俺のクラスに転入してきたのが・・・
最近普通に読める系のTSF書いてないと思って、急遽考えたネタを作品にしました。なお当作品はフィクションです。念のため。
pixivにも転載しています。
「今日からこのクラスに編入となる大久野晴樹さんと、大久野スエさんだ」
朝一番の朝会。先生が教室の一番前で、今日からこのクラスに加わる女子生徒たちを、電子黒板に名前を映し出しながら紹介してる。
今年度始まって以来の転入生とあって、皆興味津々。そして、二人が入ってきた途端に男子からは歓喜の声が、女子からは感嘆の声が上がった。
そりゃまあね。入ってきた二人の女子生徒は、見栄えだけなら美少女と言って差し支えない。顔立ちも背丈も、髪型も全く違うけど、整っているのとその体系が出てるところはしっかり出て、引っ込むところはしっかり引っ込んでいるのがブレザーの制服からでもよくわかる。
俺だって初対面だったら、惚れること間違いないよ。そう、背景も知らずに初対面だったらね。
晴樹と呼ばれた長身の少女は、少しうつむき加減で恥ずかしそうにしている。まあ、そうだろうな。対してスエと呼ばれた晴樹さんよりは小柄だけど、彼女はしっかりと前を見据えている。
あ、目が合った・・・そらしておこう。
正直この後の展開が予想できるだけに、面倒くさい。出来れば安穏とした学生生活送りたいんだけどな~
「二人は阿多田の血縁者だ。だから阿多田、後でお前が二人の学校案内しろ」
ガッデム!いきなりか、先生。しかも、二人の席も俺の真後ろだし!謀られた!
そんな俺の内心を知ってか知らずか、挨拶を終えて自分の席に向かう二人は俺に「今日からよろしくね」と素敵な笑顔で言ってきたよ。
「ああ、今日は緊張した」
授業後、俺は二人を案内する。
「全く、晴樹たら。皆から声かけられても、ずっと黙り込んじゃって」
「仕方ないじゃないスエ。やっぱり、その。まだ見られるのに慣れてないっていうか。そ、それに。やっぱりスカートは恥ずかしいし。短くて脚丸出しだし、パンツ見えそうだし、ヒラヒラしてスースーするし・・・」
晴樹がスカートを掴む。
「て爺ちゃん!こんな所でそんなことするな・・・」
途端に俺と爺ちゃんの頭がはたかれる。
「晴樹!女の子なんだからもっと慎み持ちなさい!往来でミニスカを掴むなんてダメじゃない!そして光は爺ちゃんと呼ばない!二人ともあれほど言ったでしょ!!」
「「ごめんなさい」」
俺と爺・・・じゃなくて晴樹は婆・・・じゃなくてスエに頭を下げる。姿形変われど、頭上がらないよ~
そうこの二人、実は俺の母方の曽爺ちゃんと曽婆ちゃんなのである。二人とも実年齢はとっくに80を越えていて、平成どころか昭和の一桁生まれだ。
その二人がどうして、どう見ても10代のピチピチの女学生になってるかと言えば、簡単に説明するとこうだ。
今のこの国は典型的な少子高齢化の真っただ中。生まれてくる子供は少なくなる一方で、老人ばっかりがどんどん増えている。働き盛りの若い人や、その後を担う子供はいないのに、老人ばっかりはたくさん。これじゃあ人口は減る一方で、働き手は不足するし、逆に介護費や医療費は右肩上がり。
政府はその対策に乗り出してるけど、そもそも若い人が少ないのだから抜本的な解決は難しい。仮に対策が進んで子供が増えるにしても、その効果が出るのは10年も20年も先の話。今すぐにでもどうにかしなきゃいけないって言うのに、そんなの待ってられないよね。
移民を入れるって手もあるらしいけど、この国じゃ今までそんなことしたことないから、上手くいくかわからない。
そんな八方塞がりな中で、二つの発明が世界を騒がせた。一つは年齢退行装置。もう一つは性転換装置。
年齢退行装置は、簡単に言えば若返りが出来る機械。つまり、お爺ちゃんやお婆ちゃんを子供にすることも出来る機械。性転換装置は、読んで字の如くで男を女にできる機械。(逆はまだ技術的に難しいらしい)
この装置が発表されてすぐに、政府は少子高齢化対策の新しい政策を発表した。それが老人の若返りを促進することと、さらには希望する人限定で男から女への性転換だった。
老人の若返りは、単純に老人を減らして若い人を増やすっていう一石二鳥を狙った話だね。若返りする時に働く世代まで戻れば、働ける人間が一気に増えるし、それより多少若くても、赤ん坊よりは遥かに早く働けるようになる。
