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学園長の場合


 学園長は頭を抱えていた。

 殿下が卒業を早めて欲しいと言ってきたからだ。

 何を馬鹿なことをと一蹴して終わる話が、終わらなかった。

 殿下とキャナル嬢の成績を提示され、来年6月に結婚することになっていて、忙しいのだと言い張り、こちらの説得は聞きもしない。


 学園はいかなる圧力にも負けないという建前はあっても、建前は建前だ。王族には弱い。

 強く出られるとそこはもう、勝てる見込みはない。


「殿下、キャナル嬢も呼んで一緒にお話をしたほうがいいのではないでしょうか?キャナル嬢に許可は取りましたか?もしかするとキャナル嬢は最後の学園生活を楽しみにしているかもしれませんよ?」

「ふむ。分かった。呼んでこよう」


 ほっと息を吐いたものの再び訪れるまであまり時間はないだろう。

 各学年の主任と、担任教諭を急いで集めた。

 説明をした所、皆の意見はすべての教科テストをして合格したなら卒業まで自由登校とするのはどうかという意見が出た。


 そのテストは殿下とキャナルだけではなく3年生全員に適用させればいいのではないかと。

 合格しても学園に来たい人は来て、来たくない人は来なくてもいいということにすれば良いと。


 なるほど。それなら不満は出るまい。

 全教科の先生を呼んで、1〜3年生全教科の試験問題を作るように頼んだ。

 それも早急に。


 始業式が始まるチャイムを聞いて殿下が来なかったことにホッとした。





キャナルの場合


 私は学園の焼却炉脇に追い詰められていた。

 アリアルが馬車寄せ場で待ち構え、私が馬車を降りた途端に腕を捕まれ、引っ張ってこられました。

 強硬手段で驚きです。


「わたくしからのお茶会を断ってくるとはどういうことですの?!」

「今まで一度もご一緒させていただいたこともありませんし、個人的に言葉を交わしたのもこれが初めてだと思いますが・・・」


「だから何だというのです?子爵家ごときが伯爵家に声を掛けられて断るなんてことあっても良い訳がありませんでしょう!!」

「いえ、知らない方のお誘いは断るかと・・・」

「あなた生意気よ!!」


「では、何度もご招待いただいた理由を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?あまり時間もありませんし・・・」

 恐ろしい顔で私を睨みつけてきます。

「言わずとも分かるでしょう?」

「いえ、見当も付きません」

「あなた大分頭が悪いのではなくて?」

「かもしれません」


 あなたより成績は良いですが、と思ったが声には出さない。

「言われずとも分かりなさい!」

 もう、帰っていいですか?

「具体的なお話がないようでしたら、もう講堂に向かってもいいでしょうか?」

「話があるからこんな所にいるんでしょう!!」


 あっ、怒り狂ってしまったかもしれません?

 恐ろしい顔が醜く歪んでいます。

「殿下との婚約をお断りなさい」

「えっ?無理ですよ」

 わぁーーっ・・・人の顔ってこんな顔にもなるのですね。


 目は吊り上がり、鼻は広がり、唇はわなわなと震え、手は私に振り下ろそうと持ち上げられる。

 一歩後ずさり回避します。

「なぜ避けるのーーー!!」

 あっ、地団駄踏み始めました・・・。

 初めてみました地団駄。


「無理とはどういうことですのっ!!」

「陛下からの申し入れで、お受けしたからです」

「なぜ受けたりするの?!子爵家ごときが!!」

「ではお聞きしますが、陛下から申し込まれて断れますか?子爵家ごときが」

 あっ、足がこっちに向かって飛んできます。

 2歩下がりました。

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