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メタァな厨二病男子とチートなお節介系幼馴染は果たして純潔を守れるか!?  作者: アシタカ
第六章 獣人領・グラトナレド編
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第68話 特別緊急伝達

以前の話で数ヶ所訂正した部分があります。

詳細は活動報告に記しました。

 ゴールデンイーグルはまた空高い位置で旋回したあと、暫くすると巣へと戻っていった。


「先にって言ったって、手こずってたのはそっちじゃない」

「何を言う。ゴールデンイーグルは強いんだ。勝負を挑み、その羽根を持ち帰ったことがあるのはまだ現獣王のみなんだぞ」

「我々も少しずつ奴めの体力を削っていたと言うのに、卑怯者が横取りしてくるからな」


 ヤラシイ奴らだ。どう見たって手こずって手も足も出てなかったじゃないか。ハイノが「獣王は強いんすねぇ」なんて感心したように言っているが、いやいやそんな呑気な。


「おい、マーガレット!キャシーとドロシーはどうした?お前たちを足止めしに行くって言ってたんだが」


スコットのチームも近くにいたようだ。


「スコットのチームメンバーだったんだ…」


 スコットを合わせたあの食事処にいた屈強な男衆3人と、キャシー・ドロシーがチームだったようだ。焦ったように聞くところを見るに、薄々分かっているのだろう。


「悪いけど、行動不能にさせてもらったよ。もちろんケガはさせてないから安心して」

「なんだと!」

「あのバカ姉妹、まんまとやられやがって」

「いや。マーガレットはトルペの闘技大会でも戦ったが、舐めてかかれるような相手じゃねえ。俺達が油断しすぎたのが敗因だ。現に今、ゴールデンイーグルに触れたのはこいつらのチームだけだ」


 ムキムキマッチョの男衆が吼えるが、スコットは冷静に分析する。何とも苦い顔だが、私に向かってこっそり口元が「流石だな」と動いた。先ほどイザークに教わった『強き者は認める』って言葉を思い出した。直接戦った私たちだからこそ、スコットは私のこと大っぴらにはできないが認めてくれているのかもしれない。


「とにかく!我々が仕留めるのだ!貴様らは引っ込んでいてもらお…う、か…?」


 何の前触れもなく、カルヴィンが無言ながらにリーダーの前まで進み出た。彼はじっと鳩兵隊を見つめ続ける。


「なんだ!やると言うのか!」

「人族ごとき、リーダー、やっちゃってください!」


 新兵のせいか、なんかその辺のチンピラみたいで威厳も何もないな。しかし何をする気かこちらもハラハラしながらカルヴィンに注目した。彼はジリジリと近づき始めると、がっとその腕を伸ばした。


「…ッ何を!」

「我慢ならないのだ!カワイイのだ!」


 嫌がる鳩兵隊を物ともせず、カルヴィンはリーダーをギュッと抱き締めた。忘れていたが、そう言えば彼は小動物好きだったな。


「リーダー!」

「止めろ人族ぅ!」


 他の鳩兵隊が慌てて突っつきだすも、何故だかそれすらも幸せそうである。間違いなくカルヴィンはライナルトの類友だ。

 とりあえず、カルヴィンのお陰でしばらく鳩兵隊の注意は引けそうだ。


「今の内にゴールデンイーグルを何とかしなきゃ…」


 ゴールデンイーグルは巣から隙なくこちらを警戒していた。近づけばまた追い払われてしまうだろうし、再びこちらにおびき寄せるのも難しいだろう。


「厄介だな…」

「おかしい」

「え?」


 顎に手をかけ、ルークスリアが思案顔で呟いた。一体、何がおかしいのだろうか。彼女は木を登り初め、高い位置から周囲とゴールデンイーグルの巣を眺めた。そして1人納得すると降りてくる。


「なるほどな」

「何がなるほどなの?」

「やっと分かった。野生の生き物は敵に遭遇して少しでも不利を悟ると逃げていくものだが、あの鷲は逆に攻撃してくる。その理由が何なのか、な」


 ルークスリアは巣の方へと歩きだし、巣と私たちの中間辺りで立ち止まった。こちらを振り返ると再び矢を矢筒から取り出し弓を構えた。

 …こちらに向けて。


「え!?」

「わらわはここで抜ける。ここから先は、例えマーガレットたちであっても通さぬ。少しでも近づいた者はわらわの矢の餌食となることを心得よ」

「えー!?」


 ちょっと、どうしたのルークスリア!


