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お泊まり

通路を抜けると、私達はアシナさんの家の客間にポップした。

私は大事な事を2つ思い出した。


ここには1組しか布団がなかった事。

ホームウェアやパジャマなどのアイテムを持っていない事。


「流生、寝間着どうしようか?」

「取り敢えず、上だけ脱ごうか?」

「そうだね」


私はローブを装備から外し、流生はコートを外した。

装備を外した私達は、トレーニングウェアの様なインナーだけの姿になった。


「布団1つしかないけど、一緒で良いよね?」

「凛が嫌じゃなきゃ、おれは構わないよ」

「…、い、嫌じゃない。一緒に寝よう」


2人で照れ合いながら、同じ布団に入った。


「流生、腕枕して」

「……」


流生は黙って、左腕を私の方に伸ばしてくれた。

私はその腕に頭を乗せ、流生の首に顔を埋める。


スンスン


「あ、本物の流生と同じ匂いに変わった」

「本当に?」

「うん、流生も試して」


スンスン


「本当だ」

「不思議ね」

「そう言えば、この手のゲームって、セクハラ防止機能あるはずだよね?」

「普通はあるわよ。って言うか、それ無いと規制に引っ掛かるんじゃなかったっけ?」

「何で俺達、お互いに触れるんだ?凛、例外設定した?」

「してないよ。流生もしてないの?」

「してない」

『私がしました』


突然、ウィンディが現れた。


『カリンちゃんと彼氏さんは最初からラブラブだったので、相互に例外設定しておきました』

「「……」」


(流生となら問題無いけど、運営がそんな事しちゃダメでしょ?!)


『それと、例外設定し合った15歳以上のプレイヤーは、匂いだけでなく、スキンシップも現実(リアル)の感触を再現します』

「「どう言う事?」」

『ご想像の通りです。肌の感触も体温も記憶に紐付いて再現されます。TGO内で、カリンちゃんのおっぱいを感じられるのは彼氏さんだけって事です』

「「……」」

『残念ながら、記憶に紐付けても、エッチは出来ませんよ』

「しょんな記憶は、ありましぇん!」


(もう、なんて事言うのよ!焦って、噛んじゃったじゃない)


『それでは、お邪魔虫は退散しますね。ごゆっくり〜』


気不味くなった私達を残して、ウィンディは消えてしまった。

一度現れてから消えると、2人きりになった事を余計に意識させられる。

流生の感触と匂いで、ドキドキする。


「ねぇ、流生は私の匂い、嫌じゃない?」

「えっ?!嫌じゃないよ。凄く良い匂いだよ…」

「あ、ありがとう。私も流生の匂い、好き」

「……」

「良い匂いって感じる相手とは、遺伝子レベルで相性が良いって聞いたことある?」

「生まれて来る子供の免疫力の話だろ?両親のHLA遺伝子の構造が違う程、子供の免疫力が強くなるって言われてるね。本能的にそう言った相手を良い匂いって感じるって説がある」

「私と流生って、相性良いのかな?」

「う〜ん、匂いの話は置いといて、俺は凛といると楽しいよ」

「…私も楽しい」

「凛が引越して来た時、一月も外泊してたの勿体無かったかな?」

「確かに惜しい気もする。でも、流生が私に気を遣ってくれるの分かったし、優しい子だって思えたよ」

「…そうか、…」


話をしていると、だんだん流生の反応が鈍くなって来た。

何時の間にか返事がなくなり、寝息が聞こえて来た。


「おやすみ、流生」


流生の寝息を聞いていると、私も瞼が重くなって来た。

そのまま流生に身体を預け、眠りに落ちた。


〜〜〜〜〜


「う〜ん」

眩しさで目を覚ますと、凛の顔が至近距離にあった。

左腕に乗せられた頭と、身体の上に半分被さった、凛の重みが心地良い。

少しづつ、思考がクリアになって来る。


(あ、昨日VR(こっち)で一緒に寝たんだっけ?)


