倫理観……。7
卑下た笑みが眼前いっぱいに広がって、むちっと唇に何かが触れる。かかる吐息、獣のように笑っているせいで刻まれた深い皺、欲情した瞳。
……あ、ダメだ。
プツンと自分の中で何かが切れた気がした。
抵抗できない、声を出して、助けを呼ぶぐらいしなければならないのに、そんな事すら出来る気がしない。
目を見開いたまま、アイザックを見上げる。太ってはいないが、他人に勝手に盛り、跨る様は発情した動物の様に思えた。
……気持ち悪い。
「うわっ、イイ、その、蔑んだ表情〜…………っあ゛」
その下衆な笑みを下から眺めていると途端に彼は、クルンと白目を向き、変な声を上げ私の上へと落ちてくる。
何がどうなっているのかと視線だけで辺りを見れば地面に倒れているツインテール、それからもう一人も皆して転がっている。
状況の確認をしているうちに上に乗っているアイザックが勝手に移動していき、私の上から完全にいなくなる。そうするといつもの様にただただ観察するような目をしているローレンスが居た。
少し考えるように、視線を空に移動したあと、私と目を合わせて痛ましいというように表情を歪めた。
「クレア……なんて酷い事を、おいで、医務室まで運んであげよう」
私がそれを呆然と見つめていれば、彼はパチパチと瞬きをして少し笑った。
「もしくは、今すぐに制裁でもしておこうか?」
手に持っている黒い刀身のサーベルで、意識を失ってごろりと転がっているアイザックの頬をなぞり、傷つける。
切れ味がいいのかそれだけで、彼の頬からは血が流れでて、頬を血で染める。
……。
ローレンスは何も反応を返さない私を起き上がらせて、ほっぽってあったジャケットを私に羽織らせる。サイズ的にきっちり、すべてを隠すことが出来なかったからか、自分のジャケットまで脱いで私に被せた。
「……あまり、面白くないな」
そうぽつりとつぶやいて、すべてにおいて脱力してしまった私を無理やり横抱きにして抱き上げて、歩き出した。
私の鞄も持ってくれている。歩いている振動が、心地よくて目を瞑った。




