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メタァな厨二病男子とチートなお節介系幼馴染は果たして純潔を守れるか!?  作者: アシタカ
第五章 ドワーフ領・スロテナント編
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第48話 魅力

 私たちはまたとんぼ返りで船に乗っていた。ドワーフの里へと行くためだ。また船乗り場に行くと、あのカエルには嫌な顔をされてしまった。

 何度も何度も来て申し訳ないね。


「本当にお前さんたちで竜を退けられるのかい?」


 船に乗ってしばらくすると、アケーディアが不安そうに尋ねてきた。ムリもない私たちは人族で、しかも歳もまだまだ若いのだから。


「心配するな、長殿。我々には約束された絶対的ハッピーエンドがあるのだ」

「ハッピーエンド?」

「主人公は挫折はすれども最終的には大円団へと導かれる運命なのだ。大船に乗ったつもりで任せるのだ!」


 海の遠くを眺めながらナイトは豪快に笑っていた。どこからの自信でそんな確信を持っているのか。本当にナイトには現実と物語の区別をそろそろつけてもらわないと危ない。

 それにしても、私は改めてドワーフ二人を見た。まさに自分がイメージしていた背も低くずんぐりむっくりの、イメージ通りのドワーフである。やはり今世紀最大の美少女ドワーフっていうのは特殊だったのかもしれない。


「なに見てるんだ」

「いえ、私の知り合いのドワーフとはちょっと見た感じ違うなぁと思って」


 あまりにもじっくり観察してしまったためか、警戒してロニーが威嚇してきた。だが知り合いのドワーフと聞くと興味を示したので、少しでも友好関係を築いておこうと私は話を続けた。


「そう、ブレンダっていう女の子なん・・・」

「ブレンダと知り合いなのか!?」


 え、急になに?

 ロニーはブレンダの名前を聞いた途端、目の色を変えて食いついてきた。心なしかアケーディアも驚いているようだ。


「あいつは元気にやってるか?今はどこで何を?」

「えっと、え?あの、人族の国で魔法道具(マジックアイテム)を売ってるみたいだけど・・・」


 今まで睨んでばかりだったロニーの表情が和らぐ。ブレンダの現在の状況を聞いて安心しているようだった。


「ブレンダとは何かあったの?」

「あの娘は里ではなかなか浮いていての。ある日突然忽然と姿を消してしまったんじゃ」


 アケーディアも懐かしげに目を細めている。そうだったのか、あんなに快活なブレンダも、過去には色々あったのだな。


「あいつって嫁ぎ遅れてたから、俺はいつも心配してたんだ」


 なんとあんな幼く見えて、実はブレンダは結婚適齢期を過ぎていたらしい。いや、ドワーフの種族がどういう習慣を持つのか分からないし、結婚適齢期ももしかしたら物凄く早い可能性だってあるわけだが。


「ほら、あいつ。爪が長いし指も長いだろ?でもあいつの魅力って、俺はそんなこと関係ないと思ってるんだ」


 意味が分からないと思ったが、どうやら話を聞いてみるとドワーフは指や爪が短ければ短いほど魅力的という美意識らしい。何でも短い指や爪は器用者の証で、物作りを生業とするドワーフには結婚で特に重要視する部分のようだ。


「ブレンダはいつも意地張って、他種族から見たら自分の方が魅力的だとか、今時古くてダサいって主張してたけど。ま、そんな意地っ張りで気の強いとことかもあいつの可愛いとこだったよ」


 急に饒舌に話し出すロニーだが、ちょっとブレンダを小バカにした発言に聞こえてならない。でももしかしたら、彼はブレンダを好きでこんな言い方になってるのかもしれない。


「ロニーはブレンダが好きなの?」

「ドワーフとしては気に入ってるよ。でも俺にはちゃんと他に彼女がいるから」


 さりげなく「俺の彼女、指がすごく短いんだ」と自慢を挟んだロニーを見て、なんとなくブレンダが里から去った理由を察した気がした。 ロニーが、と言う訳でなく里の旧体制というか慣習なり考え方が合わなかったのだろう。


「もう随分と仲良くなったようだな。いやぁ、良いことだ」


 甲板で話をしていたら、イーラがやってきた。そう、結局イーラもドワーフの里へと向かうこととなったのだ。ちなみにイーラ様が行くのならとブルクハルトまでついてきている。あんたら魔王城はお留守にしてしまっていいんですか?


