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パニックのゾンビ作品。

永遠に生きる


大平原の片隅にある風力発電の風車が林立する大きな岩山の麓に、要塞を思わせる堅固な建造物が建っている。


その建造物と岩山の周りを城壁を思わせる高さが10メートル程の塀が囲んでいた。


東の地平線の先か明るくなった頃、50メートル程の高さの建造物の最上部の窓が開かれ、狙撃銃を所持した男が姿を見せ塀の外側に群がる群衆を見下ろす。


群衆は大平原の遥か先からポツリポツリと歩み寄って来た者たち。


群衆は皆、男の姿を認めると呻き声を上げながら腕を伸ばす。


男は徐ろに銃のスコープを覗き込んで狙いを定めると引き金を引いた。


銃声と共に発射された弾丸は狙い違わず塀の外に群がる群衆の1人の頭を撃ち抜く。


頭を撃ち抜かれ倒れ伏した者の周りにいる者たちは、それに気が付かないのか無視しているのか頓着せず呻き声を上げ腕を男の方へ伸ばし続ける。


男は所持している銃の弾倉に装填されていた20発の弾が尽きると、悲しげな目で群衆を見下ろしてから窓を閉めた。


窓を閉め肩を落とす。


それから脇の下のホルスターから拳銃を抜き、躊躇う事無く顎の下に当て引き金を引いた。


発射された拳銃の弾は顎の皮膚を貫き頭の天辺から骨や肉などと共に飛び出る。


頭の中身を失った身体はそのまま仰向けに倒れ伏した。




太陽が南の頂点に達した頃、倒れ伏していた男の拳銃を握っている手がビク! と動く。


数分後男は身体を起こす。


身体を起こし力無く頭を左右に振ってから立ち上がり部屋から出た。


部屋を出てエレベーターホールの脇にある、非常階段と書かれたプレートが付いた扉を開け非常灯だけが灯る階段を下りる。


1階まで下りて来た男は正面ロビー此処も建物内と外を隔てるガラス張りの自動ドアの外側に、分厚いシャッターが下りている為に非常灯の明かりが無ければ真っ暗なロビーを横切り、住居にしている警備員詰所と書かれたプレートが貼られたドアを開け中に入った。


入った部屋の中にはソファーと冷蔵庫や湯沸かしポッドが置かれている。


そこで男は自分の血で汚れたTシャツを脱ぎ捨て新しいTシャツに着替え、冷蔵庫からビールを1本取り出し飲んだ。


部屋の奥側の続き部屋は仮眠部屋になっていてベッドが置かれていたが、男は奥には行かず入って来たドアの直ぐ脇にあるドアを開け中に入る。


そこは建物内に設置されている監視カメラの映像を見る事ができる監視ルームで、本来なら正面の壁の前に置かれている数十台のモニターが監視カメラから送られて来る映像を映していた。


だが今は節電の為に全ての電源が切られている。


男はその電源が切られているモニターの1つに歩み寄り電源を入れ、モニターの前の椅子に腰を下ろした。


モニターの画面には数千回以上繰り返し見た録画されていた映像が映し出される。


背広の上に白衣を着た40代半ばの男性が映り話し始めた。


「ヤア、ブル、最初に礼を言うよ。


ありがとう、君が庇ってくれたお陰で私は無傷だった。


だが君は胸に被弾し虫の息だった、だから私は持っていた薬剤243号薬剤を咄嗟に君の身体に注入する。


その結果、胸の傷は見る見るうちに塞がったのだが、薬剤の影響なのか副作用なのか昏睡状態から未だに目覚めない。


薬剤を注入してから5年以上経っているのにだよ。


だから君が何時目覚めるのか皆目見当がつかない。


だが1つだけ言えるのは、君が昏睡状態から目覚める事ができたのなら、私たちのチームが研究して来た不死身の兵士の開発に成功したと言えるのだ」


そのとき突然、白衣の男性の後のドアが乱暴に開けられカーキ色の警備員服を着たモニターの画面を見ている男、ブルの同僚が入って来て白衣の男性に怒鳴る。


「博士! 早くしてください」


開け放たれたドアの向こうからは自動小銃や散弾銃の激しい銃声と、複数の人の怒鳴り声が聞こえて来ていた。


「頭だ! 頭を撃たないと奴等を倒す事は出来ないぞ!」


「そのロッカーを倒して通路を塞げ!」


「気をつけろ! 噛まれたら終わりだぞ!」


博士は入って来た男に頼む。


「もう少しだけ頑張ってくれ、頼む!」


「分かりました博士、あと3分だけ差し上げます」


同僚だった警備員の男はベッドに寝かされているブルの方をチラッと見てから、博士に返事を返す。


「ありがとう」


博士は礼を言い、またブルに向けて話しだした。


「君が目覚めるまで観察を続けたいのだが、3号実験室の奴等がバイオハザードを起こしてね、動く死人が施設内に溢れ出ているのだよ。


政府は此の施設を破棄する事を決定した。


君が目覚めた時に必要になると思う物資はそこに置いてある」


そう言いながら博士は画面に映っていない場所を指差す。


博士が指差す動作をした時、またドアが乱暴に開けられ同僚の警備員が怒鳴る。


「博士! 時間です」


「分かった、じゃあなブル、幸運を」


博士はそう言って部屋から出て行った。


映像はこのあと数十時間、手術室を映し続けたあとカメラの電池切れで唐突に終わる。


この映像が撮られてから30年後にブルは目を覚ます。


目覚めたブルが映像を見たあと最初に行ったのは、岩山の中を(り貫いて造られた研究施設と、その地下深くに造られた核シェルター内で蠢いていたゾンビを駆除する事だった。


ゾンビを駆除する過程でブルは何度もゾンビに噛まれる。


しかし何度噛まれても噛まれた数時間後に意識を失うだけで1度もゾンビ化する事は無く、意識を失って半日程すると目覚め、目覚めると噛まれた傷は無くなっていて噛まれた事を示すのは着衣が噛み裂かれ血塗れになっている事だけだった。


博士が語っていたように、ブルは此の施設の研究者たちが行っていた不死者を創り出す研究の、最初で最後の成功例だったのだろう。


だったのだろうと言うのは、施設内のゾンビを全て駆除したあと地上に出たブルが見たのは、塀の外側に蠢くゾンビの群れだったからだ。


ブルは塀の外の蠢くゾンビの群れを見て絶望し自殺を幾度も企てる。


施設にあった致死率が極めて高いウィルスや細菌を身体に注入したり毒物を致死量の数倍服用したりした、しかし何度繰り返しても一時的に意識を失うだけで、半日後に目覚めるという事を繰り返すだけだった。


腰掛けていた椅子から立ち上がり目覚めてから200年、1カ月に1度は見る録画されていた映像を映していたモニターの電源を切る。


モニターの電源を切ってから仮眠室の隣にある武器庫に行き、狙撃銃の弾倉をズボンのポケットに捩じ込んだり手に持ったりしてまたゾンビの駆除に向かう。


塀の外に蠢くゾンビがどれ程の数がいるのか分らない、数千万か数億かそれとも数十億か? 


でもそのゾンビを全て駆除する事が出来れば、もしかしたら何処かに生き残っているかも知れない人を探しに行く事や、撃たれる前に休暇を貰えたら行きたかった観光地に行く事が出来るという思いだけが、ブルに最後の手段を取らせない理由なのだった。








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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読させていただきました。 これはキツイですね。 メンタルギリギリですね。
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