性転換の方も、子供が産める女性の頭数を増やしたかったからだとか。少子高齢化に拍車をかけていたのが、結婚しない人の増加や晩婚化だったし。
論理的にどうよ?ていう話もあったらしいし、国会で殴り合いみたいなこともあったようだけど、結局老人が増えすぎて子供が圧倒的に足りないっていう社会の状況の方が勝って、圧倒的な支持でこの二つの法案は通った。
そして、曽爺ちゃんも曽婆ちゃんも法律の適用を受けて、若返ったってわけ。で、曽爺ちゃんはついでに性転換も受けた。
ちなみに曽爺ちゃんが若返りだけじゃなくて、性転換も受けたのは、受け取れる年金に加算があるからだってさ。
そう、この法律の味噌は若返っても、大学院か大学卒業までは引き続き年金が支払われること。それじゃあお金が出るだけって思えるけど、医療費とか介護費が減るのと、将来的に若返った曽爺ちゃんたちが働いたりして出す税金とかの方が多いらしいから、いいんだとか。
まあとにかくそんなわけで、曽爺ちゃんも曽婆ちゃんも俺と同い年の美女になって戻ってきたってわけ。ちなみに二人とも美女なのは、何でも若返り装置や性転換装置に、補正機能がついてるからだとか。これも論理的になんか色々言われたらしいけど、結局される方に損はないからって押し通されたとか。
実際、曽婆ちゃんは「若い頃よりずっと綺麗!」て飛び跳ねて喜んでたし。
一方の曽爺ちゃんはと言えば、希望したとはいえやっぱり性転換はそれなりにショックだったみたいだね。まあ、俺も若返りだけならともかく、いきなり女になったりしたらショックだろうし。一応性転換した時に国のサポートで女として必要な知識とかは勉強したらしいけど、女の服とかはまだ慣れないみたいだ。
それに対して、曽婆ちゃんはさすがに女として80年以上も先輩だから、若返ってパワフルになった分も加わって、曽爺ちゃんを色々とサポートしてる。傍から見ると見ると姉妹か仲のいい友達てところかな。
ただその二人が我が家に、さらには我が学び舎にやって来ることになったのは、正直ちょっと困ってる。来る前は姉妹が増える程度にしか考えてなくて、逆にちょっと嬉しいくらいだったけど、実際に来てみるとそうも言ってられないよ。
まず二人の元の姿を知っているだけに、いくら美女とはいえやっぱり微妙な気持になる。これはもう慣れるしかないのかな?
次に家の中のパワーバランスと言うか、生活に無茶苦茶影響が出た。俺の家は一人っ子だったのに、そこに女の子二人だから、家の中の雰囲気ががらりと変わった。
曽婆ちゃんはきっちりした性格だから、不摂生な生活を許してくれない。毎朝容赦なく起こされるし。「ほら起きなさい光!いつまで寝てるの!」と枕もとで言われながら体をゆすられるのが恒例行事になってる。あと、食事も時々カップ麺とか無性に食べたいのに「簡単なものなら作ってあげるから」とか言って、勝手に御飯作っちゃうし。俺、そんな子供じゃないって!
で、曽爺ちゃんは曽婆ちゃんのようなパワフルさはないけど、完全に男が抜けきっていないせいで、さっきのように時々平気でスカート捲ろうとするわ、俺がいても服脱ごうとするわで、正直目のやり場に困る。おまけに恥ずかしがって、毎回着替えが終わるたびに、「どうかな?」とか言って着た服見せに来るし。悪いとは言わないけど、こっちも多感な青少年だから、あんまりそういうことしないでほしい。
まあとにかく、若返って美女になった二人は俺と肉体的に俺と同年齢になったので、そのまま俺の通う学校に転入してきた。二人にとってはウン十年ぶりの学び舎だ。
恥ずかしがる元曽爺ちゃんの晴樹に対して、元曽婆ちゃんのスエは俺が案内する学校の中をキラキラした目で見ている。
「スエは楽しそうだね」
「だってだって、学校なんて随分と久しぶりだし、それにこれから前の人生じゃ出来なかった勉強とか部活動とかできると思うと、期待が膨らむじゃない」
あ~、そう言えばスエは学生時代が戦争真っただ中って言ってたな。一応進学はしたけど、授業は停止で工場で働かされてばかりだったって。他にも戦闘機の機銃掃射受けたとか、空襲の中で窓をけ破ったとか言ってたな。
待てよ、そうなると晴樹はどうなんだろう?
