前途多難……。8
サディアスの部屋へと到着すると、侍女ちゃんに彼は手際よく指示を出し、あっという間にリビングルームに五人が座れるテーブルが設けられた。
「席は指定させてもらう、クレア」
名前を呼ばれて誕生日席に付いた。あとの四人は、それぞれチェルシーとシンシアが隣同士、ヴィンスとサディアスが隣同士で、私の隣はシンシアとサディアスだ。
つまりヴィンスとチェルシーが私から見て遠くにいる。
あっという間にお茶が運ばれてきて、サディアスが苛立たしげにテーブルをカツカツと人差し指で叩く。
「まず、シンシア。俺は君も悪いと思っている。ただヴィンスにも問題がある、わかったな?」
「っ、私は……私が悪いとは思えません」
「わかった。じゃあ、事の顛末とそう思う理由をクレアとチェルシー両方にわかるように話をしてくれ」
そういい、サディアスは睨むように目を細める。シンシアは「はい」と返事をして、それから少し思案したあと口を開く。
「……まず……私は、ディフェンダーです。決闘、試合それぞれ見ていただいて分かる通り、攻撃に威力もなく、とてもアタッカーを務められる力量はありません」
……え?嘘でしょ?本当に?私にあれだけ素早い動きで攻撃していたというのに、アタッカーに向いていない?
驚愕の事実に目を丸くして他の人の反応を見るが、異義は無いと言うように、うんうんと話を聞いている。
……あ、私って本当に実力不足なんだ……。
事実に打ちのめされる私をきにせずシンシアは話を続ける。
「ですから、団体戦は攻撃の出来る者に頼る戦い方になります……なので昼、ヴィンスにクレアの稽古をつけたらどうかと提案をしていました」
「ヴィンスにそれを言った理由まで言ってくれ」
「クレアと一番共に居るからです、でも、貴方は……」
シンシアがヴィンスを睨み、ヴィンスは見つめ返しはするがなんの反応も示さない。
「クレアに自分が何かを提案することは無いと答えた。そして、……私がではクレアが負けろと指示したら、そうするのかと問うと何食わぬ顔で「はい」と言いました」
なんとも言えない気持ちになって、少し心が痛い。
「そこで……少し頭に来て、魔法使いを目指すのをやめろと言われればやめるのか……と言いました。答えは先程と同じ……勝つ気が無いのなら、やる気がないのなら出ていってください」
……確かに、ヴィンスの反応はそう取られても仕方がない。でも、シンシアは少し、過敏な気もする。ヴィンスは、やる気がなければ足を引っ張るだけの私とは違って、元から強いのだ。人に指図されないと行動をできないのだとしても、魔法使いを目指すことまで否定されるいわれはない。
シンシアにも悪い事があるとサディアスが言うのも頷けるし、誰に対してもこれだと、この先が少し心配だ。その過敏さは、シンシアがディフェンダーとして自分の力では勝てない事への焦りから来ているのか……はたまたま彼女の性格なのか。
サディアスはまた、ため息をつく、それからふっと息を吸い込んだ。
「シンシア、君の主張は間違ってはいない、けどそれが全員にとっての正義では無い。俺の言ってることがわかるか?」
煽っているという事でも無いが、今日のサディアスはなんだか空気が冷たい。前に私と話をしたとき弱っていたと言うだけで、元はこういう人なんだろうか。
サディアスの言葉だって、間違ってはいないが、事実と言うだけでシンシアに寄り添ってはいない。
「そうだとしても、私は許せないんです」
「何が許せない」
「、……人が真面目に目指しているものを、簡単に諦められるようなことが出来る人間と共にチームでいる事が、です」
シンシアはキッとサディアスを強く睨む。それでもサディアスは、そんなことは気にもとめずに続ける。
「それは君の心情の問題だろう、私はそうは思わない、私が見ているのは事実だ。このチームに不和をもたらしているのは誰だ?」
……あ、一人称が変わった。
そこで少し、彼が気を張って居てるのだとわかる。
「誰が必要だ不要だと騒ぎ立て、しまいには自分のチームの人間に手を出し、それでも自分の非を認めない」
「……」
サディアスの言葉に、シンシアは口を引き結んで黙り込む。
「君は真面目にやっていないとヴィンスを貶めるが、実際はチームにヴィンスと君、どちらが必要なのかは明白じゃないか」
シンシアの肩がふるふると震え始めた。チェルシーも何も言葉を挟めないようでオドオドと二人を見ている。




