01
よろしくおねがいします。
年が明け、お祝いムードが落ち着いた頃に、ガンデス王国第一王子のエイデン17歳と、キャナル嬢17歳が婚約したと発表された。
長く決まらなかった皇太子の婚約に国民は大いに喜んだ。
アリアルの場合
「お父様!どういうことなのですか?!殿下が婚約したとは?!」
父がかいてもいない汗を拭くのが目に映る。
腹立たしいこと!!
「私が第一候補で、間違いなく私が選ばれると仰っていたではありませんか!!」
「す、すまない・・・」
「私は選ばれなかったではありませんか!」
私の怒りは父に八つ当たりしても収まらない。
「お父様、王宮に参りますよっ!」
「王宮に行ってどうするんだい?」
「勿論、私が選ばれなかった理由を聞きに行くんですよ!」
「そ、んなことしたら恥ずかしいと思う・・・が・・・」
「そう、ですわね。ですが情報を仕入れてきてくださいませ!」
少し頭が冷え、自分でも耳障りな声が一段階、落ちついた。
「わかったよ」
父を「無能」と心の中で罵りながらドタドタと出ていく父の背を忌々しく思いながら見送った。
私が王妃になれると思っていたのに、あんなたかが子爵家のキャナルのような女が選ばれるなんて許せないわ!
なんとしてもあの子を排除しなくてはっ!
私はキャナルを虐めて、自分から婚約破棄を言い出させる方法を考えていた。
ミスティアの場合
同時刻、ミスティアも不快に思っていた。
婚約が成立したってどういうことかしら?
確かに、打診はありませんでした。
ですが、年回りと爵位で考えても私しかいないと思っておりましたのに。
この情報を持ってきた執事のフォールは何も言わず黙って立っている。
「噂じゃなくて公式発表なのかしら?」
「そうでございます」
「お父様は何と仰っているのかしら?」
「漸くか。と」
「漸くとはどういう意味かしら?」
「私にはわかりかねます」
「そうね。ありがとう。お父様に会えるかしら?」
「お忙しいと」
「そう・・・」
話す気がないってことね。
私はちょっと人より成長が遅いのかもしれません。
身長が伸びないのが悩みです。
クラスの全員・・・いえ、全生徒から見下されるのが腹立たしくてなりません。
ですが心は17歳、私は公爵家の娘で間違いありません。
「お母様はどちらに?」
「サンルームで読書をなさっています」
「伺うわ」
「かしこまりました」
「お母様」
「あらミスティア。どうかして?」
「殿下の婚約が発表されました」
「ええ、伺ったわ。殿下もお喜びでしょう」
貴族の結婚など政略なのですから、喜ぶもなにもないでしょうに。
「どういう事ですか?」
「あら、知らなかったの?殿下は同じ歳の子との初の顔合わせの時からキャナル様の事が好きで『彼女以外とは婚約しない』と言って今まで誰とも婚約しなかったのよ」
そんな話は聞いたことがありません。
「知りませんでした」
母がじっと私の顔を見て小首をかしげる。
「ミスティアが選ばれるとでも思っていたのかしら?」
コロコロと笑われた。
「それは・・・公爵家の私が選ばれると思っていました」
母は少し冷たい目をした。
「誰がそんな事を吹き込んだのかしら?わたくしはそれが知りたいわ」
吹き込まれた?そんな覚えはありません。
「いえ、私が勝手に思っていただけだと思います」
「ミスティアが婚約しないから、まさか殿下との結婚を望んでしたのですか?殿下はミスティアを望むことは有りませんよ。情報収集が足りないと思いますよ?」
「何の情報が足りないのでしょうか?」
「すべて足りていないでしょう?学園で何をしていたのかしら?殿下を気にかけたこともないのではないですか?」
「それは・・・」
「キャナル様は王妃教育も済ませていますよ」
私は心底驚いた。王妃教育など簡単に終えられるものなのだろうか?
「たかが子爵家の娘がですか?」
「とても頭もよく、殿下に愛されていますもの」
火曜と金曜にupできたらと思っています。