存に失敗して、書き直す羽目に陥りました。原因不明です。完全に心が折れてしまいました。やはり荒ぶる神の祟りを受けたのでしようか?それでも、何とか書き上げました。難産でしたが良かったら読んで下さい。駄目なところなどあったら、評価して頂きたいです。
家族などには、逆に、自分の内面を晒すようで読んでもらってないです。客観的な評価が知りたいです。