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君のお◯んこを舐めたい

作者: シーズ

一世一代の勝負所、決して失敗出来ない場面だったのに、馬鹿でどうしようもない僕は取り返しのつかない事をしてしまった。


「君のお◯んこを舐めたい」


それが、勇気を振り絞り告白に漕ぎ着けた僕の口から吐き出た言葉だった。



何処にでもあるような公立高校に通う、何処にでもいそうな男子学生。

それが僕であり、それ以上でもそれ以下でもない。

それなりに友人がいて、それなりに楽しい日常を送る、そんなごく普通の少年である。

しかし、ありふれた日常の中に、最近刺激的な衝撃が走っていた。

そう、僕は恋をしているのだ。一目惚れだった。

彼女は同じ予備校に通っていて、僕が自販機の前で財布の中身をぶちまけてあたふたしている時に救いの手を差し伸べてくれた、例えるならば天使のような少女なのである。

その時に向けられた太平洋も干からびるような眩しすぎる笑顔に僕は首ったけ、という次第である。


僕はどうしても彼女の事が気になってしょうがなく、ついに行動を起こした。

男なら当たって砕けろ、とりあえずラインのIDを聞いてみよう、と無謀にも勇気を振り絞り、挑戦する。自販機前でばったり会ったふりをし、今度お礼をしたいから連絡取り合おうぜ☆という感じにはっちゃけてしまったわけである。

後から考えてみると小銭を拾われただけでお礼を施すというのもおかしい話ではあるが、初めての恋慕に浮かれきってしまっていた僕に、正常な思考判断ができるわけがなかった。


意外にも、彼女はokサインを出し、無事に僕はラインIDをゲットすることに成功する。

僕はおもちゃを与えられた子供のように狂喜乱舞し終いには土下座までしてしまったのだが、大海原のように心の広い彼女は、慈愛の深い微笑みを返すのである。

僕はそのとき両親を愛し、神を愛し、万物を愛した。


何度かライン上で会話を交わし、僕は彼女が僕に対してどんなふうに感じているかの感触を確かめる。

彼女に最大限にへりくだり、信仰し、慈愛を求める僕に対し、彼女は下らないと一蹴するのではなく、どこまでも真摯に返答をしてくれるのである。

僕は涙を流し枕を濡らし親に心配された。

そして、運命の刻が眼前まで迫る。


僕は貯金していた端金をあるだけ用意し、その日を迎えた。

予定では巷で人気の映画を一緒に見た後、ショッピングに勤しみ、そして最後にドッカーンと告白をすることになっている。

何もトラブルが起こらないように八百万の神に祈り倒し、審判の時を待った。


僕が到着した時刻(1時間前)のなんと5分後に彼女は到着した。

彼女はごめんね待たせないように早く来ようと思ったんだけど……と顔を赤らめて言うので、僕はただ感謝の言葉を何度も連呼することしかできなかった。


彼女とのデートは特に波風が立つわけもなく、順風満帆に進んでいった。

彼女は映画を見て泣き、一緒にショッピングをして笑い、目が合うと微笑んでくれた。

僕はにやけることしかできなかった。

ファストフード店で軽めの食事を済ませ、彼女に大事な話があると打ち明けた。

彼女もまた、僕に大事な話があると打ち明けた。

僕は、これは愛の告白だと確信した。嬉しかった。空も飛べる勢いだった。

そして、運命の刻は来る……。


僕の普段あまり使われない脳の領域をフル回転させ、小粋な告白の言葉をどうにか捻り出そうとする。

落ち着け、落ち着くんだ。

今まで生きてきた16年間の集大成をここで披露するんだ。

さっき見た映画から引用するのは中々粋ではないか。

えぇと……ダメだ題名しか思い出せない。

ずっと浮かれていたししょうがないか、あぁどうしよう。

えぇい、もう全ては時の運だ。俺の感情をすべて曝け出すんだ。


「君のお◯んこを舐めたい!!!」


……アレ。僕は、今何と口走ったんだ。

駄目だ、混乱してしょうがない。よく思い出せ。

おま◯こが何とか言ってたのは気のせいだ。

あぁ気のせいだと言ってくれ……!

しかし現実はあまりにも無情だ、失った時間は取り戻せない、口走った言葉は口内に戻らない。

終わってしまった、全て。

僕は、両親と神と万物を愛せなかった。


「……ごめんなさい! 騙すつもりは無かったの……」


次の瞬間、彼女は顔に手を当て、しゃがみ込み、そして泣き出した。

どういうことだ。理解が追い付かない。

これは、絶望した僕が作り出した幻想か、はたまた走馬灯か。

いや、違う。これは紛れも無い現実だ。

私は頭が真っ白になりついに思考が破綻した。


「ごめんなさい……、私男だったの……、本当にごめんなさい……」


彼女は、泣きながらそういうと、ひらひらとした美しいスカートの裾を持ち上げて、純白の聖域をあらわにした。

僕は目を疑った。

そこには、なんと男なら親しみあるアレがついていたのだ。

僕の頭はまた真っ白になり、脳内はオーバーヒート直前だ。

しかし、今は性別なんて些細なことだどうでもいい。僕は、彼女に、いや彼に伝えなければ行けないことがあるじゃないか。


「……君のお◯んこを舐めたい!!!」


僕はそのとき、無だった。

全ての時間が凍結した気がした。

しかし、僕はすべてを曝け出した。

それ程に、僕は彼に己の腹の内を証明したかった。


「……はい!! よろこんで!!」


そうして、僕と彼との幸せな蜜月がスタートしたのだが、それはまた別の機会に。


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