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メタァな厨二病男子とチートなお節介系幼馴染は果たして純潔を守れるか!?  作者: アシタカ
第二章 エルフ領・ラスタリナ編
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第26話 解決

 私とハイノがいた場所はラスタリナからも洞穴からも少し離れた場所にあった。何でも人王の使者たちが見つけた古い小屋だったようで、そこに身を隠していたらしい。あのメンバーの中にいた魔術師が隠匿の魔法に長けていたらしく、この小屋は周りから見つけられないように隠してあるようだ。


「まさか魔物の凶暴化もそうやって魔術師が隠しながらやってたの」

「もちろんすよ。見つかっちゃったら元も子もないじゃないすか」


 ラスタリナまで共に歩いてみたが、何とも飄々とした少年である。先ほどまで敵対していた関係とは思えないほど気さくだし、調子が狂ってしまう。


「それで、マーガレットさんはどこから転移してきたんすか?」

「異世界よ。日本っていう国に住んでたの」

「うわー、ファンタジーっすね!」


 こっちのセリフである。

 しかしこの話をしたのは厄介だった。ニホンってどんな所ですか?何があるんですか?こっちとどう違うんですか?って、質問の嵐である。


「鬱陶しい!」

「僕の知識欲が刺激されちゃうんすよね」


 そう言えば許されるとでも思っているのか。小さい子の「なんで?」攻撃みたいなものである。


「ほら、これ。向こうの世界の『スマホ』ってやつ」


 私はカバンを漁って、最近めっきり触っていなかったスマホを取り出すとハイノに渡した。


「なんすか、これ?」

「貝合わせみたいなアイテム。知ってる?貝合わせ」

「貝合わせって何すか」


 ブレンダの魔法道具マジックアイテムはそんなに知名度が高くないらしい。この世界では遠距離での連絡を取るっていうことにあまり重きを置かないんだろうか。


「遠くにいる人にすぐ連絡が取れるようになる道具だよ」

「ふーん?鳩兵隊みたいなものっすかね・・・?」


 どうやらあまりピンと来ないらしい。それでもスマホは興味深いらしく、繁々と眺めていた。鳩兵隊ってのは何かと質問してみたかったが、お互いに質問ばっかりでいい加減疲れてきた。


「なんか本当に違う世界に住んでる人なんすね、マーガレットさん」

「本当に違う世界に住んでるんですよ」


 その後も質問攻めにあいながら、どうにか里へと戻ることができた。

 戻ると、イザークも里にいて真っ先に駆けつけてくれた。


「怪我はないか」

「大丈夫」

「マーガレットよ、純潔はどうなった!?」


 どうやら拓郎も釈放されていたようで、私を見つけると真っ先に質問されたのがこれである。思い切り足を踏んでおいてやった。

 

「よくぞ戻った、マーガレット」


 ウォーレン老も出迎えてくれて、再び初めに案内された建物へと入ることになった。みんなハイノを気にしていたけれど、イザークも大丈夫だと後押ししてくれたので一緒に中へと案内される。

 「しばらく待っておってくれ」とウォーレン老が出ていくと、私は歩き続けで疲れてしまったので椅子に腰かけさせてもらった。ハイノは中を興味深げに見て回っている。


「マーガレットよ、あの男は大丈夫なのか?」

「大丈夫かどうかは分かんないけど、今のところ敵意はないはずよ」

「分かんないって、そんなで大丈夫なのか?」

「そんなこと言われたって・・・それに、本当にヤバかったらイザークが動いてるよ」


 コソコソとナイトと話していたら、ルークスリアが入ってきた。目が合った途端、勢いよく頭を下げられる。


「マーガレットよ、すまなかった」

「・・・え?」

「今回は私が意地を張っていたせいでお主を危険な目に合せてしまった。私の責任だ」


 ピシッとしたキレイなお辞儀である。そんなことに感心している場合ではないが、なんとも責任感が強いと言うか、生真面目なお姫様である。


「気にしないでください。それより、人王の使者の人たちがどうなったか知りたいんですが」

「うむ・・・そうだな」


 そこからはお互いに何があったのかを報告しあうことになった。

 まず人王の使者たちであるが、無事に洞穴にてイザークが確保することに成功した。尋問をかけようとしたが、私がいなくなっていることに気付いてとりあえず牢獄に入れ、私の捜索を行っていたようだ。3人は今のところ大人しくしているらしい。


