第二話! インド人め!
俺の名は、超! スピードスター!
俺は今! とにかく走っている! スピードソードを手にしてから、俺は少しは速くなった! しかし、住職に勝つにはスピードがまだまだ足りない! もっと速くならなくては!
全速力で走るスピードスターの肩に何かがぶつかった。
オイテメエ、どこ見て走ってんだよ、と後ろから話しかけられる。
俺は減速し、振り返った。
「なんだ君! いきなり突っかかってくるなんて、さてはインド人だな!」
「何を言ってんだお前! 俺は日本人だ!」
「そうか! なんだい君。俺に何か用があるのか?」
「お前にぶつかっただろ! めちゃくちゃいてえよ!」
「クソ! 言いがかりをつけてきやがったな! インド人め!」
「何を言っているんだお前は! めんどくせえ! お前もういいよ」
「そうか! 俺も忙しいのでそろそろ行かせてもらおう! また会おう! そう、俺の名は、超! スピードスターだ!」
俺は走るぞ。まだ見ぬ宿敵と会うために、そして、もっと速くなるためにな! あ、そうだ。
「君! ここらで一番速い奴をしらないか?」
また歩いていこうとしていた男が振り返る。
「知らねえよ! 車とかじゃねえの?」
「いやあ、そういうやつじゃないんだ。もっと妖怪って感じの奴だよ」
「いやだから知らねえって。まあ妖怪ってことなら、昔っから向こうの方にある山の川には河童が出るとかは言われてるが、見たことはねえな。行ってみたらどうだ」
男はそう言って指を指す。
「ありがとう! 行ってみるよ」
俺は教えられた方角に走り出した。
後ろから、この辺りの人は誰もそこには近寄らないが、という声が聞こえた気もする。
河童か。速くはなさそうだが、泳ぎを教えてくれるかもしれないな。
十分ほど走っていただろう。俺はようやく山の川というやつにたどり着いた。そこの川はそこまで深くはないが泳ぐことぐらいはできそうだった。川魚でも狙っているのか、大きな鳥が空を飛んでいる。俺は空を飛ぶことはできないが、あいつと競争したら勝てるだろうか。まあ勝てるだろうな。
さて、河童はいるかな。
俺は河童を探して河辺を歩いた。太陽の光が眩しく川に反射している。たまには美しい景色を眺めながらのんびりするのも良いな。だがそれは、スピードを極めるのに必要であるからだ!
川を何かが流れてきた。
「あれは河童か?」
スピードスターが流れる何かを見ようとした。そのとき、スピードスターの頭上を大きな影が通り過ぎ、風が起こる。
「なんだ! なにが起こっているんだ!」
流れる緑色の何かを、影の正体がバサッ、とつかんで飛んでいった。
スピードスターはそれを見る。
「あれは鳥か! でかいな! つかまれていったのはやはり河童のようだな。追いかけよう」
俺は鳥を追って走り出した。よく考えてみたのだが、俺が追い付いても相手は空を飛んでいるのだから河童を取り戻すことなんてできないんじゃないか? まあその場合は、鳥の着地を待つしかないな。
そんなことを考えながらも俺は、かなり速いスピードまで加速してきていた。しかし、鳥もなかなか速い。なるほど、空を飛ぶというのは、速くなるためには良いかもしれないな。
まあ追い付くのは時間の問題だと思い、俺はさらに加速していく。そのとき、鳥がこちらに気づかれたらしい。鳥はしばらく俺を見た後、急に方向を変えて道のない方へ向かった。
クソ! あいつ、地面が走りづらいところを飛んで、俺を離す気だな。
俺は全速力のまま木々の間を通って行こうとした。しかし、どうしても木を避けながらだとスピードが落ちてしまう。このままだと離される! ここで追い付くしかない!
俺は他の木より少し高さのある木を見つけ、それを登った。残念だがここからでも高さはぎりぎり届かなそうだ。しかし、跳んでみるしかない!
スピードスターは木を蹴って飛び跳ねる。鳥との距離がかなり近づいた。ここで逃せばもう追い付けないかもしれない。なんとかなれ、と思いながら、スピードスターは腰に差した刀を抜く。
「届け! スピードソードォ!」
俺はスピードソードをかなりの速さで振ったが、予想通り、奴には届かなかったようだ。しかし、振り終えたとき、不思議なことが起こった。俺の振ったスピードソードの軌道から、斬撃が飛んだかのように空間の歪みが発生したのだ。その飛んだ斬撃は、鳥の羽にあたり、突然のことに驚いた鳥と俺は、地面へ不時着した。
「どうやら俺とスピードソードが速すぎて空間ごと切っちまったようだな。さて、やっと追い付いたぞ、鳥野郎!」
鳥は怒った様子で、ピーッ、と鳴くと、河童をくわえて振り回した。
「グワアア、助けてくれえー! そこのお兄さあああん!」
「おい、そこの緑の奴! お前は河童か!」
「ああそうだよ! とりあえず助けてくれよおお!」
「分かった、今助けるぞ!」
スピードスターは再び刀を構える。とりあえず、鳥を倒して河童を助けてやろう。鳥とも話せるなら飛ぶ方法を聞いてみたいが、しかたない。
「くらえ! スピードソードォ!」
俺はスピードソードを鳥に向かって振り下ろした。しかし、硬い部分に当たったのか、弾かれてしまった。
「なんて硬さなんだ! スピードソードでも切れないなんて!」
切られそうになった鳥は、河童を落とし、スピードスターを大きな爪でひっかこうとした。俺は急いで後ろに下がったので、ギリギリ回避出来たが、かなりパワーのある攻撃だ。あれが当たればまずいだろう。とりあえず、河童をはなさせることはできた。
「おい兄さん! 俺はいったん逃げるぞ!」
河童は立ち上がって逃げようとする。鳥がそれに気づき、もう一度つかもうとした。まずい! なんとかして助けなくては! もう一度出せるか? あの飛ぶ斬撃を!
「いけ! スピードソード!」
俺がスピードソードを振ると、一度目のように斬撃が飛ぶ。飛んだ斬撃はそのまま鳥に向かって進み、鳥の翼に当たって何枚か羽根が舞った。
「ピィーッ!」
鳥は本気で怒ったみたいだ。俺に向かってゆっくり歩いてくる。陸上では俺の方が確実に速いな。河童はどうなった?
俺が河童の方を見ると、河童の走り去っていく姿が見えた。どうやら逃げることができたみたいだな。
俺としては鳥を倒さなくてもいいのだが、鳥は俺に本気で怒っている。逃がすも逃げるもなかなかできないだろう。まあでもとりあえず、俺は逃げるぜ! 勝てそうにないから!
俺は後ろに全速力で走りだす。
「もう追いかけてくんなよ! 鳥野郎!」




