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メタァな厨二病男子とチートなお節介系幼馴染は果たして純潔を守れるか!?  作者: アシタカ
第二章 エルフ領・ラスタリナ編
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第20話 ゴブリン隊との対決

 前を走っていたナイトは下がらせて、音により場所の特定ができるイザークを先頭に私たちは森の中を急ぎ移動した。段々と進んでいくと、醜い咆哮や木々のなぎ倒される音などが私たちでも聞けるようになった。


「止まれ」


 制止の声がかけられ、今度は相手に気付かれないようにそっと近づくと、そこには緑色の醜い見てくれの人型をした魔物がいた。ナイトはすぐ分かったらしく、ゴブリンだと教えてくれた。


「オーガ一体が率いるゴブリン隊か・・・」

「良かった。パーシヴァルたちはゴブリンの群れ退治は楽勝だったって言ってたよね」

「いや、あれはゴブリンのみの群れの話だ。よく見てみろ」


 イザークに促されてよく観察してみると、ゴブリン一体一体には特徴があるようだった。剣、弓、斧、槍など様々な武器を持っている。それに、その中心には彼らの二倍程の大きさのものもいた。


「あそこにいるのは群れじゃなく隊だ。ゴブリン戦士ファイター、ゴブリン射手アーチャー、ゴブリン闘士ウォーリア、ゴブリン槍兵ランサー、ゴブリン盗人シーフってところか。それと、リーダーとしてオーガがついている」


 オーガってやつはあの大きなやつのことだろう。ゴブリン隊はそれぞれの役割を持って戦うようで、群れのようなただの集まりとは違うらしい。


「頭は良くないが、指揮を執るリーダーがいる・いないでは隊の強さも変わる。別に脅威ではないが、お前たち2人の初戦闘には向かない。少し待っていてくれれば俺1人で処理してくる」


 イザークならどうってことないようだ。

 ナイトも実物を見たらさすがに言葉も出ないらしく、先ほどの威勢はどこへやら。それを見ていたら、私の方が何だか吹っ切れた。

 逃げていたらいつまで経っても強くなんてなれない。確かに元の世界に帰ることは決めているが、だからって誰かに守ってもらって甘えてばかりでなんていたくない。


「イザーク、一番強いのはオーガなんだよね。それならオーガを倒しに行って。他のゴブリン隊は私とナイトで何とかしてみる」

「えぇ!?本気か、マーガレット!」

「・・・できるか?」


 こんな話をしてる間にも、ゴブリン隊の目の前には逃げ惑う少女が見て取れた。恐怖のせいか思うように動けないようで、躓き転んでは逃れようと走っている。ゴブリン隊は着かず離れずで笑いながら、周りの木々をなぎ倒すことで少女の恐怖心を煽るようにして迫っていた。


「やる!ナイト、か弱い女の子を救うのは主人公の役目なんでしょ!」

「う、うーむ・・・」

「イザーク、オーガが片付いたら援護をお願いします。私たちだけだとまだ難しいと思うから」


 私たちはゴブリン隊との距離を詰めた。



 ***



 まず女の子とゴブリン隊の間に私は躍り出た。新たな的の出現に一瞬戸惑う隙をついて、私は地面に手をつくと魔法を唱える。


「『妨害氷縛フリーズチェック』!」


 ゴブリン隊の足元から凍り付かせて相手の動きを封じる。ずっと魔法の理解を深めていたお蔭か、以前よりも範囲も威力も強力になっているようだった。それでも、やはり実践は難しくゴブリン闘士ウォーリアとゴブリン盗人シーフを凍り付かせるだけで、他のゴブリンは逃げられてしまった。

 ゴブリン射手アーチャーは距離を取り後ろに下がり、ゴブリン戦士ソードマンは目の前の私に突進し、剣を振りかぶってきた。


「うひゃあぁぁぁ!」


 私を守るように前に出てその剣を止めてくれたのはナイトだ。へっぴり腰でおっかなびっくりではあるが、何とか相手の剣を受ける。その横からゴブリン槍兵ランサーが隙をついてこようとするが、私も次の魔法に移る。