「あの中にいる魔術師なんですけど、隠匿の魔法が得意みたいです。森の途中にあった小屋にも魔法をかけていたみたいで、姿を隠していたようですよ」

「なるほど、隠匿の魔法か。これまたマニアックなジャンルを得意とするのだな」


 詳しいところを聞いてみたくなってイザークに確認したが、話は理科の授業のようだった。隠匿の魔法と言ったが、正しく言えば光の魔法らしい。光の屈折とか反射とか。そもそも物体が見えるのは受けた光を反射・散乱させることによってそれが目にとらえられると『見えた』という状態になる。つまりはその反射・散乱を目にとらえさせないようにできれば物を見ることはできないので・・・私は元の世界では文系なので、ちょっと途中から話がうまく呑み込めなくなった。


「光の魔法として実用化されているのは『照明点火ライト』くらいだ。この世界でこの理論をより理解して隠匿の魔法として扱える者は稀であろう。さすが人王に仕えている魔術師なだけある」

「まさか、そんなものが扱える魔術師にお目に掛かれるとはな」


 ルークスリアも魔法には詳しいらしく、イザークと一緒に感心していた。どうやら、魔法に精通した者にとってはマニアックでありながら相当思慮の深い魔法らしい。私なんて光の魔法は「本当に光源、明るさの魔法であって治癒の魔法とは全く別物だ」と聞いた時には、そんなの明るく照らすくらいしか使い道ないじゃんって思っていたのだが。突き進めばもっと色々な可能性があるのだな。

 それにしても、この世界に来て魔法を勉強するようになってから、意外とこのファンタジーな世界も現実世界なのだなと思わされた。だって、光魔法で治癒はできないし、ポーションはHPを回復させたりしないしどちらかと言えば漢方の方が意味合いが近い。

 意外と、全てが不思議で解決しないのがこのファンタジーの世界のようだ。


「僕もあの魔術師からは教わること多かったっす。なかなかの博識者だったっすよ」


 ハイノも満足げである。知りたがりの彼のことだから、魔術師の知識は大いに彼を満足させたことだろう。あのメンバーにいる時は魔術師に始終付き纏っていたに違いない。ルークスリアはハイノが話題に入ってくると少し警戒したように彼を見た。


「して、その者は何者だ。捕らえた使者は3人しかおらず、1人逃していたようなのだが・・・まさか、その者がそうなのか?」

「はい。どうやら変身してたみたいです。人族に」

「・・・と言うことは、やはりそやつは魔族か」


 ルークスリアは迷わず魔族と断言した。やはりエルフも、変身できる存在は魔族だけという認識らしい。魔族の単語が出た途端に、部屋の中ではピリッとした緊張感が走った。イザークを除いた全員が、この未知の存在に警戒している。


「ハイノは好奇心旺盛な魔族であって好戦的ではない。心配しなくていい」


 だがイザークはあっけらかんとしたものだった。


「でも!知識をたくさん持ってるってことは・・・魔法も強力なんじゃないの?」

「そうだ!この里で暴れられてでも見ろ。わらわはそなたも許さんぞ」

「魔族ってこと抜きにしたって、敵にいたのだろう?・・・まさか、このナイト・ウル・ダークネスの人徳に感銘を受け仲間になりたいということか・・・?」

「ほう。少年、主はそんな長ったらしい名を持っていたのか」


 ハイノを除いて緊急会議である。みんなで輪になりコソコソとする姿は若干イジメにも見える。ハイノはそれでも気にならないようで、相変わらず飄々としていた。


「みな勘違いをしている。ハイノは知識欲が高いがあれは言わば『コレクター』だ」

「コレクター?」

「収集癖があるだけで、使うタイプじゃない。奴は集めることが好きなだけだ。自分の得た知識を思い返して満足するだけの魔族だから、扱いも慣れれば簡単だ」

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