表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタァな厨二病男子とチートなお節介系幼馴染は果たして純潔を守れるか!?  作者: アシタカ
第五章 ドワーフ領・スロテナント編
53/87

第53話 ヤギと竜

 買ったのは赤色だ。これはアケーディアにお金を出してもらった。

 何だって鳩兵隊を呼ぶのかと訝しがられたが、どうしても竜人族を山から追い払うために必要なのだと説いたら赤粉の方をわざわざ買い、追加料金分も用意してくれた。たぶん、一刻も早く解決してイーラのことも追い払いたいのだと思う。


 サラに焚火の準備もしてもらって、赤粉を振った。煙は徐々に染められて赤い煙が空へと上がっていく。そうして、本当にこれで来るんだろうかと不安になった時、物凄い速さで何かがこちらに飛んできた。


「さすが獣人族だけあって身体能力は高いな」

「それに鳩兵隊になるには過酷な訓練も受けるそうですからね」


 イザークとサラがのんびりとそんな感想を漏らしているが、いやいや弾丸のように白い塊が飛んできてこちらとしては驚くほかない。バーンと地面に降り立つと、そこには以前訪ねてきた鳩より縦にスラッと長い鳩が着ている軍服の埃を払いながら冷ややかにこちらを見てきた。


「鳩兵隊所属緊急速達担当鳩参謀ただいま現地到着である。して、この鳩参謀をお呼びなのは誰かね?」

「あ、私で・・・」

「赤い煙は緊急。お急ぎであるなら要件を聞こう。相手はどこの誰かね?送り先の所在地は分かっておいでか。不明であるのならば少々の情報を提示していただければこの参謀が探し当ててこよう」

「あの、アイベックス海賊団の船長で、長髪のすっごい美形な魔族で、名前がライナルトと・・・」

「多い!多い!多い!」


 言葉も弾丸の如く喋るので、何とか情報を伝えようとすればまた遮られた。


「鳩兵隊ともなればそれだけの情報を提示されれば的は搾れたようなもの。逆に情報過多である。実に無駄である。多すぎる情報は場が混乱する。もっとシンプルで結構」


 何なんだよもっとちゃんと人の話聞いてよ。でも鳩軍曹も身勝手な部分があった。鳩兵隊の精神的な強さって言うのがもしこういうことを指すのであれば何か間違っている気がする。


「では伝言内容を承ろう。大抵の内容は大丈夫であるが、口を出すのも憚れるような品のない罵倒や卑猥な言葉などはくれぐれも慎むように。我々も仕事であるため全力を尽くすが常識的範囲を望むものである」

「それじゃ、お願いします・・・」


 内容を伝え追加金額を提示される。アケーディアからもらったお金で支払いを済ますと、鳩参謀はまた弾丸のように飛び立っていった。



 ***



 それから待つこと2日。

 もしかして伝わらなかったのか、もしくは失敗かなと心配になった頃合いでライナルトは現れた。


「マーガレット!やぁやぁお久しぶりだね」


 麗しの人型に戻ったライナルトはキラキラと眩しい笑顔を振り撒きながら私のもとまで来ると、両手で私の手を包むように握りしめてきた。


「それで、絶世の美女エルフを紹介してくれるんだって?その人はどちらに?」


 本当に女好きだな、この男は。

 私が鳩兵隊に頼んだ伝言は『美女エルフと知り合いになったから紹介したい。至急スロテナントまで』と言うものだった。こんなあっさりと来てくれるなんて思わなかったが。

 私はライナルトを落ち着かせながら、イザークに目で合図を送った。興奮冷めやらぬライナルトはイザークに気づかぬまま私に期待の視線を送ってくる。


「もちろん、君のことを忘れてしまったり蔑ろにしたりなどは無いからねマイハニー。ただ君が紹介したいって言うから一体どんなエルフなのかと・・・あれ、なぜ僕はぐるぐる巻きにされているんだい?この縄は何かな?」

