1-7 厳しすぎませんか
なぜ、こうなった。稲山神、溜息。狛犬、お手上げ。隠り世の裁きは明快。準備に抜かりはない。証拠も証言も、揃っている。逃げられない。
裁判当日。隠り世、西の奉行所、第五白洲。傍聴席は満席。急遽、整理券が配られることに。
「妖狐、コンです。」
小妖怪です。小火ですみました。本当に良かった。深く反省しています。もう、しません。神に誓います。
出るわ出るわ。動かぬ証拠、大行進。
「沙汰を言い渡す。浄化。」← つまり、死刑。
ガァァン。コンガリさせただけなのに。厳しすぎませんか、お奉行。
「判決理由。役所を狙うなど、不届き千万。隠り世権力に対する冒涜である。何より、多くの妖怪がいる場所に付け火など、極刑に処する他ない。よって、浄化とする。」
なぜ、こうなった。暗黒一覧表に載るわ、神使は紙面を賑わすわ。おまけに週刊誌まで。
隠り世。奉行所および代官所、食堂。
「こんな求妖広告、誰も応募しないでしょう。」
「見た、見た。暗黒求妖。」
『遣り甲斐のある仕事です。ヤル気次第で、給与増額。家庭的な職場です。初心者歓迎。』
賃金、労働時間、その他労働条件を書面などで明示しなければならない。これ、隠り世界の常識です。当然、応募する妖怪なんて、一妖もいません。
三か月後。人間界、稲山社。
「応募妖怪、零?なぜだ。」
「わかりません。こんなに素晴らしい求妖なのに。」
「求鬼広告、出すか。」
日本地獄および鬼が島。
「こんな求鬼広告、誰も応募しないだろう。」
「見た、見た。暗黒求鬼。」
『遣り甲斐のある仕事です。ヤル気次第で、給与増額。家庭的な職場です。初心者歓迎。』
賃金、労働時間、その他労働条件を書面などで明示しなければならない。日本地獄でも、鬼が島でも、常識です。応募する鬼なんて、一鬼もいません。
三か月後。人間界、稲山社。
「応募鬼、零?なぜだ。」
「わかりません。こんなに素晴らしい求鬼なのに。」
「仕方ない、求人広告を出そう。」
求人を出して、すぐ。
「き、来ました。応募者多数!選びたい放題です。」
「そうか。人は良いなぁ。」
良くない!