03
アリアルの場合
私は膝から崩れ折れた。
あまりの痛みに呻いたが、それも一瞬だった。
「どういうことなのですか?殿下が王位継承を辞退したとは」
「よくわからない。発表は先になるがエイデン殿下は王に直接辞退を申し出たそうだ」
「なんなのですか?一体何が起こっているんですの?」
「すまない。それ以上の情報はいくら探っても出てこなかった」
「きっちり情報統制がされているということですね?」
「そうだと思う」
「発表しないが情報を漏らすってことはほぼ決まっていると言うことなのでしょうか?」
「どうだろう?」
「わたくしが考えたキャナルの排除方法は無意味ということですか?」
「アリアル、こわいよ・・・そんな事は口にしては駄目だよ」
「ですが、第二王子では私より年が五つも下じゃないですか!!お父様はなぜ私を第二王子に合わせて私を産んでくれなかったのですか?」
「そ、そんな事言われても・・・」
私だってわかっているが、何か文句を言わないと正気を保てない。
折角考えたのだしキャナル虐めはした方がいいわよね?
「殿下は公爵になるのですよね?」
「多分そうなるだろう」
「キャナルの排除はしたほうがいいですわよね?」
「そんな事はしては駄目だよ!バレたら死罪だよ」
「それでもいいですわ」
私は伯爵家程度で埋もれていていい存在ではないですわ。
エイデンの場合
エイデンは父から与えられることになっている領地の事を調べていた。
本当に必要になる可能性もあるから。
今までは王になる教育を受けていたけど、これからは領主となる教育を受けなければならない。
いい家庭教師はいないかと宰相に訊ねると、大領地の領主を引退したばかりのダートンがいいのではないかと推薦してくれた。
今日も新しいことを頭に詰め込んでいく。
これもキャナルのためなら頑張れると思った。
昨日のキャナルも可愛かったな〜。
頬を赤くして恥ずかしそうに俯いて上目遣いに私を見た時には可愛すぎて死ぬかと思った。
「殿下は王位継承を辞退して後悔はないのですか?」
ダートンの問にあっさり答える。
「ないよ」
「これから先、五歳も年下の第二王子のベイゼル殿下に頭を垂れなければいけなくなるんですよ?」
「全然問題ないよ。僕の欲しいものは手に入れたからね」
「手に入れたものは時間とともに色褪せていくものと思われますが?」
「そうだね〜それは流石に時が経たなければ分からないかな。そんな日は来なくていいと思うけどね」
「そうですか」
ミスティアの場合
キャナルが邪魔だと感じていた。
キャナルがいなくなれば、身分からしても私が妃候補になるでしょう。
私が直接何かをすると万が一の時に困るので誰か雇わなくてはならないと考えていました。
「動かせる資金・・・」
ドレスの1〜2枚我慢したらなんとかならないかしら?
思わず言葉に出してしまい、辺りをうかがう。
誰も聞いていなかったようでホッとした。
慎重に動かないと。
父も母もキャナルを受け入れているようで、私のことは考えてくれていない。
最後に私がウエディングドレスを着て殿下の隣に立てばいいのよ。
うふふふふっ・・・・・・。
でも、裏で動いてくれる人ってどうやって探せばいいのかしら?