「確保完了ね。ありがとう、イザーク」

「ライナルト、お前という奴は・・・」


 いとも簡単に確保できてしまった。ライナルトはやっと罠にかかったことに気づいたらしく顔色が悪くなっている。


「騙したのかい、マイスウィート。美女エルフの知り合いなど端からいなかったということかい?」

「いや、それは嘘じゃないわ。そうね、あなたがあの竜人族を何とかしてくれたら紹介してもいいかもしれない」

「良かった!必ず紹介してくれたまえよ!」


 ブレないな。竜人族って言葉が聞こえなかったのだろうか。私はお気楽にしているライナルトに疑問を投げ掛ける。


「ちょっと、わかってる?竜人族よ、竜人族。この山脈に居着いてしまった竜人族を説得してほしいのよ」

「大丈夫だ、任せたまえ」


 全然わかって無さそうだが自信満々である。なぜなのかと思っていたらライナルトは胸を張って自慢気に笑ってみせた。


「何を隠そうこの僕には竜人族の友人がいてね。懇意にしている仲なのだよ」


 相手はその友人だし、その友人はあんたにかなりの恨みを募らせているけどね!

 しかしながら乗り気なら話が早い。本当のところは説明せずに、カルヴィンの元まで連れてってしまおう。連れていければこっちのものである。


「それじゃ、着いてきてね」

「いいかい、マイリトルガール。必ず美女エルフを紹介してくれたまえよ」


 それは果たしてライナルトが無事にいられたらの話になるだろう。

 それからは何の疑いもなくあっさりとしたものだった。文句も言わずに着いてくるライナルトにほんの少しの罪悪感と、こいつチョロイなっていう侮りの気持ちが湧いてくる。


「なんだ、誰だと思ったらカルヴィンじゃないか!」


 ライナルトは採石場の先まで来ると、友人に朗らかに挨拶をした。こちらとしてはカルヴィンの怒りを聞いていたので流石にハラハラと落ち着かない気持ちになってしまう。

 私がたちがライナルトを連れて戻ると、カルヴィンはわなわなと震えだした。竜であるが故に表情の変化などは分からないが、多分人型であったら険しい表情でこちらを睨んでいるのではないだろうか。


「いやぁ、久しぶりだね。元気にしてたかい?良かった、竜人族に会ってほしいって言われて来て、誰だろうと思っていたんだが君であるなら何の問題もないね。会えて非常に嬉しいよ」

「ほほう。何の、何の問題もないと。そう言うのだな、ライナルト」


 怒りで声まで震えている。ここに来てようやく様子がおかしいことに気付いたライナルトがそっとこちらを振り返り、表情だけで「どういうことか」と説明を求めてきた。


「カルヴィンさん、貴方に対してとっても怒ってるって聞いたから、元凶の貴方に来てもらったのよ」

「怒ってる!?」


 ライナルトは美しい表情を崩し、焦ったようにカルヴィンへと再び向き直った。やっと現状を把握したようで顔色がどんどんと悪くなっていく。


「さよう。それがしは怒りを感じている。まさか貴様に心当たりがないとはな。非常に不愉快なのだ」

「待って、待って待って待ってくれ。もしかして、前のプライディアでのことを?それは誤解なんだよ、聞いてほしいんだカルヴィン」


 ライナルトは焦ったように言い訳を始めようとカルヴィンに近づいていく。そうしてその途中で、なぜかヤギの姿へと変身した。


「うっ・・・」

「僕の話を聞いてくれ。そもそも我々がどうして親しくなったのか。それは、僕も君も平和を愛する平和主義者であったから。そうだろう?」


 何だってヤギの姿に・・・?

 そう思ったが、カルヴィンの様子を見て分かった。先ほどまであんなに怒りを露わにしていたカルヴィンだが、小さなヤギの姿になった途端、たじろいでいた。


「その姿は、卑怯なのだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