表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/47

本日もう1話投稿予定です。

高校1年生の6月、ママが再婚したいと私に打ち明けた。

パパが亡くなったのは、私が小学校6年生の時だ。

あれから、もう4年も経つ。

この4年間、女手一つで私を育ててくれたママの再婚に反対する気はなかった。


問題は、再婚相手の連れ子だ。

私より1つ年下の中学3年生の男の子だった。


「成績も良いし、とっても良い子よ」

母は、一足先に彼に会っているようだった。

私もその段階で、再婚相手の方とは何度か会っていた。

ママが再婚を考えて私に会わせていたのは、どんなに鈍くても気付く。

後は、私と彼が顔合わせをするだけだった。


1学期の期末試験が終わった週末、私はママに連れられ、再婚相手の家を訪れた。

200坪は有りそうな、庭付きの戸建住宅だった。

ガレージには高そうな車が2台あった。

1台はセダンで1台はワゴンだ。

2Kのボロアパートに住んでいる私達には、信じられない生活水準が伺えた。


私が呆気に取られていると、心の準備をする間もなく、ママがインターホンを押してしまった。

出迎えてくれたのは、連れ子の男の子だった。

玄関に入ると、新しいスリッパを用意してくれていた。

私達にとても気を遣ってくれている事は間違いない。


リビングに通されると、またしても圧倒される。

広い!

リビングだけで、私達が暮らしているアパート1世帯分より広い。

連れ子の彼に促されてソファに座ると、早速挨拶してくれた。


「初めまして、小鳥遊(タカナシ) 謙介(ケンスケ)の長男で流生(ルイ)と言います。宜しく、義姉(ねえ)さん、で良いのかな?」


少し照れながら私を姉さんと呼ぶ彼は、華奢な感じの中性的な顔立ちの男の子だった。

私の苦手なオラオラ系やウェイ系ではないようで、一先ず安心した。


「初めまして、浅沼(アサヌマ) 麻里(マリ)の長女の(リン)です。宜しくね、義弟(おとうと)君?」

「義弟君は変ですよ。流生で良いです」

「じゃあ、私も凛で良いわ」


私達親子を迎える為、身なりを整えて待っていてくれたのだろう。

流生には清潔感があり、生理的な嫌悪感を抱く事はなかった。


「どう、凛?流生君、カッコ良いでしょ?」


母は呑気に言うが、そういう問題ではない。

正直に言えば、ルックスはモロ好みだが、思春期の私には歳の近い流生と暮らす事に抵抗があった。


私の思いは、顔に出てしまっていたのだろう。

流生が私の表情を読み取ったのか、母と私に言った。


「やっぱり、無理がありますよね。取り敢えず、親父と麻里さん、凛さんの3人で暮らしみたらどうですか?俺は暫く友達の家に泊めて貰います。盆休みに一度帰って来ます」

「「「……」」」

「毎日、親父に生存報告はするよ」

「ち、ちょっと待ってよ。君を追い出したい訳じゃ無いのよ」


私は慌てて流生を引き留めようとした。


「凛さん、気にしなくて良いですよ。家出する訳じゃ無いんですから。いきなり新しい生活に俺がいるのは、結構なストレスですよね。一月もすれば、この家にも3人での生活にも、ある程度慣れるでしょ?その頃に戻ってきます」

「…それで私が無理だって言ったら、どうするつもり?」

「高校進学と同時に一人暮らしをします。経済的にも無理な話じゃないですから」

「それなら、私が出て行くべきじゃないの?」

「親父も麻里さんも、凛さんの一人暮らしよりは、俺の一人暮らしの方がマシだと思う筈ですよ」


流生の言う通りだ。

親としては、女の子の一人暮らしの方が心配は大きいだろう。


「流生は、それで良いのか?」


謙介さんも話に加わってきた。


「俺は、親父は再婚した方が良いと思ってる。折角纏まりかけた話なんだ、邪魔はしたくない」

「…それにしても1日2日泊めもらうのとは訳が違うだろ。1ヶ月近くお世話になるなら、その友達の親御さんにも挨拶に行かなきゃならないだろう?」

「そこは心配ない。一人暮らしの大学生のところに行く。ちゃんと生活費さえ入れれば問題ない相手だ」


1ヶ月も泊めてくれる大学生の友達って、流生の交友関係はどうなっているのだろう?

