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DEV~デイブ~  作者: Miami3
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第八話

大通りに出ると随分人影もまばらになっていた。随分話し込んだもので入る前には天辺辺りにあった太陽が西の隅に沈んでいる。後ろを振り返るとブライアントが追いついてきた。外の暗さと肌の暗さが相まってほとんど姿が見えないくらいなっていた。

「宿は?」

尋ねられたジョーは小さな紙きれを取り出して見せた。走り書きで『最果て島』と記されている。宿の名前だとしたらあまり縁起がいい物とは言えないなとブライアントは苦笑いを浮かべる。益々周囲が暗くなっていく中で2人の足取りも少しずつ早まる。万が一にも厄介ごとに巻き込まれるのは、今はごめんだ。距離的にはさほど遠くなく少し走るともう宿の明かりが見えた。玄関の感じからしてさっきの店よりは上等そうだ。ドアを開けて受付に向かうと痩せ形の中年の主人が立っている。

「部屋を借りたいんだが」

「申し訳ございません、生憎の満室でして」

頭を下げてはいるものの誠意は全く感じられない。しかもどう考えても満室って感じの客入りじゃない。睨みつけてやりたい衝動をジョーは何とか堪えて真のサイン入りの紙切れを取り出す。

「一応紹介を受けてきたんだが、どうしてもダメか」

「はぁ、・・・・・・大変失礼いたしました。それではお部屋の方を2つ用意いたします」

バタバタと奥に引っ込んでいく主人の背中に中指を立てる。それを見たブライアントは思わずぷーっと吹き出した。それを聞いてニヤっとジョーは笑い返す。

「真がいてくれてホントによかった。後は問題は部屋の質だけだな」

バーの件でもう懲りているがここら辺の基本を外さない男だろうから嫌な予感が高まる。帰って来た主人は2つの鍵をジョーに手渡す。ジョーは片方をブライアントに投げると受付の前を横切って奥の階段を上がる。2階の廊下をまっすぐ進んで部屋の前にたどり着いた。ブライアントの部屋は隣だ。じゃ後でとお互いに声を掛けて部屋の鍵を開けて入った。

部屋はそれほど大きくない。壁際に1つだけベッドが置いてある。あまり質が良くないよれがきたマットレス、虫食い状態のブランケット、ネズミがいないだけマシだが基本は外していないな、ボソっとジョーは呟いて体をベッドの上に投げ出した。ギシギシという不満の声がジョーの耳を叩いた。天井を見上げると汚い落書きがあった。これのどこが最高の部屋だ?文句付けてやろう!いきり立ってベッドから立ち上がり、ドアノブに手を掛けると丁度コンコンとノックされた。誰だ?と不思議に思いつつもドアを開けると目の前に立っていたのはブライアントだ。

「どうした、お前ももしかして部屋の出来が酷くて文句を付けに行くのか?」

「いや、まぁ確かに酷かったんだけどそうじゃない。お前ともう少し話がしたくてな」

入っていいか?と聞かれたので体をずらして部屋の中に迎え入れる。ブライアントは椅子に腰かけ、ジョーは再びベッドの上に座った。しかしブライアントは何も喋り出そうとしない。不審に思ってブライアントを見やると注意深く言葉を探って話し始めた。

「何て言ったらわからないけど、ホントに感謝している。あのままじゃ俺は多分拷問されて自殺を選んでたか、そうでなくても殺されてたはずだ。それをお前はヒーローのように助けに来た。ホントに感謝してもしきれない」

「まぁ俺にはこの国のしがらみは全く関係ないからな。お前自身の人格と能力で俺は評価している。能力の方は微妙だけどな」

軽口を叩くと再び相手は沈黙してしまう。よくよく見ると俯いているその目に光るものがあった。

「おいおい、何で泣いてるんだよ。ここは喜ぶところだろ?」

「はっ、何を言ってんだ?何で喜べる?どうして・・・・・・」

「お前は幸運だろ?!一生分の運を使い切ったってこうはいかねえくらいだ。俺を味方に出来たんだ。最高だろ?」

「ん、ぐすっ、あぁそうだな。ありがとう。確かにここは喜ぶところだ。・・・・ありがとう。ジョー。お前は最高の友だ・・・・」

「それにしても急に泣きださねーでくれよ。女が泣いたら抱きしめてやるが男が泣いたら蹴っ飛ばすしかねえだろ?」

カラカラと笑い声を上げてジョーは笑う。そうしてようやく2人きりの中での暗い雰囲気が払拭されたところで1つ指摘をする。

「まぁ、つってもお前はどうも精神的に卑屈だな。なんていうか・・・・長い調教の影響か?」

「調教って・・・・変な言い方するなよ。むしろお前が滅茶苦茶すぎるだけだって」

慌てて変な方向に話が逸れないように訂正する。どうだか、と首をかしげてベットの上にジョーは四肢を伸ばして仰向けになった。

「あれだけ虐げられてたら調教みたいなもんだよ。だけどいいか、”勝てないといつもびくびく恐れている奴には勝つ資格なんて無いんだ”。だから、周りの奴なんていないと思ってわが道を進め。いちいち気にしてるんじゃねーよ」

「それ誰が言ってたんだ?」

「今俺が考えた」

大真面目にそう呟くジョー。そのあまりにも場にそぐわない適当さに加減とブレなさにある種の感心さえ抱いた。ブライアントが黙っているとそれに耐えきれなくなったのかジョーは益々饒舌になる。

「おいおい、大親友の言葉を疑ってんのか?俺が実践し続けてるんだよ!俺は常に恐れずにいろんな奴や物に向かい続けてきたし、これからもそうするさ。そうありたいし、むしろアタックしない俺なんて想像できない、逆に尋ねたいぜ」

「その結果死んだんだろ?」

ウっと言葉に詰まるうめき声が聞こえた。どうやらアタックしきれない時もあるらしい。だがこの一連の馬鹿なやり取りですっかり元気を取り戻した。下を向きながらもブライアントの目にはもう涙は無い。代わりに口元が歪んで確かな笑みがそこにあった。

「・・・・そうだな。確かに、お前とはあって数時間しかたってないってのにもうなんとなくイメージ出来ちまう。お前って者がどんなに単純でどんなにさっぱりした男かってな」

「おい、単純はよけいだ。ところで、今度のはわりかしガチに聞きてえんだ。戦争中だって言ったよな?現実どういう戦局なんだ?」

「俺らの故郷、リッジマンデ。まぁ奴らが”失われた大地”と呼ぶところだ。だが決してあそこは失わちゃいない!俺達が奴らを拒んだことは一度もなかった!あいつらが勝手に俺らとの交わりを避けて数十年。そして今頃になってあそこをさも俺達が奪ったかのように言い出したんだ!これであいつらと共存できると思うか?」

「まぁ、俺なら無理だな。とりあえず戦争だ。だけどよ、だからって俺にはお前らに勝てるとは思えない。もう激しくなる前にお前ら負けてんじゃねーか?」

「いや、そうでもないさ。確かに俺らとやつらじゃ兵器にも兵士の数にも差がありすぎるけど、それでも俺らには一つ強みがあるんだ!」

自信たっぷりにブライアントがそう言い切った。そこで次のジョーの質問は決まっていた。


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