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ランダムお題:「優しすぎる人、ずっと一緒、月明かりに惹かれて」時間:15分

作者: むうちゃ

月明かりに惹かれるように、僕達は出会った。


それは必然――あるいは、予定調和だったのかもしれない。


横に立つ彼女が、クスクスと楽しそうに笑う。


「あなたはいつも私の側にいてくれるのね」

「当たり前じゃないか。君は僕が愛した唯一の人なんだから」

「そう……。ふふ、やっぱりあなたは優しすぎるわ」


僕の脳裏にはあの日のことが、さっき起きた出来事のように再生される。


月の光を受けて、煌々と輝く昏い水面――。


潮の匂いを含んだ風で揺れる黒くて長い髪――。


夜の明かりに照らされて、黒い宝石のように光る二つの瞳――。


思えばあの日から今日まで、彼女はここではないどこか遠くを見ていた気がする。


「さあ、行きましょう?」

「……ああ」


彼女が細くて白い腕をこちらに差し出す。

僕はその手を掴む。仄かな温かさと柔らかな指が、生を実感させた。


手を繋いで歩き出す。


一歩、また一歩と足を進めていく。


傍から見るとその姿はまるで、

バージンロードを歩く新郎新婦のように思えた。


「どうしたの?」

「いや、なんだか結婚式みたいに思えてさ」

「あぁ……ふふっ、そうね。私達にとって、お誂え向きかもしれないわ」

「じゃああそこにある、お月様が神父様ってところかしら?」

「ははっ、そうだね」


すでに下半身は波に飲まれていた。

海と自身が一体になっていくようで、どこか心地よさを感じた。


どんどん深さが増していく。すぐに足がつかなくなるだろう。

波音が大きくなり、会話をするのさえままならなくなる。


胸、首、顎と順番に呑み込まれていく。

僕はゆっくりと目を閉じ、最後に彼女に伝えた。


「ありがとう――」

「感謝する必要ないわ。だって――」

「これからずっと一緒だもの」


彼女が楽しそうに言った声を最後に、意識は海の底へと落ちていった。

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