04
キャナルの場合
両親に今までの王妃教育ではなく、公爵夫人としての教育を受けねばならないと言われ、家庭教師を付けられました。
殿下と一緒に・・・。
今まで身につけていたものとまた違った新しい事を覚えなければなりません。
知識を取り込むのは私の趣味と言っても過言ではありません。
だから、王妃教育も受けました。
秘密ですが、決して婚約を受け入れるためではありませんでした。
誰にも言えませんが、婚約を受け入れたのは失敗だったのではないかと今更ながらに考えてしまいます。
殿下のことです、絶対裏で何かを考えているはず。
本当に王妃にならずに済むのでしょうか?
認証されたって言ってたし、大丈夫ですよね?
殿下に騙されていませんよね?
婚姻の日取りが決まったと殿下が教えてくださいました。
「まだ婚約をして一ヶ月しか経っていないのにですか?」
「婚姻自体は国を挙げての式になるから仕方ないよ」
殿下は軽く言います。
「いつなのでしょうか?」
「来年の六月一日だよ。私達がするべきリストを渡されたからキャナルにも渡しておくよ」
「リストですか?」
渡されたリストは用紙二枚に渡って書かれていました。それも小さな文字でっ!
そのリストを見て目眩が起きた気がしました。
気がしただけですけれど。
「来年ではなく再来年に出来ませんか?」
「私がそんなに待てないよ」
私の手の甲にキスを落とし上目遣いで私を見ました。
「早く一緒に暮らしたい」
可愛くないと心から思ってしまいました。
私の思考は不敬でしょうか?
アリアルの場合
「子爵の娘へお茶会の招待状は送ってくれたのかしら?」
「はい。送り届けました」
「どうして!その場で!返事を!もらってこなかったのです?!」
私の怒りに伝令が怯えていますがそんな事はかまいません。
「殿下がキャナル嬢の側におられて、お時間をいただけませんでした」
本当に役に立たない伝令ですこと!
その日の夕方に執事が私のもとにやって来ました。
「お嬢様、お返事が届きました」
執事が差し出す封書の封蝋の確認をして開きます。
「断ってくるとはどういうことですの?」
「断ってこられたのですか?」
「時間が作れないと書いてあるわ!」
「それは・・・」
「わたくしは伯爵家でしてよ。子爵家程度の娘が私の誘いを断れるものではないでしょう?!」
執事は何も返事をしない。
「もう一度招待状を送ってちょうだい!伯爵家からの招待状だと伝えてね。圧力をかけるのよ」
「か、かしこまりました」
「お嬢様、今回はお返事をいただいてまいりました」
「よくやりました」
開くとまた断りの文面です。
「どういうことですの?!ちゃんと圧力は掛けたのでしょうね?」
「はい、ですがあちらの方がより強い圧力をお持ちで・・・」
「どういうことかしら?」
「エイデン殿下がずっと側にいらっしゃいまして、私の方が圧力をかけられました」
「!!そ、それは仕方ないわね。でも明日なら殿下もおられないでしょう。明日もう一度送るとしましょう」
たかが子爵家程度の娘と会えないなんて!
会えないことには何も出来ないじゃないの。本当に忌々しい子だわ!