『三題噺』 その六
新年なので、お年玉。
なのに、後半にお題の単語が出てこない・・・。
お題『お年玉/本屋/長靴』
一月一日。
新しい年の始まりの日。
子供達が何よりも楽しみなのは──
「イェーイ! お年玉ー!」
「わーい!」
妹と一緒に熨斗袋を握り締め、舞い上がる。
「早速使おう! 私、福袋買いに行ってくるー」
妹はほくほく顔でさっさと家を飛び出してしまった。
私も新しい本を買おうと、近所の元旦からやっている本屋さんへ向かおうとした。
昨日から降っていた雪が積もり、辺りは見事な雪化粧。
普通の靴で出歩けば、靴下がとんでもない事になるだろう。
案の定、靴箱の中から妹の長靴が消えていた。
その隣の自分の長靴を取り出し、履く。
寒い冬の通りは、ほとんど人がいない。皆、この道とは真逆の神社への向かっているのだろう。或いは、妹みたいにショッピングモールか・・・・・・。
途中で曲がり、路地を抜けた先に佇んでいる本屋が視界に入る。
しかしそこは普段とは雰囲気が違った。
「?」
不思議に思い、入り口に行くと戸が閉まっており、一枚の貼り紙がセロハンで留められている。
『あけましておめでとうございます。
お客様に至っては、いつもご愛顧の程ありがとうございます。
大変申し訳ありませんが、本年の営業は三日からとさせて頂きます。
ご容赦ください。 ○○書店』
ありゃりゃ・・・・・・。
運悪く、お休みだった。
普段はやってるんだけどなぁ。
「残念。これからどーしよ?」
帰ろうかな? と思案していると、コートのポケットの中の携帯が震えた。
画面を見ると、妹から電話が掛かってきたらしい。
通話ボタンを押して出ると、妹の陽気な声がする。
「お姉ちゃん! 神社行こう」
「福袋買えたの?」
「うん! だから神社行こうと思ってね」
「けど、今日はお参り無理だと思うよ? 参拝の自分の番待ってたら、門限過ぎちゃうし」
「今日と明日は縁日だしね。お参りは三日にする。だから、露天巡りしようよ~! りんご飴~、チョコバナナ~」
それが目的かと納得する。
「はいはい。私も御神籤引こうと思ってたしね」
「・・・・・・お姉ちゃん、去年大凶だったのに、また引くの?」
「大丈夫! 大凶だから、これ以上下がることはないから!」
「下がらなくても、上がらない可能性もあるんじゃ・・・・・・」
「ん? なんか言った?」
「いいや! 何も!?」
何故か慌てている妹に小首を傾げつつ、踵を返して神社へ向かう。
「じゃあ、私もう着くから、鳥居の所で待ってるね。お姉ちゃん」
「ん。あ、あと」
「なぁに?」
「まだ言ってなかったね。あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくね」
「うん」
一年の計は元旦にあり。
今年も妹とは仲良くできそうです。