05
エイデンの場合
キャナルの家で一緒に領地についての勉強をしていたら、キャナルのもとに毎日お茶会の招待状が届く。
それらの殆どがアリアルからだというからビックリだ。
一体何回誘えば気が済むんだ?
離れた場所で見ていると、伝令が「伯爵家からのお誘いです」とキャナルに圧力をかけているのが見える。
キャナルは子爵家だからな。こういう理不尽も今まで多々あったんだろうな。
可哀想に・・・。
私は伝令に「私、第一王子だけど何か文句ある?」という無言の圧力をかけてやった。
「キャナル、返信用の手紙をちょっとこちらへ」
素直に招待状と返信用の紙をこちらに渡す。
素直なキャナル、本当に可愛い。
伝令に返事を渡す。
そしてもう一度圧力をかけておく。
「エイデンからの返事だと伝えておけ。キャナルは忙しくて行けないと」
震え上がった伝令が逃げるように出ていった。
勉強もキャナルと一緒だと思うと苦もない。
苦手な分野でもスルスルと頭に入ってくる気がするよ。
そっとキャナルを窺い見ると、視線を感じたのか?キャナルもこちらを向いた。
以心伝心だね!!
キャナルの父が結婚の準備について話があると私達のもとにやって来た。
「来年の6月とは早すぎませんか?」
「学園は卒業しているので、いいと思っているよ」
「卒業して一年くらいは間を開けるものではないですか?」
「他所の事は分からないが、私達は6月でいい。4月にと言ったのが却下されてしまったのだ」
「それは助かりました」
「ん?」
「いえ、キャナルの準備が整わないと思うのですが・・・」
「結婚してからでも十分だ。私は明日でもいいくらいだ」
「いくらなんでもそれは・・・」
「分かっているよ。だから来年の6月で我慢したんだからこれ以上はもう譲らない」
「わかりました」
わかってもらえてよかったよ。
キャナルに「最近、地が出てきていますよ」と注意された。
でも、王位を継がないんだからもう良い子の振りはしなくてもいいと思うんだよね。
キャナルも地を出してくれればいいのに。
キャナルの場合
アリアル様は本当に面倒な方です。
殿下がお好きなのか、権力が欲しいのかよくわかりませんが、殿下と仲良くしていると、射殺せそうな目で私を見てきます。
私はなるべく目立たないようひっそりと過ごしたいのですが、私の側には勿論、殿下がいます。
幼少の頃から殿下に目を付けられるとは思いませんでした。
本当に面倒くさいです。
今まではアリアル様から直接のお誘いはありませんでしたし、子爵家程度、相手にいたしませんわ!的な態度だったのですが、婚約発表があった直後から毎日です。うんざりです。
行けばどんな無理を言われるか分かったものではありません。
こういう時は殿下を上手に使うべきでしょう。
困った顔をして殿下をチラリと見ます。
完璧でした。
今日のお誘いは殿下が断ってくださいました。 その上、来年の7月までは『忙しいので構うな』と書いてあります。
来年の6月か7月に結婚すると、伝えたようなものではないでしょうか?
ふぅー。お父様に報告しておかなければなりませんね。
殿下はどこまで考えて行動を起こしていらっしゃるのでしょうか?
高貴なお方の考えることは私ごときには理解が出来ません。
まぁ、アリアル様を回避できるのなら良しとしましょう。
一緒に勉強すると、やたらと殿下の視線を感じます。
こっちを見ていないで勉強をしていただきたいと思うのですが、なかなかうまく誘導できません。
家庭教師を務めてくださっているダートン様が咳払いをし、殿下の注意をひきつけます。
始めは別々にしていた勉強を殿下が二人一緒に受ければ一度で済むと言い出して我が家に勉強をしに来るのです。
勉強前と後のお茶の時間は無駄だと私は思ってしまいますが、殿下にはとても大事な時間なのだそうです。
私は少し、いえ、かなり困っています。
私の直ぐ側に座りたがり、人目を盗んでは私の手を繋いだり、頬にキスをしようとします。
私は殿下の恋の暴走を押さえられるでしょうか?
ありがとうございます。