闇の騎士を見た感想です
漫画、「ワンピース」の魅力のひとつに、残酷性がある。
簡単にいうと、悪のえぐさをきちんと描いているということだ。
悪役の残虐さを、きちんと描いているからこそ、ルフィ達の正義が輝いて見える。
闇を描くからこそ、光が際立つということだ。
そういう闇もしっかりと描かないと光の部分も薄く感じてしまうのだぞ、と最近の娯楽に警鐘を鳴らしたかったりする。
今日、「ダークナイトライジング」を見た。
アメコミヒーロー、バットマンの映画である。
いやあ、面白かったわあ。
時間の長さが全然気にならなかった。
アクション、ストーリー共に、真っ当にワクワクドキドキさせてくれる、見事な娯楽映画だ。
内容はあまり語らないでおこう。
前作の「ダークナイト」も素敵だった。なんてったって、悪役のジョーカーのインパクトが凄かった。外見だけでも結構くる 。
バットマンシリーズは小さい頃から好きだった。他のアメコミヒーローのような、カラフルな外見のヒーローとは違い、黒一色の蝙蝠を模したシンプルなデザイン。個性的な悪役。そして、映画全体から強く漂う、「闇の香り」に、ガキの頃のわしはゾクゾクと震えた。
最初の映画版「バットマン」の記憶は実はあまりない。ただジャックニコルソンのジョーカーの凄みは、しっかりと記憶に焼きついている。
二作目の「バットマンリターンズ」は、しっかりと覚えている。悲しく、怖く、美しい映画だった。奇形であるがゆえ、赤ん坊の頃、両親に捨てられたという怪人ペンギンの設定は強烈だった。あと、キャットウーマンのツギハギだらけの全身ぴっちりスーツを見て、妖しげな性に目覚めた。バットマンシリーズの中で、一番闇が濃い作品だと思う。マイベストである。
ティムバートン監督のバットマンは、本当に大好きだった。
その後の、「バットマンフォーエバー」と「バットマン&ロビン」は、あまり好きくなかった。
わしを酔わせてくれた、闇の香りが、この二作からはいまいち感じられなかったからだ。なんかフツーの派手なヒーロー映画になってしまっていた。
で、「バットマンビギンズ」で復活するわけだが、これは、まあまあだった。タイトル通り、序章といったところか。スケアクロウのデザインは気に入っているけどね。
「ダークナイト」は、ちょっとこれは軽くは語れない。
凄い映画なのだが、その凄さをうまく説明できる自信がない。じっくりと長くいろいろ魅力を語りたい作品ではあるのだが。とりあえずひとつだけ語っておこう。
冒頭の例でも、あげた通り、ヒーローものというのは、だいたいが、「光VS闇」という仕組みで作られている。「正義の光VS悪の闇」のぶつかり合いを描いたものが多い。
ダークナイトシリーズの革新的だったところは、「正義VS悪」を、「光VS闇」として、白黒はっきり分けていなかったところにある。つまり、「正義VS悪」を、「闇VS闇」として描いているのである。
正義も闇なのである。
バットマンは、ゴッサムシティの人々を犯罪から救っているが、その動機は復讐心である。幼い頃に、両親を強盗殺人犯に殺された暗い過去が、彼をバットマンに変えた。バットマンは、怒りと憎しみで戦っているのである。そして、それがある悲劇を生む。
フェイトゼロで、「誰かを救うということは、誰かを救わないことだ」と、正義の矛盾をついたセリフがあったが、「ダークナイト」も、一見光だと思われる正義にも、闇が潜んでいることを教えてくれる。
ああ、これは、リアルだな、と思った。
正義には、闇が潜んでいる。
自分は正しいと言うやつは、自分以外は間違っているという闇的な考え方を背負いかねない。
あのいじめ事件に過剰反応していた奴ら。
あのひと達なんかは、正義という闇のいい例だと思う。
「ダークナイト」のバットマンは闇の騎士として、己の正義がもたらした闇と向かい合うことになる。
そして、向かい合ったバットマンがどのような行動をとるのか。
そこを描いたのが、今日見た続編の「ダークナイトライジング」なわけです。
以上を踏まえたうえでの、見終わった感想が、「いやあ、本当に面白かったあ。」です。
うふふふふ、オススメです。