三海の後悔
三海がこっそり家に入ると、家の中はしんとしていた。誰も三海がいなかったことに気づかなかったのか、もしくは気づかないふりをしてくれているのかもしれない。どちらにせよ、今の三海にはありがたいことだった。
三海は真っ暗な自室に戻り、明りもつけずにベッドに転がる。カーテンを引いていない部屋の中は薄暗い。三海の思考も暗くなる。
「言い過ぎた」
最初に思ったことはそれだった。夜と詩音、とくに詩音に対して言い過ぎたと思う。いくら思っていても、口に出してはいけないことがあることくらい三海だってわかっていたはずなのに。なのに言ってしまった。詩音を傷つけてしまった。
二人の間に入っていけないから苛立っていて、そのことで詩音に八つ当たりをしてしまったのだ。なんと言って謝れば良いのだろう。そもそも謝って許してくれるのか。
「でも、わたし間違ったことは言ってない」
だから謝る必要なんて――いや、なにを考えているのだろう。言ってはいけないことを言って、相手を傷つけたのだから謝らなくてはいけないのだ。
先程の詩音の顔がまぶたに浮かぶ。詩音は、大きな目を涙でいっぱいにして泣いていた。それだけ詩音にとって言われてくないことだったのだと思う。
きちんと明日謝ろう。三海は起き上がって服を着替える。
夜にも言いたいこと、言わなくてはいけないことがある。でもそれより先に、きちんと詩音と話したいと思った。