序章 はじまりの過去
今、全てが凍てついた研究所で、冷気を放つモンスターが倒れた。
モンスターを倒したのは、顔に幾百もの皺を刻んでいる黒衣の大柄な老人だった。
「最後に、なにか言うことはあるか?」
倒したモンスターに声をかけると、モンスターは大きな口をゆっくりと動かす。
「ナウン……ナウン……が、ホしい……」
それだけ言うと、モンスターは血反吐を流しながら静かに瞼を降ろしていく。
そして、ピクとも動かなくなった。
「……最後の最後まで、ナウンか」
老人はため息をつきながら横を向き、壊れたガラス容器の中にいる幼い『彼』を見た。
「お前、年はいくつになるんだ?」
「……よんさい」
彼は、小さな指を四本立てて老人に見せた。
「でね、でね、ぼくの番号はね……」
何かを伝えようとした彼を、老人はひょいと小脇に抱きかかえる。
「お前に、人生という名の『歌』を教えよう。そして、死に逆襲する『詩』を与えよう」
そう言って、老人はガラス片が広がった床をギシリと踏みしめた。
「だから、これから何があっても、生きぬいてみよ」
そう伝えると、幼い彼は首をかしげた。
「ねぇ、おじいちゃん、お母さんは何処に行ったの?」
「お母さん? ……そうか、あの女にも母性はあるのだな」
死に絶えたメスのモンスターを振り返ってから、老人は王宮に向かって歩き出した。
それから、十三年後……。
助け出された『彼――アベル』の未来を掴む物語が開始される。
1章からは、ぐんっとラブコメになります!
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