第三話! 鳥と河童!
「うおおおおお!」
俺は今、走っている! 速くなるために! そして、後ろから追いかけてくる鳥から逃げるために!
「ピィーッ!」
鳥は俺をめがけて飛んで追いかけてきている。鳥はかなり速く、俺は木と木の間を通って走らなければいけないので、距離が近づいてきている。このままだと追い付かれる可能性もある。でも大丈夫! 木のない道の上なら俺の方が速いんだ! さっきの道まで引き返せば逃げ切れる! そう思って、さっきの道まで戻ろうと走っているのだが、何かがおかしいんだ! 道を外れてから少ししか走っていないはずなのに、全然道まで戻れない。もしかしてこの鳥、そういう能力を持っているんじゃないか!?
「ピィーッ!」
やばい! どんどん近づいてきているぞ! 道までどうやったら戻れるんだ!
道が見えてこないまま、バサバサという羽の音はどんどん近づいてくる。
やるしかないのか。しかし、奴をどうやって倒すのか。どれだけ俺が速いといっても、スピードソードの直撃で傷もつけられないような相手に勝てないだろう。まあ本気を出せば勝てるがな!
とりあえず時間稼ぎでもしながら逃げよう。
「スピードソードォ!」
俺は振り向いて飛ぶ斬撃を放った。斬撃は鳥野郎には当たったが、弾かれてしまう。
「ピーッ!」
「まあ、この程度じゃ切れないよな!」
俺は後ろを向いた体を、そのまま回転させて前を向く。
後ろだけに飛んだ斬撃は、回転された体とスピードソードに引っ張られ、円を描くような斬撃に変化した。
「うおおおおお!」
飛ばした斬撃は、俺の周りの木々をなぎ倒していった。
俺は今、隠れている。自分が倒した、木が重なって丁度陰になったところに隠れている。
隠れようと思って木々を倒したわけではなかったが、鳥は俺を見失っているようだし、いいだろう。
それに、仕方が無かった。鳥の足止めをしようとして自分で倒した木々が、道をふさいでしまったからな。いや、元から道といえるものはなかったが。
どうしようか。どうするべきか。考えてもわからん!
正面突破だ!
俺は陰から飛び出し、鳥の背後から斬りかかろうとして、もう一度陰に戻った。鳥が俺を見失って飛び立とうとしていたからだ。
そうだ。鳥が俺を見失っているなら待てばよかったな。
俺が鳥を陰から見ていると、鳥はこちらを振り返ることなく飛び立っていった。
俺は隠れるのをやめて、鳥が去って行った方向と逆方向に走り出した。周囲の木々はほぼ倒したと思っていたが、後ろを斬ったときは鳥に当たるように斬撃を飛ばしたため、木が倒れていなくて歩きやすかった。
改めて思うが、このスピードソードはすごい力を持っているな。持つだけでスピードが上がるし、斬撃を飛ばすこともできる。住職さんはこの刀を、付喪神となった日本刀だといっていた。付喪神というもののことはよく知らないが、そういうものなんだろうか。俺には妖刀や呪われた日本刀といったものに見える。まあ、考えてもわからないか。
俺はそんなことを考えながら来た道を戻った。
しばらく走ってたどり着いた場所には、不思議な光景が広がっていた。見覚えがない、なんてことはない。そこにあったのは見覚えしかない道だった。戻ってきていた!
「やはり、鳥野郎に迷わされていたということだな!」
さて。とりあえず逃げ切ったが、これからどうしようか。いろいろあったが、今のところ成果は一つもない。つまり、このまま山を下りるという選択肢は存在しない。しかし、鳥を斬るにも、河童にもう一度会うにも、方法がない。
「……どうしたものか」
「そこの方、お困りですかな?」
俺は突然話しかけられ、声のする方を向く。
「おや、やはり人間でしたか。本当に珍しいですね」
するとそこには、よぼよぼの顔色の悪い老人が立っていた。いや、それは河童であった。その老河童の背には若そうな河童が6匹ほど並んでいた。なるほど。
俺はそのうちの一人を指して言った。
「お前がさっき助けた河童だな! そしてお前は村長の息子だ!」
「……? 私はあなたとは初対面です。それに、村長の子ではありません」
「オイラだよオイラ! あんたに助けられたのはオイラだ!」
……六分の一を外したようだな!
俺は前に出てきた若い河童に向き直って言う。
「じゃあお前が村長の息子か!」
「違う! オイラは村長の息子じゃない!」
……二分の一を外したようだ!
「失礼した! おまえが村長の娘か!」
「違うわ! オイラは村長の子じゃないし、女じゃない!」
「……? よく分からん!」
「なんだこいつ! 村長。こいつがオイラを助けてくれた人間で間違いありませんが、どうやら話が通じないようです!」
失礼なやつだな!
「まあ、そう言わないであげてください。人間なんてこんなものですよ」
うむうむ! 村長さんの言う通りだ!
「さて、人間さん……」
「そういえば、紹介がまだだったな! 俺の名は、超! スピードスター!」
「それでは、スピードスターさん。仲間を助けていただいたお礼がしたいのですが……」
「そうか! なら俺に、あの大きな鳥に勝つ方法を教えてくれ! どうにも俺の刀では斬れそうになくてな!」
「はい。その程度のことなら礼にもならんと思いますが、分かりました。というか、人間の刀で斬れないということはないですよ。あの鳥は頑丈ではありませんから。その刀とやらを見せていただいてもよろしいですか?」
あの鳥が頑丈ではない? 俺とスピードソードでも斬れなかったというのに? 少し怪しいが、鳥に勝つ方法を教えてくれるというのならありがたい。
「ああ、いいぞ!」
俺はスピードソードを引き抜き、村長に手渡した。
村長は受け取ったスピードソードを、ふむ、と言いながら見ていた。
「その刀の名はスピードソードだ! 俺が名付けた!」
「そうですか。このスピードソード、良い刀ではあるのですが、古い刀、使い古された刀のようで、錆はありませんが刃こぼれがひどいですね。私たちの力で直せるのですが、どうしますか」
「そうか! ぜひ頼む!」
というわけで、俺たちは河童の村へと向かった。
河童によるスピードソードの鍛え直しは、二日もかからずに終わった。返ってきたスピードソードは、前よりも美しく輝いていた。
そしてこれから、試し斬りである。山に入ってみると、すぐに見つかった大きな鳥が目の前で俺を威嚇していた。
「ピィー!」
「いくぞ! スピードソードォ!」
抜刀とともに鋭い金属音がした。
スピードソードが鳥の首に当たったとき、少しの抵抗を感じたが、弾かれることはなかった。
ごとりと音を立てて、その大きな鳥の首は、地面に落ちたのだった。
こうして俺は、強くなったスピードソードと共に、鳥に勝利した。
――ごとり。鳥だけに。と書こうとして、やめた。




