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冒険者

叡嗣はギークに連れられ村の中心の広場に向かって歩く。

2人の歩みはゆっくりとしたものだったが、村人たちの様子は慌ただしいこと極まりなかった。

一歩歩くたびにガチャガチャとポーションの瓶が触れ合い、音が響く。

腰に吊った剣の慣れない重さに少し緊張しながら、叡嗣はギークの話を聞いた。


「ゴブリンはさっき話したほかにも特徴があります。まず、ゴブリンが嫌われる一番の理由である特徴、それが異種族のものでも孕ませることができるというものです」

「異種族……というと」

「人間です。その生態故かゴブリンは女性を拐います。さらに、ゴブリン自体の数も非常に多い。繁殖力が異常なほどに高いんです。恐らくですが、モンスターとしては弱い部類ですので、種を残すための本能のようなものなのでしょう」


よく知ったといえば語弊があるかも知れないが、よくある物語での設定と同じようなその生態を聞き少し驚く。

だが、たしかに弱いのならば数を増やさなければ生き残れないというのは理にかなった話なのかもしれないと納得もする。


「それと、ゴブリンはなんというか、種類が多いんです」

「種類が?」

「種族という点ではゴブリンなのですが、カースト……というのは違うかもしれませんが、様々な職業というべきものが存在しているんです」


兵士、戦士、魔術士、祈祷師、隊長、将軍(ジェネラル)、そして王。

これ以外にも色々な種類が目撃されているらしい。


「強さも変わってきます。兵士より戦士が、戦士より隊長がといった具合に。経験を重ねるごとに進化のようなものをしているのではないかとも言われていますね」

「そういうのって、見た目でわかるものなんですか?」

「ある程度は。通説では位階が上がるごとに良い装備をしていると言われていますね。ですが、確実ではないです。確実に知るのなら、【鑑定】スキル持ちが必要です」


【鑑定スキル】。

人や物を鑑定するスキルであり、そのレベルによって見られる情報にも差異がある。もしレベル1でもモンスター相手なら名前程度は見れるとギークは説明した。


「さて、着きましたね。さあ、エイジくん。私達も作戦会議に混ざりましょうか」













「おお、ギーク先生!準備は終わりましたか」


叡嗣とギークが近付くと、今まで見てきたような村人よりも少し上等な服を来た痩せた中年の男性が声を掛けてきた。


「ええ、村長。彼のお陰で少し楽に終わりました」

「おや、彼は……?」


ギークの目線に釣られ、村長と呼ばれた男性が叡嗣を見る。

ジロジロと上から下へ行く無遠慮な視線に晒され、少し居心地が悪くなりながら、身じろぎする。


「つい昨日この村についた昔の友人の息子さんで、冒険者志望のエイジくんです。まだ若いですが、剣術スキルも持っていて、有望な子です。今回の騒動にも手を貸してくれるそうです」

「おお、ギーク先生がそう仰るなら間違いはありませんな。私はこの村の村長ギャリと言う。よろしく頼みますぞ、少年!」

「叡嗣です。こちらこそよろしくお願いします」


ギークの説明を聞いて幾分か視線が弱まったのを感じ、叡嗣は安堵する。あのようにジロジロと見られるのはあまり落ち着かない。

それに、村長自体も見知らぬ顔があったから少し警戒しただけで、ギークから説明を受けると、コロリと人の良さそうな笑顔で叡嗣に手を出し、握手を求めてきた。

それに応じながら、「なんでこんな嘘を」という気持ちを込めてチラリとギークを見ればパチリとウィンクをしてくる。

どうだい?とでも言いたそうな雰囲気に叡嗣はなにか言う気分では無くなってしまった。


「それで、村長。詳しい話をしてもらってよろしいですか?」

「ええ、勿論。発端は先生もご存知の通り、狩人のジャナフの報告からですな」

「たしか、村近くの森にゴブリンが集まっていて、狩りから急いで帰ってきたと」

「そのとおり。昨日の夜から罠を張ってイノシシを狩ろうとしていたようですが、ゴブリンが今日の夜明けごろに村の方に向かって歩き出すのを確認して急いで帰ってきたそうですな」


村近くの森、というのは叡嗣も知っている。

昨日の夜、ギークが簡単な地図を書きながらこの周囲の地形を説明してくれた。丁度叡嗣の来た方向の真反対側で村から30分ほど行ったところに森の端がくるそうだ。


「なら、ジャナフさんがゴブリンを見つけてから……既に1時間は経っていますね。まずいかもしれないです」

「まずいというのはやはり?」

「どれだけのスピードかによりますが、かなり近付いている可能性が高いです。しかし、我々はまだ殆ど準備ができていません。冒険者の方々は?」

「一応、アガットさんの許可を得て、村から報酬を払うということで雇うことはできました。そろそろ準備を済ませてここに……来たようですな」


今度は村長に釣られるように、叡嗣とギークの目線が動く。

その先には、4人の男女が歩いてくる姿があった。


剣を帯びた茶髪の男。昨日、この広場で剣を振っていた男だ。

弓を背に、矢筒を腰辺りに着けた金髪の女性。

白髪頭の錫杖のようなものを持った男性。

白というよりは銀色といったほうがしっくりくる髪、身の丈ほどもある木の杖を持った紺色のローブを着た少女。


「エイジくん。彼らがこの村によく来る冒険者の方々です。右からガイさん、カミラさん、ローマンさん、ルシエラさんです。皆、第8級冒険者──通称鉄等級(アイアンクラス)の冒険者です」


ギークが小声で説明する。

第8級冒険者。全部で12等級ある冒険者の中で1人前とされる等級だ。


「村長さん、俺達の準備は終わりました」

「おお、そうですか。なら、すぐに移動しましょう」

「待ってください。村長、ジャナフさんはゴブリンの種類についてなにか言っていませんでしたか?」


冒険者達が到着したのを確認し、移動しようとした村長にギークが待ったをかけた。

ゴブリンの種類。先程、叡嗣に説明してくれたものだ。


「そうですな……細かくはわからないようですが、騎兵(ライダー)戦士(ウォリアー)が居たとは言っておりました。詳しくは向こうでジャナフ本人に聞くといいでしょう」

「わかりました。では……」

「ええ、今度こそ移動しましょう」



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