第十二話 固形スライムについて
俺の横にいたトランプが、村長に質問を投げかける。
「その、魔王軍幹部というのが何者かは判明しているんですか? 村長」
聞かれた村長が肯定するように頷く。
「悪名高き魔王軍最高幹部が1人。その名も『固形スライム』!」
固形スライム────!
現場に、衝撃が走った!
ような、気がした!
「こ、固形スライム」
名を聞いたトランプが、思わず繰り返す。
え? スライムなのに固形……? そんな空気が、その場にいた全員の間に立ち込める。
その疑問を代弁するように、トランプは村長に聞く。
「その……固形スライムというのは?」
村長が答える。
「固形スライム。まずスライムというのは通常、粘液状の身体をしている。そして、刀で刺せばすぐさま息絶える弱いモンスター。それは皆知っておるな?」
全員が頷く。
「しかし、固形スライムは違う。まずヤツは他のスライムとは異なり、巨大で四角く、しかも固形状の身体をしているのじゃ」
「それはスライムというよりヌリカベなのでは……」
「じゃが、ヤツの真なる脅威はその『硬さ』にあるのだ」
「硬さ?」
そう言うトランプの言葉に頷き、村長は続ける。
「曰く、その体は鋼鉄よりも硬くタングステンよりは柔らかいという……」
鋼鉄よりも硬いだと!?
それを聞いた現場に一瞬、沈黙が流れる……。
トランプが、恐る恐る村長に聞く。
「……『タングステンより〜』のくだりいります?」
「そしてだな……」
「え、無視……?」
「ヤツの硬さは魔王軍最高幹部の中でも19番目に位置するという……」
「え、無視? というか、19番目……?」
19番目らしい。
そう聞くと弱そうだなぁ……。
トランプが再び口を開く。
「ちなみに、その魔王軍最高幹部というのは全部で何人いるんですか」
おお、確かにそこは重要だ。
それ次第で19番の重みが変わってくる。
「ふむ、そうじゃな。最高幹部は、魔王軍内の厳しい競争で勝ち抜きその頂点に君臨する精鋭。故に、魔王の一人娘をはじめとして、その数はわずか190人いると言われているのじゃ」
「思ったより多いわね……」
思ったより多かった。
そう聞くと19番目というのが強そうに感じてきた。
他の村の人はどう思っているのいるのだろう。
そう思っていると、村人の1人が声をあげる。
いかにも荒くれ者といった感じの風貌をした男だ。
「おうおう、なんだなんだオメェら! 19番目のヤツにビビってんのかぁ!? そんなヤツ、俺っちの敵じゃねぇぜ! なぜなら俺は、この村で18番目に強い男だからなぁ!!」
男がそう言ったのを皮切りに、村民たちがざわつき始める。
「なるほど! それなら村で13番目の強さの俺もやれるってことか!」
「俺は19番目だから、互角には戦えるはずだぜ!」
「私は38番目だから力になれないわね……」
その様子を見て、俺もようやく理解する。
「な、なるほど……! 確かにそう考えると、この村には固形スライムに勝てる実力の持ち主が少なくとも18人はいることになるな!」
「いや、そうはならないでしょ」
トランプが、よくわからないことを言っている。
「お前にはちょっと難しすぎたか、なぁトランプ?」
「あんたいつか刺されるわよ? というか刺す」
「なあ、アーケード。お前はこの作戦でいけると思うよな?」
そう言い俺はアーケードの肩をゆする。
「わかんないけど、あたしなら1人でも固形スライムに勝てると思うよぉ」
「ほらトランプ、アーケードもこう言ってるぞ!」
「あ、頭がおかしくなりそうだわ」
トランプが頭を抱える。
結局その日の話合いでは、村で1〜18番目に強い18人と俺たち3人が残って戦い、残りの者は森の中に避難することが決まった。
トランプは結局最後まで「そもそもなんで村人全員の強さの序列が決まってるのよ……」と文句を言っていた。
お待たせしました!12話です




