第九話 魔王軍幹部
女の子に連れられて来た小さな村は、俺たちが歩いていた道を少し外れて歩いたところにあった。
村には木や藁でできた家が多く立ち並んでいる。
村に着くなり、女の子は走り出した。
「お父さん! お母さん!」
女の子がそう叫ぶと、近くの家から焦ったような男女が飛び出してきた。
そしてそのまま女の子を胸に抱き、目に涙を浮かべる。
「よかったわ! 無事で本当によかったわ!」
「勝手に村を出ちゃダメじゃないか、ショート! 心配したんだぞぉ」
女の子の名前はショートというらしい。
親子の感動の再会といった感じだ。
俺とトランプはその様子を少し離れたところから見守る。
アーケードは興味なさげに村を見回している。
そうしていると、親子の方からショートちゃんの大きな声が聞こえてきた。
「そうだ、お父さんお母さん! 勇者様を連れて来たんだよ!」
ショートちゃんが言うのを聞いて、トランプは露骨に嫌そうな表情を浮かべる。
ショートちゃんがこちらに手招きをしているので、俺たち3人はショートちゃんとその両親の方へ歩いていく。
顔を合わせるなり、ショートちゃんのお父さんと思われるおっさんが、俺の手を握った。
「あなた方がショートを連れて来てくださったんですか!」
「ええ」
ショートちゃんについて来ただけだけどな。
「本当に、本当にありがとうございます! うちの娘ときたら、いきなり出ていってしまうものですから心配していたのです。……ところで、失礼ですがあなた様が勇者だというのは……」
おっさんがそう聞くと同時、トランプが俺とおっさんの間にシュバって来た。
「いや、それはこの男が勝手にいってるだけで、本当は勇者なんかじゃおぼぼっ!」
余計なことを言おうとしたトランプの口を塞ぎ、俺は言う。
「俺は勇者ではないのですが、元勇者パーティーのメンバーで、勇者並みの強さだと自負しています!」
トランプが「嘘つけ!」という顔でこちらを睨んでいるが、気にしない。
俺はここらで一度大活躍をして、チヤホヤされたいのだ。
そんでもって、勇者パーティーのやつらを見返してやるのだ。
俺の言葉を聞いたおっさんは、
「実は、この村は魔王軍から襲撃予告を受けているのです。私たちがそのことについて話しているのを、娘のショートも聞いてしまったようで……」
いてもたってもいられなくなってしまったと。
「話を聞きましょう。俺が解決して見せます」
俺がそう言うと、おっさんは目に涙を浮かべて喜ぶ。
「本当ですか! ではまず、村長の家へご案内いたします。こちらです!」
おっさんの指示に従って、俺たちは村の中心にあるという村長の家を目指して歩き出す。
後ろを歩くトランプが恨めしそうにこちらをじっと見てくるが、気にしたら負けだ。
対照的にアーケードは、終始楽しそうに鼻歌など歌っている。
おっさんの後に続いてしばらくすると、他の家よりも立派な木造の家が目の前に現れた。
「こちらが村長の家です」
おお。
「俺の住んでた屋敷の方が全然でかいな」
するとトランプが呆れたように、
「あんたデリカシーって知ってる? っていうかあんたの屋敷も言うほどデカくはなかったでしょうが」
おい。
……ん?
「なんでトランプが俺の屋敷の大きさを知ってるんだ?」
「う、ううっわぁぁちいっせえええ! よく見たらこの村長の家まじで小さすぎるわよねぇ!? ちいせえええええええぇぇぇ! なぁユウリそう思うよなぁ!?」
トランプが食い気味かつ大声で言う。
「おいトランプ、流石にそんな大声で言ったら可哀想だろ。デリカシーって知ってるか?」
そんなふうに話しているとおっさんが申し訳なさそうに、
「あの、到着しましたので中にご案内したいのですが……」
「ああ、すまん」
気を取り直して、建物の中に入る。
後ろを歩くトランプが、大きく息を吐く音が聞こえた。




