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メタァな厨二病男子とチートなお節介系幼馴染は果たして純潔を守れるか!?  作者: アシタカ
第六章 獣人領・グラトナレド編
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第65話 ゴールデンイーグルの羽根

「ついに、やって参りました!」


 この日は雲一つない晴天だった。


「いつもこの暖かい時期になると行います、収穫祭。ついに本日開幕です!解説させていただきますのは、鳩兵隊所属・紅一点の鳩上等兵です」


 大きく声を張り上げているのは鳩上等兵と名乗る鳩である。どうやら女の子らしい。見た目では私にはさっぱり見分けが付かない。


「ルールの説明を致します。各5人組のチームを組んでいただきましたが、実際に何を行うのか。ご存知ない方もいらっしゃることでしょう。もちろん事前連絡は行っていたのですが」

「鳩上等兵、実に無駄が多い。簡潔に喋りたまえ」

「失礼致しました鳩参謀。上官からの命令とあれば従うのが部下の務め。愛ある指導を行い導いて下さる上官に敬服致します。一生付いていく所存です」

「上等兵」

「それではルールの続きをご説明致します。ルールは至って簡単。この森の奥地に棲むゴールデンイーグルの黄金の羽根を採ってくることです。ただし、魔法を使うことは一切禁止です。5人チームで力を合わせ、魔法ではなく己の力のみを駆使してこのお宝を持ち帰ってくるのです!」


 なるほど。近くの獣人から紙が回ってきて、それを見てみると子どもの落書きみたいな地図が描かれていた。森の奥地には×マークが着いていて、そこの隣にはこれまた子どもの落書きみたいな鷲らしき鳥が描かれている。ここの場所にそのゴールデンイーグルは生息しているのだろう。


「待て。収穫祭と聞いていたが、鷲狩りか?そんな、何人もで寄って集ってそのゴールデンイーグルの羽根を捥いでくると?」


 ルークスリアが不愉快そうな声音で周りを見回した。責めるようなルークスリアの視線に獣人はみな白けた視線を返している。


「あんたらエルフだって狩りをするだろう。それと何が違うって言うんだ」

「我々エルフは計画的に、また無益な殺生はしない。こんな祭りごとで生殺与奪の権を振りかざし、恥かしくはないのか、獣人族は」


 こちらが止める間もなくルークスリアは蔑んだ瞳で獣人族を見る。獣人たちも不快そうに顔を歪める者ばかりで、私の隣にいたカルヴィンもため息をついていた。これは、マズイ。私は慌ててルークスリアを止める。


「とにかく、今は何でも良いから堪えて。言いたいことが色々あるのは分かったから」

「マーガレット!そなた、この祭りをこのまま見過ごすつもりか?森の恵みとはみなで守り慈しまねばならぬものなんだぞ!」


 ルークスリアはもうこちらの言葉も通じないくらいカンカンである。私はとにかく落ち着かせようと宥めるが、そんな私たちに狼獣人のスコットが低い声でボソリと告げた。


「そんなに嫌なら棄権して出ていきな。マーガレット、悪いがあんたらが出場したとしても絶対に獣人は負けたりしない」


 その表情を窺えば、能面のように表情が無いが、怒りがにじみ出ていた。どうやら私たちはチーム内どころかその他のチームとも険悪なムードとなってしまったようである。


「皆さま、制限時間は本日の日が沈むまで!もちろん誰も黄金の羽根を手に入れられなかったとなれば今回の収穫祭は勝者無しと判定します。しかしながら、身内の話を許可していただけるのであれば、鳩兵隊の新兵たちはそんなことがあってはならないと胸に刻んでいただきたいものであります。私も一等兵の時にはこの収穫祭に参加しまして、その時の収穫祭では見事に」