「晴樹もやっぱり勉強は楽しみなわけ?」
すると、晴樹はハッとしたように。
「え!?わ、私は・・・う~ん。スエや光には怒られるかもしれないけど、私はそれほどかな。若返ったのも、女の子になったのも、あんまり深く考えなかったから。また青春やりなおせて、年金が多くもらえればいいくらいだったから・・・アハハ。元男の女で、動機も不純だなんて。ダメだな」
そうかな?人間そんなもんじゃないかな、と俺はおもうけど。
「そんなことないだろ」
「え?」
「そりゃ、スエみたいに本気で勉強しなおしたいって言うのは立派だし、いいことだと思うよ。でも、晴樹みたいになんとなく青春やり直して、お金が多くもらえるから女になってもいいって思うのも人間らしいじゃん。まだ人生やり直したばかりなんだから、少しずつ考えていけばそれでいいでしょ」
「・・・ありがとう」
晴樹がニコッと微笑む。その姿に、一瞬ドキッとしてしまう。
「・・・ねえ光、私の頃とは色々違うから。もっと詳しく教えてよ!」
わ!なんかスエがいきなり腕組んできた!?サラッと靡く髪に、甘い香りが鼻に掛かって、しかも体が直接触れてるし!
これまたドキッとしてしまう。
「ちょ、ちょっと近いよ!」
ついでに、周囲から痛い視線を感じる。そりゃそうだわな!どうみても美少女に腕絡まられてる状態だし!ちょ、晴樹助けて!
「スエばっかり、曾孫を独り占めなんてヒドイよ!」
て、何で晴樹まで腕組んでくるの!?ああ!?周囲からの視線がさらに痛く感じる!!
「晴樹こそ、後から私と同じことするなんて見苦しいわよ!」
「いいじゃない!素直に嬉しいんだから!」
ちょっと二人とも、曾孫を想うなら止めてくれ!
「あの二人とも。周囲の目と言う奴がありますから、離れてくれてると嬉しいんだけど」
すると、スエが笑う。笑うって言っても、意地悪なやつ、小悪魔みたいなって言えばいいのかな?とにかくそういうの。
「いいじゃない。見せつけてやれば。別にアベックって思われてもいいのよ~」
て、また古い言葉を・・・じゃなくて!
「いや、だって、俺たち血縁者だし」
そう、俺たちは姿かたち変われど直系の血筋の人間。付き合う関係となるには問題がある。
すると、スエが驚愕の事実を口にする。
「う~ん。確かに家系図的にはね。でも、もう人間としては赤の他人よ」
「うん!?どういうこと?」
「私たちは若返りと性転換する際に、細胞に影響を受けて遺伝子とかDNAとか変わっちゃってるらしいのよ。だから、ほとんど赤の他人で、結婚しても全然問題ないらしいわ・・・あれ?知らなかった?」
「全然知らんわ!!え!?何それ!!」
確かに、細胞に負担が掛かるし安全面から1回こっきりしか使えない(一度若返ったり性転換すると元に戻れない)とは聞いていたけど、赤の他人になっちゃうなんて知らなかったぞ!
「と言うわけで、私が光の彼女どころかお嫁さんになっても、全然オッケーなわけよ」
「何ですと!?・・・ということは。」
俺は晴樹を見る。
「もちろん、晴樹もよ」
晴樹、顔を赤くして恥ずかしそうにして。うん、可愛い・・・じゃなくて!
「いやいや、やっぱりダメでしょ!この間まで曾祖父母と曾孫の関係だったんだから」
すると、スエがシュンとする。
「私じゃ嫌?」
だからそんな目で見るな!
「え!?あ!?・・・晴樹、何か言ってよ!」
「・・・どこの骨の馬かわからない男よりは」
「何故だ!?」
で、この時は「やっぱり冗談だよね?」とか思っていたけど、この後二人とも割と本気で俺と付き合おうとしてくるもんだから、俺も男だし、強く断れなくてそのままズルズル・・・
それだけでも大変なのに、この後父方の曾祖父母も若返りと性転換して転入してきたり。そっちも俺の取り合いに参戦したり。
いやいや。例え付き合うにしても一人だけでしょ!
困るよ、本当に!!
なんて思ってたら、女に若返る人が過剰で、女のほうが余る事態になったから重婚可能な法律が通ってしまった。
・・・俺どうすればいいの?
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