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砲《ラキエータ》  作者: 鯛と琴
プロローグ
2/17

ソーラクトゥリー

「瑛太様、瑛太様。起きてくださいませ」


 柔らかな、女性の声。


「…誰?」


 記憶を探る。確か、僕は、腕を切り落とされたはずだ。生きていることすら信じられない。

 目を開けると、狭苦しい穴ぐらの中に僕はいた。

 メカメカしい棺桶のような箱から吐き出された僕は、声の主を探す。


「おはようございます、瑛太様。わたくし、義手型魔術デバイスの『ソーラクトゥリー』と申しますわ」


 慌てて自分の左腕を見る。聞こえた通り、僕の腕は義手になっていて、この声はその義手から発せられているようだった。

 しかも魔術だとか、現実ではまず聞かない単語も混ざっている。頭の整理が追いつかない。


「えっと……すみません、状況がよく理解できないんですけど…」


「ああ、はい。瑛太様は眠っておられましたので、知らないことも多いでしょう。簡単に説明させて頂きますわ」


 そう言うと、義手は魔術についての説明を始めた。

 聞くと、魔術とは、大気中に存在する『フォトン』という物をエネルギーとして利用する術のことを言うらしい。

 そして、フォトンを吸収、変換することでエネルギーを生み出すのに使われるのが魔術デバイス。


「わかったようなわからないような…」


「実際に使うときにまたご説明いたしますわ」


「はあ…それより、ここはどこなんですか」


 そう、今は魔術の話よりも、自分がどういう状況に置かれてるかが知りたいのだ。

 なにぶん魔術だとかが存在する世界だ。危険な場所でもおかしくはない。


「……それはわたくしにもわかりません。この穴は、動物の巣穴だとは思いますが」


「わからないんですか!?」


 明らかオーバーテクノロジーといった風貌なのに、マッピング機能すらついてないのか。

 落胆すると、なんだか混乱していた頭も落ち着いてきた。


 ともかくここから出よう。動物の巣穴を荒らしたとなれば後が怖い。

 穴から這い出ると、まず目前に映るのは池。それも、筆を洗った後の筆洗みたいなパステルカラーの蒼い池だ。

 そして、それを取り囲む無数の大自然。あまりにも美しく、そして絶望的な光景だった。

 困難に直面してようやく、現実感が増してきた。心なしか義手も重くなった気がする。


 これが僕でなければ──あるいは吾妻であったなら──魔術の世界の未知なる冒険に胸を躍らせていただろう。

 だが僕は、この状況を受け入れられるほど物事を簡単に考えられなかった。


「瑛太様。気を落とさないでください。貴方は一人ではありませんよ」


「元はと言えば、君が地図の一つもわからないから困ってるんじゃないか…」


「……? わたくしは義手でございますわ。人を助けることはあっても寄り添うことはできませんの。そうではなく、()()()()()()()()()のですわ」


 彼女がそう言うと、背中の方から気配を感じた。他に人が居るのかとも思ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。


 振り返ると、巨大なコアラのような生き物が、のそのそと巣穴から出てきていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

ようやく瑛太たちの冒険が始まりました。


この作品では、私が創作した生物がたくさん出てきます。

次回からの後書きでは、この作品に出てくる生物を紹介していきたいと思います。

よければお付き合いください。

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