仲直りって大事だね。 6
無心でヴィンスに打ち込む。真剣だが、私が剣を振るったことで、ヴィンスが簡単に傷つかない事を知っているので、物怖じせずに打つことが出来る。
ヴィンスが私に攻撃すると、途端に試合が終わってしまうので、今日は攻守交替制での稽古だ。
私が攻める番なので、ヴィンスの隙に見える部分に、無理のない範囲で打ち続けるが、金属の接触する音が鳴るだけで、どんなに強く打ち付けても攻撃は与えられず、いなされたり受け止められたりするだけだ。
「クレア!一撃に力を込めすぎです、必ずダメージを与えられるという時に力が込められなくなってしまいますよ」
「うんッ……」
でもその、必ず当てられる時と、今のこうして一方的に攻撃をしている時の違いが分からないのだからしょうが無い。
でもその時が来るまで温存した方がいいと言うのは最もだ。
少し肩の力を抜いて、遠心力で剣を振るう。
「うわっ」
すると手からすっぽ抜けて明後日の方向に、剣はぶんぶんと円を描きながら飛んでいく。
それを瞬発的に魔法を強く起動したヴィンスが取りに言って、着地点に到着し器用にパシッと掴み、しっかりと持ち手部分を掴んでキャッチしていた。
私はナイフ投げの大道芸でも見たような気持ちになって、凄いなぁと思い少し遠くにいたヴィンスに笑いかけて、手を振った。
個人的には、療養中と偽って、二人だけの秘密の特訓の最中のつもりだったのでまったく周りを警戒をしていなかったのだが、ガツンとなんだか鈍い音が響いた後に視界が勝手に空を向いた。
なんだか体がフサフサしている、というかふわふわしていて、頭がグラグラする。
理解不能な状況に、動く視界だけで何とか、状況を把握しようとすれば、信じられないものを見る目でこちらを見ながら、手を伸ばすヴィンスが見えた。
こちらも手を伸ばそうとするのに、ろくに体に力が入らない。
私は力尽きるように、意識を失った。
目が覚めると、ものすごく体が重たくて、局部麻酔がところどころ施されているような鈍い間隔だけがあった。
目が覚めたと思ったのは、意識が覚醒したからである。実際は意識が覚醒しただけで、正しくは目は覚めていない。目を開けることができないのだ。アイマスクかガムテープか、何かよく分からないもので目の周りを覆われていて、目が開けない。
「あ、……ン?……ん?」
今すぐにでも、この不快な目の周りを覆っているものを取り外そうと腕を動かすが、謎に腕が背後にあって、肩の関節が痛い。感覚が全体的に鈍いのは、どうやら苦しい体勢で拘束されているせいかもしれない。
腕が動かせ無いとなれば足だ、グッと力を入れると、やはり足と足をピッタリくっつけるように拘束されていて、心臓の音が強くなる。
……な、なん、だろ、これ。
どういう事なんだろう、え?意味がわからない。
ベッドに擦り付けて、目隠しを取ろうともがくが、きつく拘束されていて、まったくズレない。
睡眠用に使うアイマスクとは、用途が違うものなんだろう。腕も足も硬い何かで拘束されていて、背筋が凍る。
後ろ手である事がまずは問題のような気がして、こういう時はよく分からないが、腕を拘束されたままでも、自分の腕のあいだを体を通すことによって、手を前に持ってこれるのじゃなかったっけと思う。
……でも、無理じゃない?だって、どう考えても体そんなことにならなくない?
絶対に使えない豆知識に腹を立てつつ、モゾモゾと動いてみる。何か柔らかいベッドのような場所にいるということは分かるが、感触から他の事は読み取れない。
……結局、なんなの?移動してみる?今の状態、怖すぎるし。
なにかしていないと、大声で「誰か!助けて」と叫び出してしまいそうで、それだけパニックになりそうになりながら、体を転がして、うつ伏せになり、百トリ虫なさがら、腰を曲げて体を前に出した、少し前に進めた事に安堵しつつ、もう一度、足を引こうとすると、カシャン!と何かが突っ張るような感覚がして、足がどこかに繋がれているということを理解する。
「ッ、う、……はっ、う、ッ!誰かっ、いませんかっ、誰か!」
咄嗟のことに蹲るように足を引っ張りながら、大声をあげる。でも、誰かと言っても、こういう場合相場は決まっている。
そこにいるのはこの拘束を施した人物だ。
ガタ、と、椅子を引いたような音がして、本当に誰かがいた事が逆に恐ろしくて体がガタガタと反応する。手足が冷えて、その見知らぬ誰かが恐ろしくて仕方がない。
すぐそこにその人がいる気がする。絶対に良い方向には進まないとわかっていつつも、不安を解消するために口を開く。
「あ、ああの、なんか、なんか、縛られってて」
見えないのに必死にその誰かの方に視線を向けるつもりで喋った。
カチャカチャと何かおもちゃみたいな変な音がして、ジトジトと汗をかきながらガタガタ震える。
「怖い、から、はず……っ、ぐんっ、ゆ、ンン!!」
変なものを突然口の中に押し込まれて、パチ、パチと、スナップボタンを止めるような音がして、言葉を発する自由を奪われる。
「ン゛っ、ンン!!」
抗議するように、今更叫び声をあげたが、口の中にこもるばかりでろくな声量にならない。




