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第二話 魔法試験と使い魔召喚

 この国では8歳を迎えた子供は皆、魔力属性の適正をはかる魔力試験と使い魔召喚の儀を受けることが規則として定められている。

今年はシルフィアもそのうちの一人だ。

 生まれてすぐに魔力量鑑定はされていて、その数値は高ければ高いほど優秀だとされている。

そんな中でも公爵家の娘ということもあってか、シルフィアの数値は王家に並ぶほど高かった。

貴族内では割と有名な話で、中には妬みを持っている者もいることは理解していたつもりだ。

しかし予想よりも遙かに多くの悪意ある視線が、会場に入ったシルフィアに向けられ、顔には公爵令嬢として正しい表情を貼り付けたまま、随分と広範囲で広まってしまったのだと心で眉を寄せる。

思わず穏便にこの試験が終わることを願わずにはいられなかった。


 ある程度視線が外れた後も、こちらに向かう気配が多く正直居心地が悪さは残る。

(息が詰まるって、こういうことなのですね……)

吐き出してしまいたい息を押し込めるように、冷静な表情を崩さず姿勢を正した時だった。

後ろから凄い勢いでタックルでの抱擁を受け、しかしすんでの所で耐えきれたのは、これまで練習してきた公爵令嬢としてのマナーや基礎の基板がしっかりとしていたが故であろう。

ひそかに痛みに耐えていると、目の前に茶色のふんわりとした髪が揺れた。

くりくりの澄んだ黄色の瞳をこちらに向けながら、友人の一人であるリタ・アルベスは再度正面からシルフィアに抱きつく。

「シルフィア様、ごきげんよう。今日こそはお茶ご一緒くださいますわよね?」

上目遣いに潤んだ瞳で小首を傾げるトリプルコンボは実にあざといながら、その可愛らしい容姿と相まって嫌味をまったく感じさせないのだからずるいと、どこか的外れなことを考える。

言い終わるのと同時に背に回された腕にぎゅっと力が入ったのを感じて、ひくつきそうになる頬に笑みを湛えることで必死に押さえ込んだ。

「……喜んで。その代わりというわけではありませんが、そろそろ離していただけませんでしょうか」

小柄で可愛らしい容姿に似合わず力の強い彼女の抱擁は、時間が経てば経つほど感情が高ぶりび比例して痛みを伴うのは半年前に経験済み。

何より、これ以上目立つのは正直避けたいところだ。先ほど感じていた視線が一気に倍増している。

――リタとお近づきになりたい男子の妬みの視線が。




「リタ様、あまりシルフィア様に迷惑をかけるものではありません」

ゆっくりとした動作で近づいてきたもう一人の友人ダリア・ドゥーロンに諭され、リタが頬を膨らまし不満の声を上げながらこちらを見上げる。

シルフィアがリタにだけ分かる程度で少し困ったように眉を寄せて微笑めば、仕方ないと口をへの字に曲げながらも素早くその身を離した。

ごきげんようと挨拶をダリアとも交わし、試験の後にいくお店の検討をしようとリタがはしゃぎだした瞬間。

普通の声量ながら確かに響く声が、騒がしかった会場を一瞬にして静める。

「……静粛に。これより試験を開始いたします」

試験官によって開始の合図がなされると、先ほどまでのイヤと言うほど感じていた視線は綺麗さっぱり消え去った。


 一人ずつ名前を呼ばれ、その度に会場がそのものの持つ属性の色に染まっていく様を眺めながら、私達は少しの期待を胸に抱いて。

ただその時を待っていただけだったのに……。

H31,3/26(火) ダリア、ファーストネーム追加。

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