「イーラも行くなら、竜の相手は自分がしたらいいじゃない」

「おいおい、一度やると決めたことを簡単に覆そうとするなよマーガレット。それに、交換条件だと言ったじゃないか」


 ニコニコしながらイーラは宣う。交換条件だとして、随分とこちらに不利な条件だと思うのだが。


「それにお前たちが竜を追い払いに行く間、俺もじっくりアケーディア殿と話がしたい」


 キラリと光るイーラの瞳。何をするつもりなのか知らないが、イーラの目的はドワーフ助けではなくドワーフ族と話をすることなのだろう。私たちはそのための時間作りに利用されているのだ。


「さぁ、我らが友であるドワーフ族を助けに、いざ行こうではないか」


 彼は油断ならない笑みを浮かべながらスロテナントがあるべき方角へと視線を向けていた。こちらは竜を相手にしなきゃいけないって言うのに、勝手なものである。


「あんたら、竜人族に会いに行くのか」


 ふと、小さな呟きが聞こえて振り返ると、あのカエルがいた。数人いるカエルの中で一番年老いた風貌の者だ。そっぽを向いてはいるが、多分彼が喋ったことに間違いないと思う。


「これから、スロテナントに居ついてしまった竜人族を何とかしに行くんです」

「何とか、ねぇ」


 試しに話しかけてみると、カエルはやれやれと首を振った。やっと会話ができて、私はそんな態度を取られているにも関わらずなんだか嬉しくなってしまった。


「俺たちは竜人族も嫌いだ。自分達だけ冒涜的生命ではないって逃げた卑怯な奴らだ。他人を思いやる心を知らねぇ」

「独立宣言てやつのことは少し聞きました」

「そうかい。ただ、あいつらはそんな卑怯者でも相当な強さを持ってる。せいぜい命をムダにすんなよ」


 機嫌を損ねないと良いのだが、恐る恐る会話を続けてみるとカエルはゴソゴソと懐を探り始めた。そして、小さな小瓶を投げて寄越した。


「やるよ。逃げるための手助けくらいにゃなるかもしんねぇ」

「これは?」


 カエルは「ヘケト様の小瓶だ」と言い残すと仕事に戻っていった。きっと彼らにも憎しみ以外の複雑な心境があるのだろうと、受け取った小瓶を見つめながら思った。


「ヘケトの小瓶とは珍しいものを手に入れたな」


 一連のやり取りを見ていたイーラが興味深そうに私の手の中の小瓶を眺めてきた。珍しいものなんだ、これ。


「どんな小瓶なの、これ」

「ウワサにしか聞いたことなかったが、ヘケトは多産や復活を象徴する神だ。何でもヘケトの小瓶は重症を負った時に使えば傷が癒えると言われている。だがヴォジャノーイはこれを自分たち以外の者に渡すことはそうないんだ」


 ヴォジャノーイとはあのカエルたちのことらしい。しかし、ついに不思議ファンタジー世界のアイテムって感じのものに出会えた!ナイトも興味津々で覗き込んでくる。


「人族嫌いなヴォジャノーイが貴重な小瓶を恵むんだから、そんだけ竜人族はヤバイってことだよ」


 興奮も一瞬で凍りついてしまうイーラの発言は聞かなかったことにしたい。


「なるほど、そういうことか・・・」


 ナイトが突然訳知り顔で頷いた。聞きたくもなかったが、何度も繰り返し「なるほどな」なんてこちらをチラチラ見てくるので根負けしてしまった。


「何がなるほどなの?」

「突然居着いて離れなくなった竜。そして偶然手に入る傷が癒せる小瓶・・・この後の展開は読めたものだぞ!」


 高らかに笑い出すナイトはしかし、それ以上詳しいことは「後でな」なんて言って話そうとしなかった。話す気がないなら初めから聞いてほしそうにしないでよね!

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