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メタァな厨二病男子とチートなお節介系幼馴染は果たして純潔を守れるか!?  作者: アシタカ
第二章 エルフ領・ラスタリナ編
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第19話 出発

「ディアナ、ディアナ!」


 私はブレンダの店で買い物を済ませると、すぐに宿屋に帰った。私の勢いに口をきかなかったディアナも驚いて「なに?」と不機嫌そうではあるが反応を返してくれる。


「良い物買って来たの。見て」


 私が出したのは少し大きめの、手のひらサイズくらいの貝殻だった。中身は入っておらず、パカッと割れるようになっていて、片方の貝殻をディアナに手渡した。


「何だ、それ?」


 ディアナに手渡された貝殻を物珍しそうに眺めるチャドに、私は得意満面で答える。


「貝合わせっていう魔法道具マジックアイテムなの。これ、遠くにいてもこれの対になる貝殻を持ってる人に連絡が取れるアイテムなの」


 見つけた時は、すぐに「これだ!」と思った。ブレンダにとっては過激性が足りないらしく物足りない魔法道具マジックアイテムらしいのだが、私にはこんな便利な物ないと思う。だって、かけられる先が限定的な電話みたいなものなのだから。ブレンダにはお気に入りじゃないので銀貨1枚で良いと言われ、即決で買って来た。


「ほら、これでラスタリナに行っても連絡が取りあえるよ」


 そう説明するが、ディアナからの反応はなかった。パーシヴァルなんかは物珍しそうにディアナからそれを借りて、私から対を奪ったチャドと遊び始めた。


「迷惑ばっかりかけてごめんね。いっぱい助けてくれてありがとう」

「・・・違うの」


 やっぱりこんなことじゃダメだったかと落胆しかけたが、ディアナがやっと話してくれた。


「確かにおかしいとは思ってたけど、怪しいなんて一回も思ったこと無いよ。ごめんね。取り乱して、大人げなく怒っちゃって。気を付けて行って来てね」


 ディアナは両手で顔を覆い、泣き出してしまった。男性陣は全員見て見ぬフリだったので、私は一緒に泣かせてもらった。

 良かった。仲違いのままお別れにならなくて。



 ***



 旅立ちは順調だった。荷物も改めて整えたし、ディアナたちとも円満にお別れすることができた。貝合わせは片側をディアナが、もう片側を私が持つことで話は決まった。私たちが帰った後はネイトに持ってもらい、彼らパーティで使ってもらうことになっている。


「最後の冒険、か。俺の英雄譚もここで終局を迎えるのか」

「まだ冒険にすら出てなかったじゃない」


 最初で最後の冒険ってか。帰路についてますがな。

 パーシヴァルたちのパーティと離れると、イザークは本性を隠さなくなった。と言っても、ネイトはクールな性格だったし、イザーク自身も寡黙なタイプだったので、そこまで大きなギャップのようなものは無かった。

 その代わり、魔法を教わることができた。


「いいか、理解することは支配することだ。魔法とはそのようにできている」


 イザークは丁寧に説明をしてくれた。正直、ディアナよりもよっぽど本格的だった。


「知っていることは優っていることだ。それが何で構成されているのか、なるべく多くのことを知れ。そうすればお前は優り、支配することができる」

「どういうこと?」

「例えば、お前は火の魔法を使いたいとする。ならまず火とは何なのかを知り、理解しろ。知っていることは優っていることだ。優っているということは支配することができる」


 手のひらに小さな炎を出現させると、イザークはゆっくりと教えてくれた。


「火とは何か。熱いもの。燃えるもの。水をかけると消えるもの。風を受け大きくなるもの。それを構成する要素を少しでも多く知っていることが、支配することに繋がる」


 なるほど。魔法とは理解力が物を言うということか。今まで私が魔法を使えていたのも、無意識にそれが何なのかを理解していたからなのだろう。同じ魔法を繰り返し練習して上達したと感じたのも、肌でそれが何なのかを理解する手助けになっていたからに違いない。


「魔法を使いこなしたいのならば、理解を深めることに専念しろ」


 イザークは今まで行っていたような実施訓練は行わせてくれなかった。魔法とは何なのか理解するため考えるよう教えられた。そして魔法の実施訓練が行われない代わりに、身体を鍛える訓練が行われるようになった。これにはナイトも強制参加をさせられた。本人は「元の世界に帰るのになぜそんなことをしなくてはならないのか」と嫌がったが、帰るまで己の身は己自身で守らなければいけないので、無理やり参加させることになった。

 素人が急に強くなることなんてできないので、本当に気休めだとは思うが、今まで私もチャドから指導を受けていた分、多少は動けるようになっていると思う。イザーク相手には全く歯が立たないのは事実だけれど。それでも、途中でホッピングラビットを倒し、血抜きと毛皮を剥ぐ作業を教わり自分で全て行うことはできるようになった。


「これができるようになることが、良いことなのかよく分からない」

「良いか悪いかで考えるな。自分が生きるために必要か不要かで考えろ」


 イザークは私の意思を汲んで一方的に守ることはしなかった。私が私自身を守れるように手助けしてくれた。それがとてもありがたかったし、自信に繋がった。ビギナーをクリアし初めて行った依頼の失敗が、実は結構引きずっていたのだ。

 ラスタリナに近づくころには、大分自身の身体が軽く意のままに動かせるようになったし、イザークとの組み手も多少格好がつくようになった。慢心はもうしたくないので、自身の心に戒めるが。


「エルフっていうのは、気位が高い種族だ。だが決して友好的でない訳ではない。誠意を持って接すれば邪険にはされないから、気を付けろ」

「大丈夫だ!エルフとお近づきになれるんであれば俺は何だってするし、第一エルフに関しては誠意しか持ち合わせていない!」

「エルフ信仰の信者みたいな物言いをするんだな」


 森の深くに入り込んでいくと、心構えを説かれた。ナイトはエルフが好きらしくウッキウキだが、破裂すればいいのに。


「エルフ信仰なんてあるの?」

「ああ。神聖な森の巫女として特にエルフの女性が信仰の対象となっていると聞く。このマグノーリェ大陸よりもカトライア大陸の方が勢力は大きいらしいがな」


 どの世界もエルフを神聖視する者がいるようだ。確かに、エルフって言うと絶世の美男美女揃いのイメージがあるから、かく言う私も出会えることを楽しみにしていたりする。元の世界のファンタジーだってエルフは人気があり、活躍する姿がよく描かれていたから。

 森の道なき道を進んで早数日。その日もそろそろ野宿の場所を決めようかと話していた時だった。ふいにイザークの動きが止まった。


「どうしたの?」

「何者かの悲鳴が聞こえた」


 イザークの向けている視線の先を自分でも見てみたが、何も変化は見受けられない。魔族って耳も良いんだろうか。


「魔物の咆哮もしている。襲われているな」

「え!?」


 緊張感が走り、一瞬3人で顔を見合わせる。今まで、イザーク指導の元魔物の隙をついて狩りを行ったり遭遇しないように回り道したりイザーク自身が倒したりとはしてきた。しかし、真っ向から対立しての戦闘はしたことがない。


「イザーク、悲鳴の主は女か、男か?」

「若い女の声だった」

「行くぞ皆の衆!助けに向かうのだ!」


 ナイトが走り出したので、迷いはかき消して助けに向かうことになった。こういう時の想いきりは、私よりもナイトの方が良い。理由はどんなものであれ。

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