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悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?  作者: ぽんぽこ狸


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私も大概、トラブルメーカー……。7





 彼の魔力渦巻く魔法の根源が、私の欠損にピッタリ嵌るのではないか。そんな気がしてくる。


 他人の魔法玉に急に触れるなど、私がされたら不快だしあってはならない事だとわかっているのに、ふと、私の思いとは裏腹に手がうごく。


 自分の魔法玉を持っている方の手だ。


 カチッとそのまま、流れるように、ディックの魔法玉に触れさせた。


「ッ?!ッ、う゛」


 突然の事にディックが小さく呻く。


 私はそんな事はお構い無しに、魔力を抜いていく、自分の魔力が魔法玉に不足すると、ディックの魔力が水のように流れ込んでくる感覚がした。


「え、?う、え、っ、何してんっ」

「あ、ははぁ、なんだろ」

 

 肩をガシッと掴まれて、私は彼の胸ぐらをつかみ返した、お互いに魔法を使っているので力が均衡する。もうちょっと、という言葉が頭に浮かんで、反射的に敵意はないとディックに笑いかけた。


「やめ、ろって、ぇ」

「ごめんね」


 ディックがどんな感覚なのか分からないが、ぎゅううっと強く目を瞑って、眦に涙を浮かべている。少し頬が紅潮していた。


 とくとくとくと、瓶から液体が注がれるように、私の中にディックの魔力が溜まる。

 何か望むものが手に入るような、逃がしてたまるものかという気持ちになって、目を見開き、少し怯えているディックを覗き込んだ。


「ッ!!」


 パッと、手を離す。ドンッと突き飛ばされて、距離が開くけれど私はそんなの気にせずに自分の魔法玉を見た。


 私のドーナツの穴が埋まっている。ディックの綺麗な真っ白な光で。


 暖かい魔力に包まれている感覚がする。高揚感が全身を包んで、簡易魔法玉の必要性をまったく感じなくなった。


「な、何したの?ぼくっ、?!」


 ふっと魔法玉に魔力が加わる。きっと自分にサーチを使おうとしているんだろう。


 それから私の魔力はするすると抜けていく。自分が何をしているのかまったく分からない。


 ただ、何となく、ディックの方へと私の魔力が流れて言っているような気がした。彼は、目を瞑ったままビクッと体を動かし、ふるふると頭をふる。何か変だ。


 たたたっと素早く駆ける音が聞こえてきて、すぐにディックに寄り添うようにオスカーが現れて彼の肩をだく。


 彼も状況が把握出来ていないようで、私とディックを交互に見て、それから、彼も強く魔法を使う。

 すると、ディックがパッと目を開いて、代わりにオスカーが顔を歪めた。


 また何か予想外の事が起こったらしく、ディックもオスカーも混乱して、お互いをじっと見つめている。


 何だか全員ピリピリとして、獣が威嚇し合うようにお互いを見つめていると、パンパンッと手を打つ音が聞こえて、意識外からの音に、ビクッと体が震えた。


「全員魔法をときなさい!!固有魔法が暴発しています、落ち着きなさい!!……はぁ!まったく」


 ブレンダ先生は、一息ついて、微動だにしない私たちを見て、ふと魔法を使う。

  

 彼女が動いた時には、既に私の意識は無くなっていた。




 目が覚めると、ふんわりと柔らかい心地に微睡む。ただ少し窮屈なので、ソファだろうと思う。

 額の上にはひんやりとした濡れタオルが乗っかっていて、それを手に取り起き上がると、チェルシーとシンシアが私を覗き込んでいた。


「クレアっ!心配しましたっ」

「痛む場所はありませんか?」

「……うん」

 

 チェルシーはひしっと私に抱きついてきて、シンシアは、私の顔を覗き込んで優しく聞いた。


 二人の向こう側には、大きな長テーブルがあり、着席している人が数名、椅子が足りないのか立っている人もいた。


 部屋はどうやらサディアスの部屋のようだった。


 いつから、サディアスの部屋は集会場になったのだろう。二チーム程の人数がいて、状況が分からずにチェルシーの背中をタップする。


「心配かけて……ごめんね……あの、今はどういう状況?」

「……ああ、今は……」


 チェルシーが言いかけたその時、ふんぞり返って座っていたディックが椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がる。私と目が合ったのだ。

 それから、ズカズカと歩いて来て、それをオスカーが魔法を使って止める。


「離せっ!オスカー!」

「まて、待て待て!!サディアス!!」

「チェルシー!シンシア!クレアを守ってくれ!」

「ディック落ち着け!」


 オスカーは、後ろにいる同じチームの男子三人に目配せをしてディックを押さえつける。ディックは魔法玉を持っていないのか、バタバタと暴れるだけで、振り払う事は出来ない。


 それを警戒するようにシンシアとチェルシーが魔法を使い、じっとディック達を眺める。


 私はサディアスにどういうことかと視線を向けると、彼は私の肩を掴んで引っ張り、立ち上がらせ無理やり椅子へと座らせる。その隣にはきっちりとシンシアとチェルシーが座った。


 サディアスはお誕生日席で、よく見てみればヴィンスは居ない。


「オスカー、ディックを座らせてくれ!話し合わない事には何も始まらないだろう」

「わかってんだよ!ディック!!なぁ、少しは落ち着いてくれ!」

「なんっだよ!!オスカーまでっ、皆、彼女の味方をするのか?!僕は悪くないってば!!」


 話をしようとしているだけなのにディックは、変わらず暴れている。自分の意思が通らない事に、みんなが敵のように見えてしまっているらしい。


「クレアが僕にッ無理強いをしたんだよッ!」


 あ、確かに私、何かやらかした。それもこの世界だと結構まずいことをやった気がする。





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