「急に何で!?」

「すまんな、マーガレット」


 ルークスリアは構えを解かない。突然の仲間割れにスコットたちも驚いていた。イザークだけ私を庇うように一歩前に出て弓が当たらないようにした。


「どういうつもりだ?」

「どうもこうもない。ゴールデンイーグルを襲うことは、これ以上許さぬ」


 突然の行動に訳が分からずいると、正気に戻ったカルヴィンが眉間に激しいシワを寄せ、ルークスリアを睨んだ。


「一体何なのだ、このエルフは!訳も話さずいきなり裏切り行為とは!恥を知るのだ!」

「何と言われようともここは引かぬ。去ね」


 カルヴィンとルークスリアがまた言い争いをするが、ルークスリアは今までのようにカッとなって我を忘れるようなことはなかった。冷静に弦を引きこちらを見据えている。今は動き出し飛びかかりそうなカルヴィンに照準が向いていた。

 そんな一触即発の状況であったが、こっそりと出し抜いたのは鳩兵隊のリーダーであった。


「もう、うかうかしていられん!我々が仕留めるのだ!」

「待て!」


 また弾丸のごとく飛び立った鳩兵隊を止めようとするが他の鳩兵隊に邪魔をされた。ルークスリアは表情を崩し焦る。


「止めよ!その巣には雛が…!」


 ピクリと肩が動いた。

 彼は私を庇うように目の前にいたので、私にはその一部始終が見えた。

 イザークは『雛』という単語を聞き全てを理解したのだろう。そして鳩兵隊のその後の行動も気づいたようだった。


「鳩兵隊は、必ず収穫祭で成果を挙げなければならないのだ!」


 鳩兵隊の周りの魔素が動く。リーダーが魔法を撃とうとしていることが分かった。

 それはスローモーションのようだった。イザークは一度屈むと、その身体をまた獅子へと変えた。羽根が生え、蠍の尾を生やす。そしてそのまま巣へと駆けていく。


「『風裂斬(ウィンドスプリット)』!」


 鳩兵隊が風の魔法を放つ。さすがに距離があったため防ぐことしかできなかったようだが、イザークは鳩兵隊とゴールデンイーグルの間で阻み、魔法をその身に受けた。


「うわあああ!」

「何だ?マーガレットのチームのあんちゃんが…」

「あれは…冒涜的生命…?」


 獅子へと変わったイザークは、鳩兵隊の魔法くらいは何ともなさそうだった。しかしその姿を晒してしまう。


「…魔族だ」


 誰かの掠れた声で、この場に緊張が走った。

 誰もが動きを止め、息を飲んだ瞬間。その緊張感の中飛び込んできたのは白い弾丸だった。


「『特別緊急伝達』発令!」


 紅一点の鳩上等兵が降り立ち、よく通る声が辺りには響いた。鳩兵隊の新兵たちが途端に敬礼する。


「緊急事態発生のため、これより『特別緊急伝達』を発令する!新兵諸君、不正監視のため収穫祭は鳩兵隊が常に監視しているということを忘れたのか知らないが、魔法を使おうとしたその行為、あとで厳しく処罰は検討する。その前に、魔族の出現について伝達を速やかに遂行せよ!周辺の冒険者ギルド及び姫巫女様の元へ『グラトナレド内に魔族出没』の伝達を行うこと!獣王の元には鳩参謀がすでに飛んでいる!各自出立!」


 鳩兵隊の新兵たちは鳩上等兵の掛け声により一斉に空へと飛び立った。

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