それに謙介さんと流生の関係も、サバサバし過ぎだ。

父親と男の子って、こういうものなの?

私とママは、こんなに割り切れてないよ。


結局、あれよあれよと言う間に話は進み、夏休みに入ると直ぐに私達親子は、小鳥遊家に引越した。

その時には既に、流生の姿はなかった。



流生との同居さえ除けば、私にはママの再婚はメリットしかなかった。

今まで考えた事もない自分の部屋が与えられた上、お小遣いも大幅に増額された。

学校も近くなり、2学期からは通学も楽になる。

何か私だけが得をしたみたいで、流生に申し訳ない気持ちになってしまった。


再婚後もママは、仕事を続ける事にした。

私と流生の事も含め、謙介さんとの再婚生活が上手くいく保証はない。

その場合、ママが無職では私達の生活は立ち行かなくなってしまう。

その時の保険だと、ママは言っている。



夏休みの間は両親が仕事に出ると、昼間は私一人になってしまう。

もし流生が家にいれば、彼と2人きりだった。

こうなる事を見越して、流生は一時的に家を出たのか?

盆休みなら、少なくとも親のどちらかが家にいる。

だから、その頃に帰って来るという事か。

優しそうな子だとは思ったけど、流生は随分と気を遣ってくれたようだ。



お盆休みが近づくと、流生から帰って来ると連絡があったらしい。

それまでの間も、約束通り毎日「生存報告」があった。


『生きてる。心配要らない』


メッセージの文面を見せてもらったが、何とも味気ないメッセージに笑ってしまった。



「ただいま〜」


お盆休みの初日、キャリーバッグを転がした流生が帰ってきた。


「お帰り、ちゃんと宿題やったか?」


謙介さんの言葉に私がドキリとする。


(ヤバい!私、終わってない。ネトゲばかりやってた)


「大丈夫、全部終わってる。模擬試験もちゃんと受けて来た」

「まあ、心配はしてなかったけどな」


(えっ!?流生って優等生だったの?謙介さんも信用し切ってる)


「明日から、TGOのβテストに招待されてるんだ。やる事は終わらせてるよ」

「!」


(嘘ぉ!第1期のクローズドβって()()()()()国内のプレーヤーが3000人だけだったよね。この子も廃人レベルなの?)


TGO(True Genesis Online)

5年以上も前に制作発表が行われた、フルダイブ型のVRMMORPG。

魔物の出現で絶滅しかけた人類が、生存圏を取り戻すと言うベタな設定だが、ゲーム史上最大の製作費が注ぎ込まれたと言われている大作だ。

全世界のゲーマーがリリースを心待ちにしているビッグタイトルだ。


αテストが終わり、遂にβテストが始まる。

予定されているβテストも3期に分かれると言う。


第1期は、他のVRMMOで実績のある国内のプレーヤーを3000人招待してのテスト。

第2期は、海外からもテスターを募集しての大規模なテストになるらしい。

第3期は、オープンβで、誰でも参加出来る。

プレーヤーのレベルや経験値は1回毎にリセットされ、本サービス前にもリセットされる。



「私もTGOのβに招待されてるの!」


私は流生の言葉に食いついた。


「一緒にやります?」


流生も一瞬驚いたような顔をしたが、直ぐに嬉しそうな表情に変わった。


(あ、可愛い)


この子、こんな子供っぽい顔もするんだ?

私も流生と仲良くなれる気がして来た。


「うん。一緒にやろう」


一歩どころか、一気に流生との距離が縮まった。

お読みいただき有難うございます。

ブックマーク、☆を頂けると励みになります。


☆をポチッとお願いします(>人<;)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