その剣をもって示せ 1
「衛兵! 我が国に必要な人間は誰か、その剣をもって示せ!」
王城、謁見の間にて、鋭い声が響き渡った。
まだ若さの残る麗らかな女性の声であったが、多分に険を含んだ声音である。
「な、何を言っている!!」
老齢に差し掛かろうという男性が怒気を露わにして反駁してくる。
この赫怒した壮年が己の父だと、イーヴァティアは思いたくなかった。
「グランザ! ディレムス! ツァジア! イシタリス! ギルミア! デシュルク! オティパラ! バーヴェル!」
この場にいる八人の衛兵の名を呼べば、即座に八人の衛兵達は固まった体を動かし始めたが、困惑の表情を見せた。
それも致し方ないのかもしれない。
無能にして害悪とはいえ王族を選ぶか、有能ではあるが未だ王太子妃の小娘を選ぶかの二択である。
なお、王妃、及び側妃は死別して久しく、この国で国母といえば既にイーヴァティアを指すと言ってよい。
「勇敢にして聡明なる衛兵達よ! 我が国に害を成す王であるガルシア陛下、及びその親族を一人残らず切り捨てよ! できぬならば我が首を刎ねよ!」
いつまでも困惑から脱せない衛兵達にいらつき、イーヴァティアは決断を迫る言葉を投げつけた。
「まっ! 待て!!」
「黙れデルドラ候!!!」
発言は許さぬと鬼気迫る声音でイーヴァティアは己が父の発言をかき消した。
「いざ! いざいざいざ!! その剣をもって我が国の行く末を示せ!!」
喉から血が出んばかりの大音声であった。
それ程までにこの娘、イーヴァティアは追い詰められていた、とも言える。
「あい解った!」
そして、ここまで言われて決断できないような者は衛兵には存在しない。否、存在してはならない。
それが国の誇りというものである。
衛兵の長にして、武門の二大巨頭の片割れたるグランザ・ジャダードルは腰に刷いた剣をスラリと抜き放ち、目にも留まらぬ速さでもって目標へと近づき、一閃にて首を刎ねた。
「おみごと!」
その言を発したのは誰であるのか、混沌としたこの場でそれを確かめる者はいなかった。