「『魔暴突風レイジウィンド』!」


 協力な突風を作り出し、相手の態勢を崩した。槍での攻撃をしようと近づいていた槍兵ランサーを押し返す。


「『断障壁ブレイクシールド』」


 その声と共に近く飛んできた数本の矢が目の前で弾かれた。イザークを見ればオーガを倒し終わり、こちらの援護に入ってくれたらしい。矢には対処ができていなかったので、イザークの魔法がなければ当たっていただろう。イザークは進んで戦闘をする気はないようで、腕を組んでこちらの流れを見ている。

 私はまた状況の整理をするため素早く全体を見渡した。ナイトはゴブリン剣士ソードマンと近距離戦を行っていてまだ決着はつきそうにない。怪我、しないと良いけど。残り2体のゴブリンは槍兵ランサー射手アーチャー。どちらも態勢を立て直しまた戦闘状態に入っている。

 この場合、どちらをどのように相手どれば良いのか。射手アーチャーの弓は接近戦をしているナイトの方は仲間を射てしまう可能性もあるので狙い辛いだろう。なら狙うなら槍兵ランサーとやりあっても中距離である程度距離の取れる私の方だ。槍兵ランサーは放っておくと最悪、剣士ソードマンの加勢に入られてナイトが危ない。

 そうであるなら、私は射手アーチャーを引きつけつつ槍兵ランサーの相手をするのがベストだろう。敵2体を相手にする?ゾッとして一瞬心が引き攣るが誤魔化して槍兵ランサーに向き合った。


「乙女なめんなよ!『氷結矢フリーズアロウ』!」


 心を震わせるため大きく声を出し、まず射手アーチャーに向かって魔法を打つ。ただし、狙いを定める時間もないし距離が離れすぎていて、今の私では威嚇射撃程度しかできない。すぐに前に向き直るが槍兵ランサーの槍が真っ直ぐ突きとして繰り出された。私はイザークから教わった魔法を唱える。


「『断障壁ブレイクシールド』!」

「目を瞑るな、マーガレット」


 槍が届く瞬間、恐怖に目を瞑るとイザークからの叱責が飛んできた。それでも槍は何とか止められたようで目の前に張った障壁に弾かれている。そこに剣士ソードマンを倒し終わったらしいナイトが走ってきて、また態勢を崩した槍兵ランサーの懐に飛び込んでいく。それを確認した私は槍兵ランサーから目を離し、射手アーチャーの方へと視線を移した。丁度射た瞬間のようで、咄嗟にこちらも対応する。


「『魔暴突風レイジウィンド』!」


 飛んできた矢を逆に吹き飛ばし、射手アーチャーに当たった。矢が刺さるようなことは無いが飛んできた矢と突風に態勢を崩した射手アーチャーに向かってまた攻撃を仕掛ける。今度は狙いをしっかりと定め、私が射れる距離まで少し詰めた。慌てて向こうの射手アーチャーも構えようと弓に手を掛けるが遅い。


「『氷結矢フリーズアロウ』!」


 私の魔法は射手アーチャーに届き、倒れた。振り返るとナイトも槍兵ランサーを倒したようで、これで殲滅である。


「た、倒せた・・・」


 終わってから急に足に力が入らなくなり、地面に崩れ落ちた。心臓はバクバクである。ナイトの方は「ゴブリンなんて雑魚モンスターなら雑作もない」と大口を叩いているが、見て分かるくらいに足がガクガクに震えていた。


「マーガレット、戦闘中は敵から視線を外すな。命取りになる。ナイトはよくあのタイミングで槍兵ランサーに飛び込めたな。上出来だ」


 イザーク師匠からお言葉をいただく。私たちではゴブリン隊を倒すにはまだまだ実力不足だった。イザークからの援助のお蔭で無傷で戦えたのだ。


「そう言えば、さっきの女の子は?」


 ナイトがキョロキョロと見渡す。そう言えば、どこに行ってしまっただろうか。私も辺りを見渡してみれば、ひょこっと木陰から可愛らしい少女が顔を出した。

 そこにいたのは尖がった耳のエルフだろう少女。イザークの言う通り、確かに若い女だ。


「お兄さん、お姉さん。助けてくれてありがとう」


 推定年齢10歳前後の少女が、あどけなく笑いながらお礼を述べてくれた。 

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