暫く凛の寝顔を眺めていると、彼女の目も薄っすらと開いてきた。

目が覚めるまで、もう少しかかりそうだ。

そのまま待っていると、凛が驚いた様に目を開き、物凄い勢いで俺に背を向けた。


「み、見た?」

「何を?」

「か、顔、私の寝顔見た?」

「うん、可愛かった」

「もう、見てないで起こしてよ!」


凛が頭まで布団に潜ってしまった。


「ごめん、気持ち良さそうに寝てたから」

「う、ぅう、恥ずかしい」


布団の中から、くぐもった声が聞こえてくる。


「恥ずかしくないよ、可愛かったよ」

『そうですよ、バッチリ映像も残ってますよ』


ウィンディの声に反応して、凛がガバっと布団から飛び出した。


「ウィンディ!?」

『はーい♪ おはようございます』

「「おはよう」」

『それでは様式美に則り、朝の一言です』

「それ、やらなくて良いから」

『いえいえ、NPCの嗜みですから』

「お前、宿屋の親父じゃないだろ?」


止めて聞くようなAIじゃないよな。


『夕べはお楽しみでしたね』


心底楽しそうな顔で、ウィンディがお約束の台詞を吐いた。


「ウィンディ、一旦ログアウトして、朝メシ食って来るよ」

『はい、いってらっしゃい。朝食も彼氏さんの手作りですか?』

「卵とベーコン焼いて、野菜を千切るだけだよ」

『だそうですよ。それでも、カリンちゃんは嬉しいですよね?』

「…嬉しいわよ。悪い?」

『いえいえ、素直なのは良い事です』

「じゃあ、行くぞ」


ログアウトすると、凛は部屋着のワンピースに着替えた。

俺は面倒だったので、甚平のままだ。

食パンとクロワッサンをオーブントースターで焼いてる間に、ベーコンエッグを作る。

凛が自分の紅茶と俺のコーヒーを準備する。


「流生、今日はどうするの?」

「ボスを攻略しに行った連中に合流しようと思う」

「もう、アムダスの南には何もないって事?」

「それは分からないけど、当面の武器の目処は立ったし、天叢雲剣を手に入れるまでイズモモ周辺を嗅ぎ回られたくない。シレッと他の連中に合流しよう」

「そうだね。余りユニークアイテムを独占しても、妬まれそうだしね」

「ああ、俺は天羽々斬は装備しない。八岐大蛇のイベントに気付くヤツがいるかも知れないからな」

「私もあの杖、使わない方が良い?」

「そうだな。ショウアサとケシシの畑も、まだ隠しておいた方が良いかな」

「分かった、最初の杖使うね」


簡単な打合せを終え、俺達はまたログインした。

アシナとテナに2ヶ月後、また来る事を伝え、一度アムダスの街に戻った。

アムダスに戻って得られた情報は3つ。


1.最初のダンジョン攻略は難航しており、ボス部屋までのマッピングが終わってない事。

2.パーティメンバーの誰か1人のログイン時間が24時間を超えると、1パーティに1軒、プレヤーハウスが支給される事。

3.明日の夜、アムダスで花火大会が行われる事。


2,3に関しては放って置いても、ウィンディから知らされる予定の情報だった。


「流生、私達もダンジョンに行く?」

「そうだな、取り敢えず、北の街に行ってみよう。プレーヤーハウスをアムダスか北の街のどちらに建てるか下調べもしたいしな」


ウィンディの説明よると、プレーヤーハウスは

宿屋と同じで、そこで休むとHPとMPが全回復する。

パーティー毎のインスタンスエリアになっており、パーティーメンバーと許可されたプレーヤー以外入れない。

ストレージに入り切らなくなったアイテムを保管できる。

特殊な魔石を使って、アイテムをダンジョン等から転送出来る。

初期の広さはパーティーメンバーの人数に依存するが、有料(ゲーム内通貨)で拡張出来る。

攻略が進み拠点を変えたい時は、有料で移設出来る。

ざっとこんな感じだ。


俺達がアムダスの北門に向かうと、ゴエモンさんにバッタリ会った。


「ルイス、何処行ってたんだ?探してたんだ」

「南の森でレベリングしてましたよ。どうかしました?」


八岐大蛇のイベントや薬草の畑については黙っていた。


「デュッヘルンって北の街の近くにあるダンジョンの第3層の中ボス攻略が難航してる」

「ああ、それでマッピングが進んでないんですね」

「そうだ、お前らも手伝ってくれ」

「中ボスってどんなヤツですか?」


これだけ歴戦のプレイヤーが揃っていて中ボスに苦戦するようじゃ、明らかなレベル不足だろ?

βテストの期間は短いから、みんな焦ってるんじゃないか。


「ケルベロスだ。物理攻撃しかしてこないんだが、再生能力が厄介だ。頭が一つでも残っていると、直ぐに全回復しやがる」

「取り囲んで、タコ殴りすれば良いんじゃないですか?」

「試してみたが、再生が早過ぎて削りきれないんだ」

「何か攻略方法がありそうですね」

「兎に角、来てくれ」


ゴエモンさんの後に続き、北の草原を抜ける。

途中で、ミツバチによく似た蜂が沢山飛んでいた。


「あっ!」

「流生、どうしたの?」

「ケルベロスの攻略方法、分かったかも」

お読みいただい有難うございます。

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