「上等兵!」

「それではスタート致しましょう。皆さま、ご勝手に進んでいただいて結構です。幸運を祈ります!」


 何とも締まらないグダグダで収穫祭はスタートを迎えることになった。

 しかしながら、グダグダとは言えスタートしてくれたお蔭で、周りの獣人たちも一斉に森へと駆けだした。これで険悪な雰囲気からは多少逃れられるというものだろう。


「それにしても・・・」


 さすが身体能力値の高い獣人族である。みんな勢いよく駆けて行き、走りにくい森の足場も物ともせずするりと通り抜けてしまう。これは早くも出遅れた感じがしなくもない。


「私たちも急ぎましょう!」

「いや、それより地図をしっかりと把握した方が良いと思うのだ。無闇に駆け回っても辿り着けるものも辿り着けないのだ」

「竜人族は相変わらず悠長だな。長生きしすぎて感覚もマヒしたのか?そんなことでは他の土地勘のある獣人族に追いつけぬぞ」

「ちょっと・・・」

「聡明なエルフ殿の発言とは思えないのだ。お主、そんな考え方でよく一族の長を務めていられるな?」

「過激派な竜人よりはしっかり地に足つけて身の程を弁えた考えをしているつもりだが?」

「おい。その身の程とはどういうこのなのだ?まだそれがしらを侮辱するつもりか」


 本当、何でなの?どうしてこんなに険悪になってしまったの?これがこの世界での異種族の交流の限界なわけ?

 私がどうして良いか分からず残り2人を振り返ると、意外なことに助け舟を出してくれたのはハイノであった。


「地図の把握も大事、獣人たちに追いつくのも大事、どちらも必要なことっす。ここは間を取って、獣人たちの通った跡を追跡しながら地図を確認しつつ進むのがいいっすよ」


 毒気を抜かれるような明るく朗らかなハイノの笑顔に、ルークスリアとカルヴィンはバツが悪そうな顔をした後、互いは見ないながらも賛同を示してくれた。本当に前途多難なチームになってしまったけれど、とにかく私たちも遅ればせながら収穫祭に参加である。

 私たちは明らかに踏み荒らしたような足跡を頼りにしながら森を進んでいった。土地勘のある獣人に比べて私たちは圧倒的に不利ではあるけれど、そこは何とか5人協力しあって進んでいく。


「足跡が消えた」

「心配ない。ここから木を伝って移動したようなのだ。においは流石に誤魔化せていない」


 獣人の次に身体能力や五感の優れたカルヴィンが大いに役立ってくれた。彼は人型に変身していてもある程度のにおいを追ったりはできるらしい。眉目秀麗なイケメンが鼻をスンスンさせている姿は滑稽でもあるけれど、それが似合ってしまうカルヴィンの謎の魅力ってやつには今は触れないでおく。


「マーガレット、野生の魔法動物も出てくる。気を抜くな」

「はい師匠」


 私も魔法は使えなくても足手まといにはならないように頑張る。やはり、このメンバーの中では一番体力的にも能力的にも低いのは私である。あのハイノも余裕の表情で軽々と進んでいくのを見ると、やはり私は修行をしていたと言ってもまだまだだったということを再認識する。

 森は本当に、整備されていない獣道ばかりだ。しかも生い茂った木々の中では方向感覚が失われてしまう。だが森で生活をしているルークスリアはある程度感覚で分かる部分があるらしく、先頭を走ってくれている。不安しかなかったが、意外と良いチームになるんじゃなかろうか。


「待て」


 しかし私がそうやって自分のチームに感心していた時である。イザークの鋭い制止の声で皆ピタリと止まった。何事かと思っていたら、イザークは小石を拾いそれを数メートル先に放り投げた。

 小石が地面に落ちた瞬間、そこはツタで編んだ網のようなものが出現し、地面を掬い上げるようにぐんと上へと上がっていった。

 何事なの!?


「ばれちゃったかぁ」

「意外に目ざといのね」


 驚いていると、そこにはニヤニヤと嗤う獣人の女の子が2人現れた。

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