なんでこう毎日、忙しいかな……。12
同じ立場に立って、なんのずるも無しに、私は向き合うべきだと思った。
そして私にも、覚悟が必要だ。前世ではこうだった、ああだったなどとは言ってられない。ヴィンスを守らなければならないし、ローレンスに処刑されないためにも、ここに居場所が必要なんだ。この学園に。
それは、この中の誰より、たとえ命をかけることになっても、強く望んでいる事だ。
「……死にたく、ない。でも、それと同じぐらい学園を出て行きたくない!」
「ッ、何故ですか!貴方、そもそも素質がない!!将来魔法使いになっても、ろくに戦えないはずだ!!」
彼女は真正面から打ち込んでくる。私はどれほど恐ろしくても、目を瞑らないようにシンシアを強く睨んだ。
……そんな事わかってる。でも……。
「でも、ここにいる以外にっ!!生きられる道がないのよ!!」
戦う事など好まない、ボクシングや格闘技が好きな人の気持ちを理解できない。私はただ、平和な世界で平和ボケしながら、生きていた。それが好きだったのだと今やっと分かる。
でも、だからこそ、流されて、他人に自分を決められて生きていきたくは無い、私は私の望む何者かになるんだ。
だから、戦う自分から。自分の人生を守るために。
心に強く決めて、すべての魔力を叩き込む。
その瞬間に、パキンッとガラスが割れるような音がした。込めていた魔力が一瞬にして溶けて無くなり、私の片手で剣を持てなくなる。
シンシアは次の斬撃を繰り出す。
……今、か……。
購入した簡易魔法玉は、粗悪なものだった。酷使すれば、壊れるのなんて、当たり前のことだ。
私の呆然とした表情に、シンシアも何かを悟り、目を見開く。
……あ、まずい、本当に……死んでしまう。
そう、私とシンシアは両方考えたのだと思う。
癖で、強く目を瞑った。
……、……。
衝撃はない。恐る恐る目を開けると、ふわふわの天然パーマの髪が私の前で揺れている。
「シンシア!!この人はっ、私はクレアなら、チームにいてもいいって思いました!!確かに、魔法は拙いけどっ、私はっ」
チェルシーは、円状の魔力でできた盾のような膜を張っていて、それはキラキラと波を寄せるように模様が移動している。
盾の魔法は、ユグドラシル魔法学園を包んでいる光の波によく似ていた。
……庇って……くれたの?
「そもそも、魔法が使えない上に、不真面目でっ、だから私たちは怒っていたです!!でもこんなに、誠意を込めて私たちに向き合ってくれたんですっ、私は許しますっ!!」
チェルシーが乱入した事により、シンシアは一度、私から距離をとって、それからチェルシーと背後にいる私を見比べる。
「ですか……チェルシー……」
「編入者が良い人とは限りませんっ、私はクレアとチームでいたいと思いました!!ダメですか!シンシア」
チェルシーの言葉にじんと胸が熱くなる。そう思って欲しいと思って頑張った、だから自分の思いがまっすぐ伝わったことが心のそこから嬉しくて、緊張で張り詰めていた糸が切れる。
剣を下ろして、シンシアの反応を伺った。
「…………ですが……クレアが許さないでしょう?私たちはクラスを巻き込んで彼女を貶めた。その時点で同じチームでやっていくなど無理な話です」
シンシアの言葉を聞いてチェルシーが私を振り返る。
……そんな悲しい事を言わないで欲しい。私は最初から、認めて欲しくて決闘を挑んだのだ。酷いことは確かにされたが、大元の原因は私にある。
できるだけ勝気に笑う。情けない姿はこの体には似合わない。
「そんな事、決めつけないでくださいな、わたくしも許します、これで、蟠りは一切無くなりました。……これから私とチームとしてやっていってくれますか?」
お嬢様言葉と私の喋り言葉がごちゃごちゃしてしまったが、二人は頬を緩める。
「えぇ」
「もちろんっクレア」
これでやっと、魔法使いを目指すスタートラインに立てただろうか。
ほっと一息つくと全身ボロボロで満身創痍だった事を思い出す。けれど、ここで倒れる訳には行かない、グッと足に力を込めて血が出ている腕を抑える。
「魔力の底が近いので救護室に行ってきますわね……ヴィンス」
声をかければヴィンスは駆け寄ってきて、さりげなく私の手を取る。本当に私の事をよく見ていてくれて助かる。
観戦していたクラスの人達は、納得のいっている人、そうでない人、興味の無い人と様々だが、サディアスだけは、また青い顔をしている。トラウマが再発してしまわないか心配だ。
重い体を引きずるようにして、練習場を後にした。




