08
エイデンの場合
キャナルはどこにいるかな?
学園長室を出て周りを見回す。
建物の中にはいない気がする。
馬車寄せ?・・・う〜ん違うな。
校舎裏にいる気がする。
建物から出て、校舎裏を目指す。
人だかりが出来ていたのでそちらに向かってみた。
女性の喚き声が聞こえる。
「あぁ、殿下。ご婚約おめでとうございます」
名前も知らない下級生が祝ってくれた。
その場にいた生徒達が思い思いに祝いの言葉をくれた。
「ありがとう。祝ってくれて凄く嬉しいよ」
私は心を込めてお礼を述べた。
「殿下!殿下の婚約者の方が絡まれていますよ」
最前列に出てみた。
キャナルがアリアルに喚き立てられているところだった。
「耳をふさぎたくなるね」
皆首を縦に振った。
ちょっと様子を見ていたら、アリアルが手を振り上げた。
流石に許せないと走り出そうとしたら、キャナルは一歩下がって回避していた。
「さすが私のキャナル。格好いい・・・」
一部の生徒にはちょっと白い目で見られたかもしれない。が、気にしない。
一部の生徒には賛同を得られたと思うし。
「地団駄踏んでる人初めてみた」
一年生だろう、幼い雰囲気の男子生徒が言う。
そう言われればそうかもと感心して見ていると今度は足が出た。
キャナルは二歩下がって避けた。
いつまでもやっていると、いつか当たるかもしれないので、姫を助ける英雄として颯爽と登場しようではないか!
キャナルの背後に忍んでいき、後から抱きしめてやろうと思って近寄ると、キャナルは右へ2歩避けた。
そしてアリアルが振り下ろした手が私の左頬に命中した。
王の場合
王は最近、第一王子の事で悩んでいた。
一旦は王位継承権の辞退を辞退させたはずなのに、一言二言の会話であっさりと王位継承権を辞退されてしまった。
子供の頃からキャナルのことが好きで、キャナル以外の婚約者は要らない、と言うことを聞かず、頑として他の婚約者は受け入れなかった。
キャナルを小さい時から教育させれば子爵とはいえなんとかなるだろうと思っていた。
タイミングよく、下位貴族からも婚約者を選ぶ可能性を示唆していたし。
キャナル嬢は教育は受けてくれたが、婚約は受け入れてくれなかった。
成長すればいずれどちらかが折れるであろうとのんきに構えていたせいなのか?どちらも折れず、想定外の方向にエイデンが折れ、継承権の辞退と相成ってしまった。
許可はしたものの、手続きは何もしていない。
だが、エイデン自身が進める準備は着々と進んでいく。
あの手腕を王になって揮ってくれたらと毎日思い頭を抱えている。
王妃はまだ下に子が沢山いるのですから良いではないですかとあっさり言うが、第二王子のベイゼルの婚約者はあれだし、下の子達はまだ小さく、その見極めができなかった。
宰相に相談した所「手続きを早々に進めないと大変なことになりますよ」と言ってきた。
何故かと問うと、もう既に殿下が王位継承権を辞退したことも、結婚式が来年の6月であることも知らない人はいないと言った。
驚いた私はどうしてそんな話が出回っているのかと聞くと、エイデン自身が直接的な言葉以外を使って彼方此方に振りまいているからだと宰相は渋い顔をして言った。
「キャナルを呼んでくれるか?」
「わかりました」と、宰相は下がっていった。