1-6 法令順守
「訴えるなら、奉行所です。」
代官所人事課長、仁。参上。
「法令遵守、大切ですよ。神社でも、ね。」
訴えられますよ。24時間勤務、休みなし。黒すぎますよ、真っ黒。妖怪でも倒れます。
狛犬の白さん、話が違います。どうなっているんですか。
雇用条件を。え、守る気ない。そうですか。代官所に戻します。当然です。代官所員ですから。
困る。何がでしょう。
「さ、桜は。社に必要なんだ。」
「そうですか。」
「だから、代官所には返さない。」
いやいや、何を言っているのですか。説明しましたよね。優秀、そうですよ。それが何か。
いえ、ですから。困る? こちらも困ります。
「派遣なんて、いくらでもいるだろう。」
「皆、正式採用です。」
御家騒動を思い出します。こんな感じでしたね。何を言っても理解されない。筆頭家老よりヒドイ。
桜さん、申し訳ない。ここまでとは思いませんでした。約束通り、戻します。更生課へ。
「仕方無い。諦めよう。他の」
「お断りします。」
「な、なぜだ。」
「法令遵守しない職場には、出向させられません。」
悪代官もビックリですよ。山吹色の御菓子? 受け取りません。断固拒否します。
そんな余裕はない。失礼しました。ちなみに、堅物ですよ。うちの代官。
「失礼します。」
斯く斯く然然。
「至急、辞令書を作成するように。」
キリッ。
稲山社、暗黒一覧表に載りました。日本全国の代官所に周知徹底。何かあれば、奉行所が動きます。
「隠り世ぉ良いぃトコ、一度はぁあ、おいで♪」
いけない、仁。勧誘なんて。
「人事部長、大変です。」
「何ですか、騒々しい。」
もしかすると、とは思いました。思いましたが・・・・・・役所を狙うとは。
「桜さん、大変ですよ。」
「楓さん、おはよう。」
「おはよう。はい、朝刊。」
『妖狐、付け火で御用』
一面を飾るとは。いくら目立ちたがり屋でも、これは無いわぁ。